いじめ加害者はなぜ「覚えていない」のか? 話題の芸人ドキュメンタリー映画が示唆するもの
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同級生から逃れるように上京した過去
学生の頃、同級生からのいじめを経験したことがあるという人は決して少なくないでしょう。筆者の場合は中学時代、数人の同級生からのものでした。
元は同じグループで仲が良かったのですが、ある日を境に関係値が一変。きっかけは、クラス対抗リレーで走る順番を揉めた、という本当に些細(ささい)なこと。今でも、いじめの標的が自分に定まった瞬間をリアルに思い出せます。歯車が軋むような、嫌な音がしました。
それからは、悪口を書いた手紙が机に置かれていたり、クラスで“いない者”として扱われたり、ボールをぶつけられたり……。中学生活は、筆者にとって暗黒時代です。
中学の同級生と絶対に交わらない世界で生きるため、筆者は大学進学と同時に地元を離れ東京圏へ上京しました。
当時のことを忘れて過ごしていたある日、スマートフォンに通知が届きます。それはFacebookの「友達申請」でした。
相手は、筆者をいじめていた元・同級生。
かつてのことなど何もなかったような、昔を懐かしむメッセージ付き。それを読んで愕然としました。筆者にとって当時は忌まわしい過去ですが、彼女にとっては”青春のひととき”でしかなかったのです。
彼女にとって、筆者は”いじめていた相手”ではなく、ただの”中学の同級生”だった。彼女は記憶を書き換えてしまったのでしょうか。それとも、書き換えたのは筆者なのでしょうか……。
『ザ・エレクトリカルパレーズ』
「間違いのない真実」なんて、どこにもないのかもしれません。筆者の過去を事例として挙げましたが、集団生活を経験した人であれば、誰でも思い当たることがあるのではないでしょうか。
同じ集団に属していたなら同じ思い出を共有しているはずなのに、なにか食い違っている、という経験。筆者がこの“思い出したくない過去”を思い出したきっかけは、とある映画でした。
『ザ・エレクトリカルパレーズ』。吉本興業所属のお笑い芸人ニューヨークのYouTubeチャンネル『ニューヨーク Official Channel』に、2020年11月6日(金)に投稿された作品です。
10年後に紐解かれる、それぞれの真実
『ザ・エレクトリカルパレーズ』は、2011(平成23)年にNSC(吉本のお笑い養成所)東京校の17期生の中で生まれたグループ「ザ・エレクトリカルパレーズ(エレパレ)」に関するドキュメンタリー。

構成作家の奥田泰氏が監督を務め、ニューヨークがインタビュアーとして複数の関係者に話を聞く様子が描かれています。
公開当初より芸人や業界関係者、お笑いファンを中心に話題となり、徐々に勢いが加速。2時間を超える長尺にも関わらず、再生回数はすでに83万回を超えています(2021年1月17日12時現在)。
エレパレに所属していたのは、17期生の中でも特に“評価が高い”メンバーたち。自分たちの存在を誇示するかのようにオリジナルのテーマソングやおそろいのTシャツを作り、授業でも幅を利かせていたと言われています。
食い違う証言はミステリーさながら
メンバーは複数の女子生徒と関係を持っていたというウワサもあった、いわゆる“一軍”と呼ばれる存在。スクールカーストの頂点に立つ彼らでしたが、あることをきっかけにその存在は“無きもの”とされました。
そして、エレパレ誕生から約10年……17期生へのインタビューを軸に、エレパレに内包された“それぞれの真実”がひも解かれていきます。

この映画の見どころのひとつは、「人により食い違う証言」です。
多くの関係者が出演しますが、ある人はエレパレを忌み嫌い、ある人は愛おしい青春として語ります。
「エレパレとはなにか」と問われたら、それぞれに違う真実があり、明確な定義はありません。エレパレの内側にいた人・外から見ていた人で食い違いがあるのはもちろん、メンバー同士ですら、抱いていた印象や思い入れが違うのです。
ただひとつ確かなのは、全員が(おそらく)自分にとっての「真実」を語っていること。それにも関わらず食い違いが生まれる様子は、ミステリー作品のような緊迫感があります。「東京NSCの17期生」というとても狭いコミュニティーの話に見えますが、集団生活を経験したことのある人であれば、誰もが“何かを感じる”映画です。
『ザ・エレクトリカルパレーズ』と併せて見たい映像があります。それは、映画のエピソード0として1か月ほど後に公開された、『ラフレクラン西村の人間味あふれるエレパレ前日譚』。
本編の重要人物であるラフレクランのふたりをゲストに呼んだトークライブの様子ですが、筆者は、この映像を見てゾッとしました。
ネタバレになるため細かいことは言えませんが、ラフレクラン西村氏に対する印象が、本編とこの前日譚(たん)とでは大きく異なるのです。
語り手によって、人物像は大きく変わる
主に周囲の人間たちが西村氏の人物像を語る本編を見て、筆者が彼に抱いたのは「挫折を知らず野心に満ちた、少々狡猾(こうかつ)で器用な人物」というイメージ。
対して西村氏本人が自身の思いを開陳する前日譚で抱いたのは「真面目で熱く、まっすぐで不器用な人物」という真逆のイメージです(ちなみに、筆者が普段ライブなどを見て抱いていたのは、後者のイメージに近いです)。
語り手によって、こんなにも受け取るイメージが異なる。「自分が思っている自分」と「周りが見ている自分」は、こんなにも乖離(かいり)しているのだ、ということを見せつけられた気がしました(ライブが盛り上がるよう、多少の演出はあるのかもしれませんが……)。
東京は「個」と「個」が出会う街
東京は、地方から上京してきた筆者にとって「個」を意識することの多い場所です。普段、遊んだり仕事をしたりする相手は皆、“大人になってから出会った”人たち。血縁・地縁に関係なく、「個」としての自分が培った関係性がたくさん存在しています。

集団生活の中で出会ったのではないからこそ、ひとつひとつの関係性を大切に積み上げてきたつもりです。でも、その相手の数だけ、異なるイメージの「自分」が存在しているのかもしれません。そう考えると、少し怖さを感じます。
自分のことは自分が一番知っている……それは、ただの思い込みなのでしょう。
あなたにとっての「エレパレ」とは?
『ザ・エレクトリカルパレーズ』は、ふたつの示唆をはらんでいます。
ひとつは「同じ時代・場所に生きていても、見えている世界は違う」ということ。もうひとつは「関係性の数だけ“自分”が存在している」ということ。
『ザ・エレクトリカルパレーズ』は、とても不思議な映画です。見る人により、感想が全く異なるのです。
単純に「ストーリーが面白かった」という人もいるし、「自分に重なる部分があり恥ずかしい気持ちになった」という人もいます。ほかにも、「感動した」「壮大なコントのようで笑えた」「青春を思い出した」……など、さまざまな感想を聞きました。
筆者は、初めて見たときは上記のような深読みをし、「怖さ」を感じました。しかし2度目に観たとき感じたのは、初回とはまったく異なる「爽快さ」でした。
この映画は、見るタイミングや精神状態、抱える過去などにより感想が異なるというのも魅力のひとつかもしれません。
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