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無人戦闘機に「ヒトのこころ」は必要か? 世界が直面「AIにどこまで任せるか問題」 決めなければ“とんでもないリスク”に!?

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「ラジコン」ではない無人機のリスクとは

 防衛装備庁は2025年12月3日、「次期戦闘機と連携する無人機の導入におけるリスク・課題に関する調査・検討」業務の、一般競争入札を公告しました。この業務は将来の戦闘における重要な“指針”を決めるための材料を得る動きと考えられます。

Large figure1 gallery7AI「セントール」を搭載したグリペンE。有人パイロット機との模擬空戦が行われている(画像:サーブ)

 航空自衛隊が現在運用しているF-2戦闘機を後継する「次期戦闘機」は、イギリス、イタリア両国との共同開発計画「GCAP」で開発される新有人戦闘機の導入が決定しています。GCAPで開発される新戦闘機は、「CCA」(協調戦闘機)と呼ばれるUAS(無人航空機システム)と協働する戦闘機となる方向で開発作業が進められています。

 有人戦闘機の機体の開発にも参加している三菱重工業は、2024年10月に東京で開催された「2024国際航空宇宙展」に、次期戦闘機と協働するCCA「戦闘支援無人機」のコンセプトモデルを出展しています。有人機と並んで、無人機のほうも具体化しつつあるのです。

 防衛省は日本が単独開発を志向していた2010年代から、次期戦闘機と協働するCCA関連技術の研究を行ってきました。次期戦闘機と協働するCCAは一種類ではない可能性が高いのですが、川崎重工業やSUBARUも、サイズや用途の異なるCCAの研究開発を行っていますので、実用化にあたっての技術的問題は少ないものと思われます。

 ただ、戦闘支援無人機をはじめとするCCAは、単に母機から遠隔操作される「ラジコン」ではありません。飛行(移動)や攻撃などがAI(人工知能)によって制御されます。このため近年の無人防衛装備品の研究開発では、AIの使用により、どのような課題や問題が発生するのかについての研究も活発化しています。

 ドイツ・フランス・スペインが開発する新戦闘航空システム「FCAS」もまた、有人戦闘機とCCAの協働を前提としています。こちらでは、ドイツとスペインで開発の主体となるエアバスが2019年に、ドイツのフラウンホーファー通信・情報処理・人間工学研究所(FKIE)と共同で、FCASを運用するにあたり、「どこまでAIに任せてよいのか」を法的、倫理的側面から議論して提言する、独立した専門家パネルを設立しています。

 今回防衛装備庁が公告したリスク・課題に関する調査・検討業務の公告も、同じ目的で行われるものと考えられます。

「自らの意思で突撃するドローン」それでいいの?

 近年ではドイツのヘルシングが開発した自爆突入型UAS「HX-2 カルマ」のような、攻撃の判断までAIが行える無人装備品が登場しています。

Large figure2 gallery82024年10月に開催された「2024国際航空宇宙展」に三菱重工業が出展した「戦闘支援無人機」のコンセプトモデル(竹内 修撮影)

 ただ、人間の生命を奪う可能性の高い攻撃の可否の判断までAIに任せてしまって良いのかについては議論の対象となっています。

 自由主義陣営諸国で運用されている多くの攻撃型無人装備品には、最終的な攻撃の判断だけは必ず人間が行う「マン・イン・ザ・ループ」という概念が適用されています。戦闘支援無人機の実用化にあたっても、どこまでAIに任せて良いのかという課題が出現してくると筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は思います。

 どれだけ精巧なハードウェアやソフトウェアであっても、トラブルによる故障は発生します。万が一無人装備品にトラブルが発生して、他国と軍事的な衝突が発生してしまった場合、エスカレーション(段階的な拡大)による本格的な武力衝突を防ぐためのセーフティネットの構築も必要となるでしょうし、これは日本一国だけでなく、全世界的に取り組むべき課題なのではないかと思います。

「AI戦闘機」と有人戦闘機で「模擬空戦」している会社に聞いた

 スウェーデンの大手防衛関連企業のサーブは2025年6月に、自社が開発した「グリペンE」戦闘機に、ヘルシングが開発したAI「セントール」を搭載して、グリペンD戦闘機との模擬空戦実験を行っています。

 筆者は2025年9月に、このプロジェクトで主導的な役割を果たしている、マーカス・ワント氏(現上級副社長兼グループ戦略・技術部門責任者)に話を聞く機会を得ました。

 ワント氏はセントールについて、「人間のパイロットと比べると飛行経験の習熟スピードが桁違いに早く、安全性を含めたシステム自体の完成度も、当初自分たちが想定していたよりも高かった」と述べました。

そのうえで、今後はどのようなインプットを行えば、どのようなアウトプットが起こるべきかを、リテラシー(情報を理解して適切に活用・判断する能力)を持った人間が、きちんと監視していくシステムの構築が必要だと話しました。

 2025年12月8日付の日本経済新聞(電子版)は、アメリカではIT大手企業、ヨーロッパではコンサルタント企業で、倫理や哲学を履修した人材の募集が急増していると報じています。

 民生品でもAIがあらゆる分野で切っても切れない存在となっている現状、そして未来においては、確固たる倫理観や哲学を確立し、ワント氏が言うところの「リテラシー」を持った人材を育成していくことも、戦闘支援無人機をはじめとする無人防衛装備品の戦力化には必要なことだと筆者は思います。

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