ホントに架線が無くなってる…! “非電化化”されて”電車的な気動車”で災害復旧したかつての大幹線「奥羽本線」 コストカットの背景は?
- 乗りものニュース |

奥羽本線の山形・秋田県境部が災害による不通から9か月ぶりに復旧。しかし、以前走っていた「電車」は消えました。「非電化化」を伴う復旧は異例ではありますが、果たして利便性はどう変わったでしょうか。
災害から9か月ぶりの復旧 ただし「非電化」で
2025年4月25日、奥羽本線の山形・秋田県境部にあたる新庄~院内間の運転が再開されました。24年7月の豪雨で不通になってから約9か月ぶりです。
奥羽本線横堀駅の3番線は新庄からの電気式気動車の発着ホーム。架線は張られていない(森口誠之撮影)。
ただ、純粋な“復旧”ではなく、「非電化化」しての運行再開となりました。電化設備の機能を停止し、気動車で運行を始めたのです。
主力の電気式気動車GV-E400系は、基本1両編成で新庄~院内~横堀間を1日7往復走ります。山形県側の新庄~真室川間1.5往復の区間列車にはキハ110も使用されます。昨年まで走っていた701系電車は、院内~秋田の運用に限定されました。
この区間は1975年の電化当時、特急「つばさ」や「あけぼの」が行き交う重要幹線でしたが、50年後の今年、電化設備の撤去が始まります。事情を探るべく、5月2日朝、東北新幹線と北上線を乗り継ぎ現地へ向かいました。
横手から「電車」で南下、途中で「気動車」に乗り換え
横手11時34分発の奥羽本線上り701系電車2両は意外に混んでいて、40人以上の乗客がいました。被災前だと新庄行きでしたが、4月の運転再開にあわせて院内駅止めに変更されました。
十文字、湯沢で下車が続き、旧雄勝町の中心地である横堀へ12時5分着。十数人が降りていきます。ここで701系は下り列車との行き違いのため11分停車です。
12時11分、まず下り新庄発のGV-E400系が3番線に入線します。横堀が終着で、折り返し12時21分発の上り新庄行きとなります。今回、3番線は気動車発着ホームとして整備されましたが、架線は張られていません。
横堀で乗り換えてもいいのですが、上り新庄行きへの乗換は次の院内が推奨されています。跨線橋を渡らず同一ホーム上で移動できるからです。
続いて12時16分、下り院内始発、秋田行きの701系電車が2番線に到着。先ほど新庄から到着した気動車からの乗換客を迎え入れます。筆者(森口誠之:鉄道ライター)の乗る上り電車も、信号が青に変わり出発です。
次は終点の院内で、12時21分、3番線に到着します。6分後に、先ほどの上り横堀始発GV-E400系が隣の2番線に到着しました。この列車に乗り込みます。
「あ、架線がない!」見えてきた災害の痕跡
この列車は快速で、次の停車駅は真室川、そして新庄となります。快速は昼間の上り1本、下り2本で、院内~新庄間を最短41分で結び、山形新幹線「つばさ」と接続します。
泉田~羽前豊里駅間は土砂が流入し、架線柱などを飲み込んだ(画像:JR東日本)。
快速は雄勝峠を超えて山形県へ入ります。院内~及位間は1968年に新しいルートで複線化されました。線形がよいのと電気気動車の性能もあって、時速85キロで走り抜けます。珍名で有名な及位(のぞき)から先は単線です。
真室川に停車した後、羽前豊里の南側約1.3km先の踏切より南側に架線がないのに気づきました。翌日、クルマで被災現場を訪れると、線路横の斜面は土砂崩れの痕跡がありました。応急処置としてブルーシートで覆われ、付近約1kmでは架線と架線柱が撤去されていました。
終着の新庄駅には13時8分に到着。山形新幹線「つばさ」へ乗り換える人も3人いました。
筆者は、この後、横堀駅に戻り、「非電化化」区間の駅を巡る旅を続けました。気動車は8回乗りましたが、各列車とも乗客は十数人程度。GV-E400系は座席定員36人で、キハ110が約50人、701系が2両で約100人なのと比べるとかなり少ないですが、幸か不幸か利用者も少ないのであまり問題なさそうです。
ところで、JR東日本は、電化区間である新庄~院内間を、なぜ「非電化化」したのでしょうか。
前出の通り、奥羽本線は2024年7月に発生した山形県北部の大雨により、新庄~院内間の26か所で、土砂流入や法面崩壊など被害が発生しました。同時に被災した陸羽東線鳴子温泉~新庄間は復旧の目処が立っていません。
JR東日本は、同年10月、新庄~院内間の復旧とあわせて「電車線(架線)設備を順次取り外す」と発表します。倒木や積雪で架線が切れるなどの障害を回避でき、災害からの早期復旧が可能となると強調しました。過去20年間で新庄~院内間の架線の断線は15件発生したといいます。
筆者は、もう1点、気になることがありました。
他の路線でも進める「非電化化」
