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何もかもピンクでした――都市の廃線跡に転生した元「サンダーバード」が徹頭徹尾ブッ飛んでいた件

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舞台は東海道本線と山陰本線を結んだ短絡線の跡

 JR西日本山陰本線に2019年開業した梅小路京都西駅(京都市)の脇の高架に、ド派手なピンク色の電車の先頭車が止まっています。流線形をした先頭部の左右に円形の前照灯と尾灯が斜めに並んでいるため、どの形式の車両か判別できます。しかし、かつて北陸地方を頻繁に行き来していた特急時代の塗装とはかけ離れた色をまとっています。

Large figure1 gallery11「フューチャーバード」建設中の様子(画像:JR西日本)

 筆者(大塚圭一郎、共同通信社経済部次長)は近くにある京都鉄道博物館を見学後に訪問し、なぜ今の姿に生まれ変わったのかを探りました。

 梅小路京都西駅の脇にある階段を上ると、東海道本線と山陰本線をつなぐ短絡線として使われていた高架の上に出ました。短絡線は、近くにあった梅小路(京都貨物駅)と山陰本線丹波口(京都市)付近を結んでいた長さ2.3kmの路線です。主に貨物列車が走っていたものの、臨時の旅客列車が通ることもありました。

 1987年の国鉄の分割民営化後は、JR西日本が第1種鉄道事業者として線路を保有して旅客列車を運行し、JR貨物は第2種鉄道事業者として線路を借りて貨物列車を運行していました。

 しかし、JR貨物は2006年4月1日付で短絡線での第2種鉄道事業を廃止。JR西日本も「将来的に営業線として活用する予定がなく、また、(梅小路京都西)新駅設置に支障をきたす」として2016年2月に短絡線の廃止届出書を国土交通省近畿運輸局に提出しました。

 そんな短絡線の廃線跡に鎮座しているのが、特急「しらさぎ」や特急「サンダーバード」で使われていた681系のグリーン車の先頭「クロ681-4」です。2024年に廃車になった681系のW15編成(6両編成)に入っていました。

 681系は北陸新幹線の延伸とともに、運用される特急の役割が縮小しました。2015年3月の長野―金沢間の延伸では北越急行ほくほく線に乗り入れて越後湯沢(新潟県湯沢町)―金沢を結んでいた特急「はくたか」が廃止になりました。

 2024年3月に北陸新幹線の金沢―敦賀(福井県敦賀市)が開業すると、名古屋・米原(滋賀県米原市)発着の「しらさぎ」と大阪発着の「サンダーバード」は敦賀止まりとなりました。結果として「681系の余剰が出た」(JR西日本関係者)ことから廃車が相次ぎ、その一つがクロ681-4でした。

車内に案内されると、そこは「車内」ではなかった!?

 全く異なる色に塗り替え、客室のリクライニングシートなどを取り外し、床下機器も撤去したクロ681-4の“新天地”は、全く畑違いの「レストラン」でした。

Large figure2 gallery10「フューチャーバード」になったクロ681-4(大塚圭一郎撮影)

「FUTURE TRAIN KYOTO DINER & CAFE」という店名で2025年9月に開業しました。700円の入場料が必要ですが、京都鉄道博物館の入場券を持っていると無料で入れます。

 店員に案内されたテーブルは、クロ681-4ではありませんでした。

 筆者が案内されたのは、屋内にあるクロ681-4の後ろにある「2号車」をイメージした列車内を模した空間でした。「食堂車をモチーフとしたメインダイニング」という位置づけで、通路を挟み、1人用座席が向かい合ったテーブルと、2人用座席が向かい合ったテーブルが並んでいます。座席や壁もピンク色で彩られていました。

 その後ろの「3号車」にはバーカウンターと半個室が設けられ、プラットホームに当たる空間には山陰本線の高架区間を走る電車を見渡せるテーブルがあります。屋外にはテラス席もあり、全体の長さは約90mあります。

 メニューを手に取ると、表紙に「廃線が未来への扉に―FUTURE TRAIN、京都 梅小路に到着」と記されていました。この文言こそ、レストランの世界観を鮮明に映し出していました。このレストランは廃線になった短絡線の跡で、「未来行き」の列車に乗ろうというコンセプトなのです。

 また、ピンク色は北野天満宮など京都市の名所で楽しめる「紅梅」をイメージしていました。料理やデザートもピンクに色づけしたり、京都の特産品を生かしたりしており、筆者が注文した「スパイシーチキン&フレンチフライ」(1600円)に添えられていたタルタルソースもピンク色をした「京風アレンジの柴漬けタルタル」でした。北川本家(京都市)の「はんなり京梅酒」のソーダ割り(600円)も注文しました。

 来店客ならば中を見学できるクロ681-4は、未来に連れて行ってくれる“機関車”のような存在になっており、特急名を記していた方向幕には「FUTURE TRAIN KYOTO DINER & CAFE」と記載された店のロゴが躍り、行き先表示部分にはそのものズバリの「THE FUTURE 未来」と書かれていました。

会計後に渡された「ナゾのきっぷ」

「未来行き」をうたい、サンダーバードに使われていたことから「フューチャーバード」と名付けられたクロ681-4。そこには「正解のない時代、自分にとっての未来を考えるきっかけにしてほしい」という思いを込めたそうです。

 片開き扉を開けて入ると、暗黒の空間が待ち受けていました。といっても「お先真っ暗」という意味ではなく、アニメ『銀河鉄道999』で描かれた機関車内のコンピューター類が並んだ空間のような機械室の雰囲気なのです。現役時代に並んでいた横に2列と1列のリクライニングシートは取り払われ、代わりに壁沿いにベンチシートを配置しています。

 壁面のコンピューター類には「IMAGE」「20XX」の表示もあり、来場者に未来の20XX年へ向かうタイムマシンに乗ったように将来の世界を想像してもらおうとしていました。

 会計を済ませると、店員が「フリー乗車券」と書かれた券をくれました。訪れた日から1年間有効と記載されており、「この券を持ってきていただくと、有効期間内は無料で入場できます」と教えてくれました。

 券面には使用可能なのが「梅小路短絡線全線」と記しつつ、そこに描かれた路線図はまるでJR西日本の近畿エリア路線図のように広大です。

「全長約90mだけのエリアなのに」と一瞬思いましたが、レストランのコンセプトを思い出して考え直しました。このフリー乗車券は、「未来行き」という無限大に広がる可能性に門戸を開いてくれるきっぷなのです。きっと、描かれた路線図のように幅広い行き先が待ち受けていることでしょう。

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