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日本企業には無理!? 縦置きVツイン作り続ける「イタリア最古の二輪メーカー」100年愛される理由どこに?

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  • 乗りものニュース
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かつては国産バイクでも搭載モデルが多かったVツインエンジンですが、現在では世界的に減少傾向で、中でも縦置きVツインを採用するのはイタリアのモト・グッツィだけ。そんな縦置きVツインの魅力はどこにあるのでしょうか。

昔は意外と多かった縦置きVツイン

 オートバイのエンジンはシリンダーの配列形式により、単気筒、直列型、V型、水平対向の4種類が存在します。それらの中で現在、主流となっているのが、排気量250ccまでの中・小型車やスクーターでは単気筒、400cc以上の中・大型車は直列型です。なお、ハーレーなどのクルーザーに採用例が多いV型エンジンは最近では数を減らしつつあり、水平対向エンジンはBMWの2気筒(フラットツイン)とホンダ「ゴールドウイング」の6気筒くらいしかありません。

Large figure1 gallery7モト・グッツィ製の縦置きされた空冷Vツインエンジン(山崎龍撮影)。

 V型エンジンの場合、一般的なのは2気筒(Vツイン)で、多くの場合は車体の進行方向に横置きで搭載されますが、少数ながらV型エンジンを縦置きで搭載したバイクも存在します。古くは1931年のAJS「S3 Vツイン」(英)に始まり、1941年のインディアン「841」(米)、1953年のヴィクトリア「V35ベルグマイスター」(独)などに採用されました。

 日本車としては、1960年代に縦置きVツイン車を相次いで発表した丸正ライラックが最も有名で、「C82」や「LS18」「ランサーMK.V・LS38」などが代表車種になります。ほかには1970年代末~1980年代前半にホンダが販売した「GL400/500」シリーズ、このバイクから派生した過給器付きの「CX500ターボ」や「CX650ターボ」があります。また、4気筒車になりますが2014年に販売を開始したホンダのクルーザー「CTX1300」(国内販売は2年で終了。現在は輸出専用車)も縦置きV型エンジンを採用していました。

 そのような少数派の縦置きV型エンジンを搭載したオートバイの中で、現在も多くの車種をラインナップし、最も成功したメーカーがイタリアのモト・グッツィです。

縦置きVツイン=モト・グッツィでしょ!

 イタリア最古のオートバイメーカーであるモト・グッツィの歴史は、第一次世界大戦中にレーシングライダーのジョヴァンニ・ラヴェッリ、エンジニアのカルロ・グッツィ、大富豪のジョルジョ・パローディの3人がイタリア空軍に招集されて出会い、意気投合して「戦争が終わったら3人でバイクメーカーを起業しよう」と誓ったことから始まりました。

Large figure2 gallery8世界的なアドベンチャーバイク人気を背景に、2019年に発表されたモト・グッツィ「V85TT」。現在では縦置きVツインエンジンはモト・グッツィの代名詞となっている(画像:モト・グッツィ)。

 ところが、終戦直後の飛行機事故でラヴェッリは帰らぬ人となります。残されたふたりは亡き友との約束を守り、1921年にミラノでモト・グッツィ社を立ち上げました。現在も使用される鷲のエンブレムは、イタリア空軍の紋章である「アクイラ」をモチーフにしたもので、会社の起源を表すとともに、3人の友情が永遠であることを象徴しています。

 モト・グッツィはイタリアメーカーの常で、1957年に撤退を表明するまでは様々なレースに参戦しており、横型単気筒のほか、水平並列3気筒やV型8気筒など、様々なエンジンを開発していました。その一方で、創業から1960年代中頃にかけての市販車は、小・中排気量の単気筒エンジンを主力としていました。

 同社が大排気量の縦置きVツインエンジンを採用したのは、1965年の「V7(初代)」からで、このバイクが商業的に成功したことから、以後のモト・グッツィ製オートバイは縦置きVツインを搭載するようになります。

独特の乗り味にハマる? 縦置きVツインのメリット

 2024年現在、モト・グッツィ以外ではほとんど採用例がない縦置きVツインエンジンですが、左右のシリンダーヘッドが車体から突き出すことで走行風による冷却効果が高い、エンジンの回転物であるクランクシャフトが車体の進行方向と同一になるのでジャイロ効果により直進安定性に優れる、トランスミッションがエンジン後方に配置されることからスリムな車体設計が可能、横型エンジンをシャフトドライブ化した場合と異なり、後方にエンジン出力が伝達されるので90度変えるべべルギアが必要ない、などのメリットが挙げられます。

Large figure3 gallery9モト・グッツィを正面から見ると縦置きVツインの特徴であるシリンダーヘッドの張り出しがよくわかる。この独特の形状から「Y型エンジン」とも呼ばれている(山崎 龍撮影)。

 反対に弱点はほかの縦置きエンジンと同じく、停車時やごく低速時にアクセルをあおるとクランクシャフトの反力で車体が右側へ起きようとする現象、いわゆる「トルクリアクション」が生じることや、チェーンドライブとの相性がよくないなどといった点があります。

 とはいえ、前述したようなメリットがあるのも事実。では、なぜ日本の二輪メーカーは、縦置きVツインエンジンのバイクをやめてしまったのでしょうか。

 その理由としては、日本のユーザーは直列4気筒志向が強く、縦置きVツインの特徴が「クセの強さ」として捉えるライダーが多かったことに加え、チェーンドライブと違ってシャフトドライブはファイナルレシオ(ギア比)の変更が難しいことから、これらの点が嫌われて、日本では縦置きVツインのオートバイが人気にならなかったと筆者(山崎 龍:乗り物系ライター)は推測します。

 しかし、1度味わうとその魅力にどっぷりハマるのが縦置きVツインエンジン車です。筆者はつい最近、中古のモト・グッツィ「V11スポーツ」を手に入れました。運転感覚は独特で、低速ではハーレーのような鼓動を感じるのですが、回転を上げるにつれVツインの特徴である振動が収束し、高回転まで綺麗に吹き上がります。

 なお、前出のトルクリアクションは思ったほど感じず、直進安定性には影響ありませんでした。だからか、近年「V7」や「V85TT」などの最新のモト・グッツィは静かなブームとなっているようで、日本のライダーの間でも徐々に縦置きVツインの認知度が高まりを見せつつあるようです。

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