JR東日本は、2021年3月期の決算説明会資料で、一部路線の「非電化や単線化の検討」を示唆していました。不採算路線の経営改善のために、コストカットが喫緊の課題です。
奥羽本線院内駅での気動車と電車の接続。上りは院内駅、下りは横堀駅で同一ホーム乗り換えが可能(森口誠之撮影)
「非電化化」第1号は磐越西線の会津若松~喜多方間です。ここは2022年3月に電車の運行を取りやめて、架線など電化設備を撤去しました。同年9月にはJR九州も、長崎本線の肥前浜~長崎間を西九州新幹線開業にあわせて「非電化化」しています。
筆者はこの頃から、次の「非電化化」候補は、奥羽本線新庄~院内~湯沢間だろうと想像していました。
新庄~院内~湯沢間の利用は長らく低迷しています。1kmあたりの1日平均旅客輸送人員を示す輸送密度はJR初年の1987年度で4047人でしたが、2002年度898人、2019年度416人、2023年度291人と激減しています。県境を越える新庄~院内間に限ると、輸送密度はさらに低いでしょう。
「本線」なのになぜ? と疑問を持つ方もいらっしゃると思います。奥羽本線ならではの事情があります。
奥羽本線は、前出の通り全線電化された1975年当時、首都圏と秋田県を結ぶ大動脈として、上野発の「つばさ」や「あけぼの」「津軽」などの直通列車が走っていました。
ただ、東京~秋田間の流動は1982年の東北新幹線開業で盛岡駅・田沢湖線経由が中心となりました。さらに山形新幹線「つばさ」が1992年に山形、1999年に新庄まで乗り入れ、1997年には秋田新幹線「こまち」が東京~秋田間を直通します。
この過程で、新庄~院内~湯沢間はメインルートから外れました。特急と夜行列車の運行は終了し、県境を越えて行き来する需要が激減しました。沿線人口も通学の高校生も減少し、非電化区間内で一番利用の多い真室川駅でも、乗車人員は1日72人(2023年度)、2000年度比で27%です。
並行して東北中央自動車道の一部となる自動車専用道路の整備が進みます。2025年度中に秋田県側は院内以北が開通し、及位~院内間など残り16kmは工事中です。この道路は未開通部も含め、山形の東根市から新庄を経て湯沢市まで100km以上にわたって無料で利用できます。JRも太刀打ちできません。
乗換案内に“ひと工夫”が必要では
このように、JR東日本が新庄~院内間を「非電化化」したのは、極端に利用が少ない区間の経営改善を目指す方針があったからです。
「非電化化」区間の奥羽本線新庄~院内間は1日7往復。下りだと横堀行き気動車の5、6分後に秋田行き電車が続行して横堀駅で接続。院内21時3分発は新庄~秋田間を直通(森口誠之撮影)
製造費が割高な交流電車を2両で走らせるより、気動車1両の方が経費節減になります。国や自治体からの助成はありませんし、やむを得ない判断でした。将来的には複線設備や行き違い設備の機能停止もあるかもしれません。
沿線の住民たちはどう感じているのでしょうか。秋田県側では院内・湯沢・横手~秋田間の直通電車は引き続き運行されます。山形県側は減便されましたが、利用のある時間帯は現状維持でした。
「電車が走れなくなる」と聞くと消極的にも感じますが、電気式気動車はエンジンで発電機を回してモーターを駆動する、システムとしては“電車的”な車両です。県境を越えての移動は多くはないし、乗換はさほど不便ではない。地域の利用者がマイナス面を感じるシーンは意外に少ないかもしれません。
ただ、JR東日本に検討して欲しいことが1点あります。
奥羽本線の気動車と電車は、前述のように、下りは横堀駅、上りは院内駅で、同一ホームの対面に並んで停車します。利便性とバリアフリーに配慮した形で、乗換客は跨線橋を渡らず移動できます。
ところが、車内放送では乗換駅の案内はなく、車内に説明文書も掲示されていません。駅の運転再開を告知するポスターで小さく触れているだけです。地元の方でも気づいていないでしょう。ゆえに運転士さんに「新庄行きはどこで乗り換えるの?」と質問する乗客が続出し、客扱いに時間がかかっていました。
JRは、上りだと院内駅での乗換を推奨していますが、横堀駅で乗り換える選択も間違いではありません。跨線橋を渡らなければなりませんが、始発から乗車したら確実に座席を確保できます。乗換駅が2か所ある件について、初見の利用者に趣旨を理解してもらえないと思います。案内に、ひと工夫欲しいところです。
実は損している?
ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。
運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?
簡単無料登録はこちらYOUの気持ち聞かせてよ!
いいね | ![]() |
|
---|---|---|
ムカムカ | ![]() |
|
悲しい | ![]() |
|
ふ〜ん | ![]() |
