「とんでもなくデカい旅客機」もう生まれないの?「需要がない」だけじゃない理由
- 乗りものニュース |
飛行機はかつてより小型が多くなっていますが、エアバスA380などの大型機も一部では活躍しています。ただ、「ジャンボ」超えの超大型機が飛ぶ未来は、いまのところ現実的ではないようです。なぜでしょうか。
実はA380、「ちっちゃく作ろう」がコンセプト?
かつて日本の航空会社では、「ジャンボ機」ボーイング747-400が主力機として運用されていました。しかしこの機の退役後は、より小型で、燃費の良さや低騒音を強みとする飛行機が多くなっています。超大型機と呼ばれるのは、ANAが運航している総2階建て機「エアバスA380」のみです。今後、「ジャンボ」を超える超大型機が飛ぶことはあるのでしょうか。
ANAのエアバスA380「フライングホヌ」(乗りものニュース編集部撮影)。
少なくとも旅客便に限定すると、これ以上、飛行機がサイズアップすることは、いまのところ制約が多く現実的ではないようです。
エアバスはA380の生産終了を2019年に発表。ボーイング747も、2023年初頭をもって最終号機の生産を終了しています。
しかし、実は「ジャンボ」超え超大型機の先駆けとなったエアバスA380は、総2階建てということを除くと、人数を乗せられる一方で、実はある意味「極力大きくなるのを防ぐ」ように作られた飛行機です。
1998年の設計段階でA380は翼幅(全幅)、全長ともに80m以下、全高は24m以下などを目標に設定、オプションで翼を折りたためる設計も検討されていたそうです。2005年に初飛行を迎えた実機の全幅(79.7m)、全長(72.7m)は範囲内。全高は若干超えてしまうものの、ほぼクリア(24.09m)となっています。
A380の製作が始まった当時、航空会社で定期便に導入されている飛行機で、全長が最大なのはエアバス340-600(75.3m)、全幅が最大なのはボーイング747-400(64.4m)でした。このことから、それぞれ80m以内であれば、既存の空港に対応できるとエアバスは試算していたといわれています。
ところが、エアバスA380が実際に就航してみると、その大きさに空港設備が円滑に対応できなかったのです。
A380、何が規格外? でも「目立たぬ超大型機」は誕生予定
というのも、それまでの空港設備はボーイング747(当時就航していない-8型機を除く)の機体サイズが最大として作られたものでした。そのため、エアバスの試算以上に、空港の大型旅客機への受け入れ態勢はギリギリだったのです。
那覇空港に発着していたチャイナエアラインのボーイング747-400。日本の空港も「ジャンボ」に対応していることが多い(2019年8月、乗りものニュース編集部撮影)。
そのようななか現れた、「ジャンボ」を超える大きさで、総2階建てのエアバスA380。全長、全幅は範囲内に収まっても、駐機場などは、2階の人もスムーズに乗降できるような搭乗橋など相応のものを準備する必要があります。機体重量もボーイング747-400(約180t)より100t重い約277t。燃料や人が加わればもっと重くなるため、「ジャンボ」はOKでもA380は、地面強度の問題で離着陸できない滑走路がでてきます。
なお、航空輸送の国際ルールなどを定める国際民間航空機関(ICAO)は、駐機場や誘導路を統制する目的で、機体の大きさをA(小さい)からE(大きい)の5段階に分けたコードを設定していましたが、A380が登場したことで、新たに6つ目の段階「コードF」を作ります。
A380は国際ルールを再度設定しなければならないような規格外のサイズで、この基準を満たす設備を持つ空港にしか、原則受け入れてもらえないのです。
なお、日本でもっとも利用者が多い羽田空港にはA380の駐機スポットもあり、何度か飛来したことがあるものの、実際の路線投入は見送られています。明確な理由は発表されていませんが、一部滑走路や誘導路がA380の大きさや重量に対応していないほか、同型機が離着陸したのちに発生する後方乱気流で、ほかの飛行機の離着陸が制限される影響もあるそうです。
ただ、2階建てということを除けば、大型旅客機は今後も生み出される予定です。たとえばANAも導入を予定しているボーイングの「777-9」は、実用化されれば世界最大の長さを持つ旅客機となる、77mの全長をもちます。
この機は翼幅も70m超で、そのなかでも既存の空港設備に対応すべく、主翼先端が折りたたみ式となっています。ボーイングやICAOなどの資料によると、この機の機体サイズはA380と同じICAO基準の「コードF」に分類される見込みです。
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