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歩兵1人でも戦車を撃破! ぶ厚い装甲貫く成形炸薬弾の仕組み 世紀の発見“メタルジェット”

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  • 乗りものニュース
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戦車のぶ厚い装甲を貫き、撃破するための砲弾には大きく2種類あります。ひとつは運動エネルギーで貫通する徹甲弾。もうひとつが弾体内部の炸薬による化学エネルギーを用いる成形炸薬弾です。炸薬の威力で穴を開けるには、コツが必要です。

運動エネルギーに頼らずぶ厚い装甲を貫くには

 戦車の装甲板は、敵弾から内部を守るためのもの。一方で戦車は、敵戦車の装甲板を貫ける強力な砲を搭載しています。装甲板の貫徹力を高めるためには様々なやり方がありますが、最も単純なのは、硬くて重い芯まで金属のムクの砲弾を、可能な限り高速、つまり「強い力」で撃ち出すことです。

 このような砲弾を徹甲弾(Armor piercingの略からAP弾とも)といいます。徹甲弾でよりぶ厚い装甲板を貫こうとする場合、砲弾をより大きく重くして、さらなる高速で撃ち出せば、高い貫徹力を持つ砲弾に仕上がります。しかし、砲弾が大きく重くなれば、それを高速で撃つために大量の発射薬を用いなければなりません。増えた発射薬の爆発力に耐えられるように、発射装置である砲もそれに合わせて頑丈にしなければならず、その分、砲自体が大きく重くなってしまうという悪循環が生じます。つまり、より貫徹力に優れた砲(戦車砲)を造ろうとすれば、大型化と大重量化は避けて通れませんでした。

Large 210916 heat 01陸上自衛隊の90式戦車による実弾射撃の様子(柘植優介撮影)。

 ところが、第2次世界大戦中、その原則を覆すやり方が誕生しました。それが成形炸薬弾(対戦車榴弾)です。これは英語では「High-Explosive Anti-Tank」といい、その頭文字を取ってHEAT弾とも呼ばれます。

 成形炸薬弾は、その名のとおり、砲弾内部に詰められた炸薬を一定の形に成形してあります。加えて、炸薬の量を増やすだけで貫徹力を向上させられるため、砲弾を高速で撃ち出す必要がありません。

 砲弾の内部構造の改良だけで済むことから、口径こそ大きいものの高速の徹甲弾を発射できず対戦車戦闘には使えなかった旧式砲や小型の砲でも、一定程度の装甲貫徹力を付与することが成形炸薬弾の登場で可能となりました。また砲弾を高速で撃ち出す必要がないため、地雷のような「動かない」対戦車兵器にまで強力な装甲貫徹力を付与できるようになったのです。

成形炸薬弾の原理「モンロー効果」とは

 さらに、「運動エネルギー」で装甲板を貫く徹甲弾は、飛翔するエネルギーも貫徹力の一要素であるため、飛翔距離が遠くなればなるほど威力が低下するという欠点があります。しかし成形炸薬弾の場合、炸薬の爆発、すなわち化学エネルギーによって装甲板に穴を開けることから、貫徹可能な装甲厚は炸裂する炸薬量のみで決まり、むしろ運動エネルギーは関係ないため、どんな近距離でも遠距離でも、原理的には貫徹力は同一で変化しません。

Large 210916 heat 02成形炸薬弾のカット展示。内部の漏斗状の部分から前側は空洞になっている(柘植優介撮影)。

 高速で発射する必要がなければ、発射装置にも大口径砲のような強度を必要としないので、軽量化が可能。このことは、個人で携行する対戦車兵器の発達にもつながりました。

 では、一体どのようにして成形炸薬弾は装甲板を貫いているのか。前述したとおり、成形炸薬弾は徹甲弾のように砲弾内部で炸薬が爆発して装甲板に穴を開けるため、「貫く」のではなく、むしろ「吹き破る」という方が適切といえるでしょう。この「炸薬の威力によって装甲板に孔を穿つ」という原理が、「モンロー効果」や「ノイマン効果」といわれるものです。このふたつの「効果」は、両方とも発見者の名が由来です。

 モンロー効果の由来になったのは、アメリカ人科学者チャールズ・E・モンロー。彼は1888年(異説あり)に、ひとつの興味深い事実を発見しました。円筒形をした爆薬の片方の先端に、漏斗(ろうと)のような円錐形のくぼみを設けて、そのくぼみのある面を装甲板に密着させ、くぼみがある面とは反対側の面から起爆させると、くぼみが密着していた装甲板に孔が穿たれるというものでした。

