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「エンジン2つなら安心」は勘違い!? 戦闘機の「単発vs双発」論争 最新F-35があえて1基を選んだ深い理由

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「エンジン2基なら安全」は本当か? 生死を分ける洋上飛行と故障リスク

 航空史をひも解けば、戦闘機はその誕生以来、常に「速度」「上昇力」「運動性」といった要素を競い合いながら進化してきました。

Large figure1 gallery5航空自衛隊の異機種編隊飛行。手前のF-15JとF-4EJ改は双発エンジン、奥のF-35AとF-2は単発エンジンだ(画像:航空自衛隊)

 しかしジェット戦闘機の登場以降、技術的進歩が著しく進んだにもかかわらず、今なお解決しない根源的な問いが存在します。それは「戦闘機のエンジンは単発がよいのか、それとも双発であるべきか」という問題です。半世紀以上にわたる議論は、技術的優劣の問題を超え、国家戦略や運用思想の差異、さらには哲学的な選択をも映し出しています。

 まず、双発機の利点として最もわかりやすいのは冗長性(生残性)です。片方のエンジンが停止しても、もう一方で飛行を継続し、基地へ帰還する可能性が残されます。特に洋上を飛ぶ作戦において、この冗長性は搭乗員の生死を分ける決定的な要素となりえます。

 アメリカ海軍が長年にわたり空母搭載機として双発エンジン機を重視してきた背景には、この切実な安全要求がありました。荒天の中で空母に帰投しなければならない状況で、エンジンが1基でも健在であれば生還率は格段に高まるからです。

 一方で、単発エンジン機が故障後ただちに不安定となるかといえば、必ずしもそうではありません。むしろ単発機の設計者たちは、エンジン故障率そのものを低減させる方向で解決を図ってきました。単発であるがゆえに、整備性を向上させ、機械的な信頼性を極限まで高めようと努力してきたのです。

 結果、現代の戦闘機用ターボファンエンジンは平均故障間隔が長くなり、故障による喪失率は第二次大戦終結直後の、いわゆる第一世代ジェット戦闘機の時代とは比較にならないほど低くなっています。確率論的にいえば、双発は「故障機会が2倍になる」ため、単発のほうがむしろトラブルに遭遇する確率そのものは低いとも言えるでしょう。

 安全性という観点では結局のところ一長一短であり、そこから議論は次の次元へと移ります。すなわち「戦闘機をどのような存在として定義するのか」という運用哲学的な問いです。

「余裕」か「コスパ」か? 戦闘機のカタチを決める国家戦略

 双発は構造上、必然的に機体サイズは大型化しますが、ゆえにその余裕は燃料や兵装の搭載力へと直結します。長距離侵攻や重武装任務を想定すれば、双発は自然な帰結といえるでしょう。

Large figure2 gallery6双発エンジンのMiG-29とSu-57。ソビエト時代は単発機が少なくなかったが、現在のロシアは双発戦闘機が主力となっている(画像:関賢太郎)

 アメリカ空軍のF-15や、ロシアのSu-27系列はその典型であり、圧倒的な推力と航続性能によって、制空権を奪取するための、いわゆる制空戦闘機としてだけではなく、F-15EやSu-34といった長距離侵攻可能な戦闘爆撃機まで生み出しています。その発展の仕方を見るだけでも、機体サイズの大型化による恩恵はわかります。

 対照的に単発は、より小型でシンプルかつ安価に製造できる点に強みがあります。限られた国防予算の中で多数を揃える場合、単発の経済性は無視できません。F-16が冷戦期に膨大な数が調達・配備されたのは、単に性能が優れていたからではなく、同盟国を含め広く供給できる価格と運用効率を備えていたからだと言えます。現代においてもこの傾向は続いており、最新鋭のF-35は単発機です。

 結局のところ、単発か双発かという問いは「戦闘機とは何を体現すべき存在なのか」という問題に帰着すると言えます。

 単発は効率を、双発は冗長性と持続力を実現し、いずれが正しいという結論はなく、時代と国情に応じて選ばれるべき選択肢なのです。おそらく将来の戦闘機においても、この議論は繰り返されるでしょう。

 無人化技術や新たな推進システムが登場してもなお、「リスクを分散させるべきか、それとも機体を極限まで簡素化すべきか」という根源的な問いは残り続けるに違いありません。

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