特急も線路すらも消えた“新幹線ショック”から28年 日本屈指の人気駅弁“驚きの新商品”を開発中! 今は高速道路が主戦場
- 乗りものニュース |

駅弁フェアの常連となっている日本屈指の人気駅弁の開発元で、販路拡大に向けて「新商品」の開発を進めていることが分かりました。
1億8000万個のベストセラー「峠の釜めし」
首都圏の小売店などで開催される「駅弁フェア」の常連の一つが、益子焼の土釜でおなじみ、JR信越本線横川駅の駅弁「峠の釜めし」(1400円)です。1958年2月に売り出されたロングセラー商品で、製造元の荻野屋(群馬県安中市)によると累計販売個数は1億8000万個を超えています。
JR東日本の特急「あさま」色の189系の先頭部側面にあった「ASAMA」のロゴ(大塚圭一郎撮影)
安定した人気を支えているのは、土釜のインパクトに見劣りしない豊かな風味の釜飯です。北海道・利尻島産のコンブを使った出汁(だし)と数種類のしょうゆで味付けした炊き込みご飯に、鶏肉やシイタケ、タケノコ、クリ、ウズラの卵、アンズなどの具材を載せ、わさび漬けや小梅漬けなどの香の物を入れたプラスチック容器も同梱しています。現在は土釜のほか、植物由来の原料を使ったパルプモールド容器入りも販売されています。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)のインタビューに応じた荻野屋首都圏事業部の浦野恵造部長(42)は、販売先の飛躍的な拡大を目指して「新商品」の開発を進めていることを明らかにしました。
「峠の釜めし」を考案したのは、4代目社長の故・高見澤みねじ氏らです。横川駅で販売していた弁当の売れ行きが振るわないことに頭を痛めていた高見澤氏は、旅行者らに聞き取り調査をしました。すると、購入した時も温かい状態で食べられる弁当が求められているという答えにたどり着きました。
どうしたら温かい弁当を提供できるのかを考えていたある日、益子焼の窯元、塚本製陶所(現・つかもと、栃木県益子町)が売り込みに来ました。保温性が優れた益子焼の土釜に弁当を入れればいいとひらめき、誕生したのが「峠の釜めし」です。
当時は、急勾配の碓氷峠を通る横川―軽井沢間の列車に補助機関車を連結または切り離しのため、列車は横川で長時間停車していました。プラットホームでの立ち売りで「峠の釜めし」を買い求めた乗客は、土釜に入った温かい釜飯に喜びました。しかも土釜をお土産として持ち帰ることもできるとあって話題を呼びました。
「峠の釜めし」は信越本線の名物駅弁として定着し、駅弁の製造元と窯元がともに躍進する「ウイン―ウイン」の関係となりました。
大幹線から一夜にして「行き止まり線」に転落 でも先手を打っていた
筆者は幼少期の夏休みに親類宅へ向かうため、当時は在来線特急だった「あさま」(上野―長野・直江津)や、夏の行楽期に走っていた特急「そよかぜ」(上野―中軽井沢)に乗って上野から中軽井沢へ行く途中、横川駅のホームで昼食用に「峠の釜めし」を買うのが定番でした。出発する際に車窓をのぞくと、荻野屋の販売員が深々とお辞儀をしていたのを覚えています。
横川―軽井沢間の碓氷峠を通る列車に補助機関車として連結していた電気機関車EF63。軽井沢駅に展示されている(大塚圭一郎撮影)
しかし、横川の長時間停車という商機を捉えた「峠の釜めし」に、大きな試練が訪れます。1998年長野冬季オリンピックの前年、97年10月に高崎―長野間で部分開業した北陸新幹線(当時の通称は長野新幹線)です。
これに伴って9月末をもって信越本線横川―軽井沢間の運行が終わり、この区間を走っていた特急「あさま」や、上野―金沢間の特急「白山」などは廃止されました。横川は一夜にして事実上のローカル線の終着駅に転落し、高崎と結ぶ普通列車が1時間にほぼ1往復するだけになりました。
ただ、この事態を見越して荻野屋は先手を打っていました。1991年に軽井沢駅構内へ出店し、93年には上信越自動車道の上り線に「横川サービスエリア店」を開業するなどしていました。浦野部長は「荻野屋で現在売り上げ規模が一番多いのは横川サービスエリア店です」と説明します。
さらに、成長余地が大きい販売先として目を付けたのが一大市場の首都圏でした。2017年4月に東京・銀座6丁目にオープンした複合商業施設「GINZA SIX」に東京都内最初の店舗をオープン(現在は閉店)し、19年12月には東京都杉並区に工場と店舗を備えた「荻野屋八幡山」を開設しました。
これにより「峠の釜めし」を調理するのは横川製造工場(安中市)、諏訪製造工場(長野県諏訪市)、荻野屋八幡山の3か所に。浦野部長は「首都圏の店舗や催事で販売する商品は主に八幡山で作っていますが、多くの個数が必要な場合などには横川製造工場から出荷することもあります」と話します。
ワールドワイド「峠の釜めし」を狙える新商品!?
「峠の釜めし」の消費期限は、「基本的に土釜入りは8時間、パルプモールドは12時間に設定している」(浦野部長)とされ、販売できる商圏が限られていました。
荻野屋の「峠の釜めし」(画像:荻野屋)
対策として荻野屋が2023年に導入したのが冷蔵商品で、消費期限は製造日の3日後です。諏訪製造工場で作っており、上信越自動車道の上り線の横川SAと下り線の東部湯の丸SA(長野県)、インターネット通販などで販売しています。
さらに、浦野部長は今後の販路拡大に向けた「新商品」として、「冷凍の『峠の釜めし』も鋭意開発しており、発売を検討している」と明らかにしました。
ただし「冷凍に向かない具材が一部あり、要検討課題になっている」とのこと。しかし、「そういった問題点をクリアできるように試行錯誤しながら、商品化に向けて取り組んでいます」と打ち明けました。発売時期や商品設計は「現時点では不確定」だそうです。
もっとも、同じ風味を楽しめる冷凍商品が登場すれば、海外を含めて販路が急拡大する可能性を秘めています。北陸新幹線の開業によるショックを乗り越え、販路の新規開拓を進めてきた荻野屋の「次の一手」から目が離せません。
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