成形炸薬弾のもうひとつの原理「ノイマン効果」

 基本的に爆発力というのは、爆心から外に向かって球状に拡散していきます。そのため、装甲板の外側で爆発が生じても、爆発の一部が装甲板の広い面にかかるだけに過ぎず、ゆえに装甲板に孔を穿つことはできません。

 一方、モンロー効果では、端的にいうと円錐形のくぼみの後方から起爆した爆薬の爆発力が、くぼみによってレンズが焦点を結ぶように装甲板の一点に集中的に超音速で吹き付けられることで、威力がその一点に集約され、これにより、吹き破るように装甲板に孔が穿たれるのです。そして、この爆薬の先端に設けられた「円錐形のくぼみ」の角度は、30度から45度程度が適切だということも判明しました。

Large 210916 heat 03自衛隊の新旧の肩撃ち式対戦車火器。手前が89mmロケット発射筒、いわゆるバズーカ。奥が84mm無反動砲。両方とも対戦車弾頭は成形炸薬弾で、後者の方が新しくより強力(柘植優介撮影)。

 モンロー効果の発見から約20年後の1910年、ドイツ人科学者エゴン・ノイマンは、モンロー効果の円錐形のくぼみに合わせて薄い金属板の内張りを施すと、装甲貫徹力がいっそう高まることを発見します。これが、ノイマン効果です。こちらの原理は、要はモンロー効果によって生じた爆発力に金属内張りが超音速の金属塊として加わることで重くなり(これをメタルジェットと呼ぶ)、より厚い装甲板の貫徹が可能になるというものです。

 これらモンロー効果とノイマン効果を合わせて誕生したのが、成形炸薬弾(HEAT弾)というわけです。前述したように、旧式化した低初速砲であっても、その砲から発射できる成形炸薬弾を造るだけで対戦車戦闘が可能となるのですから、短期間で対戦車戦闘能力を向上させることができます。

 そのため、第2次世界大戦ではあっという間に世界各国へ普及し、また高速で撃ち出す必要がないことから、小銃から発射可能な対戦車小銃てき弾、信号弾を発射する信号拳銃用の対戦車てき弾といったものから、歩兵ひとりで携行し、状況に応じて肩撃ちが可能なバズーカ砲のようなものまで、多種多様な対戦車火器が短期間のうちに開発されました。

成形炸薬弾の弱点

 しかし一方で、成形炸薬弾にはいくつかの弱点もありました。最大の弱点は、装甲板と正対した位置で起爆しなければ、所定の装甲貫徹力が発揮されないという点です。たとえば、命中した箇所に突起物があった場合、装甲板とぴったり正対できないことから、装甲貫徹力が大きく減衰し、貫けなくなることもありました。

 これを逆手に取って、第2次世界大戦中期以降のドイツ戦車では、薄い装甲板で造られた「シュルツェン」と呼ばれるものや、金網状の「トーマ・シールド」といった補助装甲を、戦車の車体や砲塔に隙間を空けて取り付けるようになります。

 あえて車体や砲塔と離してあることで、これらに成形炸薬弾が命中しても、メタルジェットがそれら補助装甲と車体や砲塔との間で放散してしまい、本体の装甲まで到達せず、撃破を免れられるという次第です。

Large 210916 heat 04第2次大戦中のドイツIII号突撃砲。車体側面に「シュルツェン」という薄い補助装甲がアームで車体と離して取り付けられている。この隙間により成形炸薬弾の威力が減衰する(柘植優介撮影)。

 もうひとつの成形炸薬弾の弱点は、砲身内径に施されたらせん状の溝(ライフリング)によってスピンがかけられると、鋭く細いメタルジェットにも遠心力が加わって太めに広がってしまい、そのせいで装甲貫徹力が低下してしまうことです。このライフリングがあることで砲弾は回転し、命中精度が増すのですが、成形炸薬弾にとってはデメリットにもなります。このような事情から、成形炸薬弾はバズーカ砲など、弾体を回転させずに撃ち出す兵器の方が向いているといえます。

 成形炸薬弾は、現在も対戦車ミサイルや、肩撃ち式ロケット弾発射機のような個人携行対戦車兵器の弾頭に用いられています。炸薬や金属内張りの改良が進み、最新の成型炸薬弾は、第2次世界大戦中のものと同じ炸薬量なら2倍から3倍ほど厚い装甲板であっても穴を開けられるほど強力になっているといわれます。さらに補助装甲対策として、同弾を前後にふたつ、あるいは三つ重ねた、いわゆるタンデム弾頭と呼ばれる構造のものまで生まれています。

 第2次世界大戦中に出現した成形炸薬弾ですが、費用対効果(コストパフォーマンス)に優れることから、今後も対戦車兵器の有力な弾種のひとつとして、使われ続けることでしょう。

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