「お召列車」なぜ廃止? 老朽化だけではない、日本と異なる英国王室の事情 150年以上の歴史に幕
- 乗りものニュース |

英国王室が王室専用列車、いわゆる「お召列車」を廃止する意向を示しました。150年以上の歴史を持つ王室専用車両は、どのように生まれ、そしてどのような経緯と背景で消えていくのでしょうか。
鉄道愛好家だったエリザベス女王
英国のチャールズ国王は、150年以上の歴史を持つ王室専用列車、いわゆる「お召列車」の伝統を2027年までに廃止する考えであることを、王室の年次会計報告書を通じて公表しました。
現在のお召列車(画像:Steve Jones)
お召列車の廃止にはいくつかの理由があります。
まずは、老朽化によるコスト問題です。
現在使われているお召列車の車両は、2022年に崩御されたチャールズ国王の母、エリザベス2世の即位25周年を記念して1977年に造られたものです(デイリー・ミラーによる)。老朽化が進み、2013年にはその維持費用が問題視され、廃止案が国会で議論された過去があります。
ところが、当時の英国君主であったエリザベス女王が、「どんな移動手段よりも鉄道の旅が好き」という意向を示したことにより、急転直下、「よく調べたら、お召列車はまだまだ使えました」と、なんとも間が抜けた発表がされたというドタバタ劇がありました(テレグラフによる)。
このように延命されたお召列車ですが、ここにきて、やはり老朽化があまりにも著しく、年間維持費は120万ポンド(約2億3700万円)にもなると再び取り沙汰されているわけです。
利用頻度の低下も問題になっています。鉄道愛好家であることを公言していたエリザベス女王とは異なり、現国王のチャールズ3世が2024年度にお召列車を利用したのは2回。2023年度にはたった1回だといいます。
「国民の反感」も廃止を後押し?
次に、王室の金銭スキャンダルから目を背けさせたいという思惑も背景にありそうです。王室が所有している不動産を慈善団体などに貸して利益を得ていたことなどが露呈し、国民の反感を買っているのです。
最後に、王室専用車両は、その時々の英国君主の好みや時代を反映して、新調または改造されてきたことがあります。
金銭問題や過去の女性問題などであまり人気があるとはいえないチャールズ国王ですが、意外にも、1970年、21歳の時には川や海に投棄されたプラスチック廃棄物や、大気汚染の脅威について演説し、早すぎる預言者として世間を唖然とさせたほど、熱心な環境家として著名な側面があります。
即位してからは、公用車のベントレーをバイオ燃料に対応させたり、ヘリコプターを持続可能な航空燃料(SAF)を50%使用するモデルに買い替えたり、王室の二酸化炭素排出量の削減に努めています。
現在のお召列車は、使用済みの植物油(廃食油)を原料としたバイオディーゼル燃料で走るディーゼル機関車が牽引(けんいん)しています。環境に配慮した機関車ですが、二酸化炭素を排出しないわけではありません。こうしたお召列車の廃止は、現君主の「環境配慮」という好みに合わせた新しい移動手段の時代が始まったことを物語っているのかもしれません。
奇しくも、欧州では環境意識の高まりから、鉄道、中でも寝台列車が見直されています。お召列車は廃止になりますが、今後も民間鉄道サービスは利用するとチャールズ国王は表明しています。「英王室が公務で移動する際に、どれだけの二酸化炭素を排出したのか」という統計が毎年公表されますが、今後、王室の二酸化炭素排出量がどれだけ減るのか、注目したいところです。
鉄道旅を牽引した英国王室の女性たち
英国王室と鉄道のつながりは、鉄道発祥の地であるだけあって19世紀に遡ります。
王族で初めて列車で旅をしたアデレード王妃の専用乗用車両。1842年。現存する最古の王室用乗用車両(Science Museum Group、(C) The Board of Trustees of the Science Museum)
イギリス国王ウィリアム4世(在位1830~1837年)の崩御後に未亡人となっていたアデレード王妃は、「速いスピードで走る列車に乗ると気が狂う」という当時の一般的な迷信をものともせず、1840年、王室で初めてノッティンガムからリーズまで列車で移動したのです。鉄路の旅がよほどお気に召したのか、同年には早速、自分専用の車両を造らせました(サイエンスミュージアムグループによる)。
その2年後の1842年、アデレード王妃の姪にあたるヴィクトリア女王(在位1837~1901年)が、英国君主として初めて、スラウからロンドンのパディントン駅まで列車で旅しています。
ヴィクトリア女王のための王室専用車両が造られたのは、それから27年後の1869年のこと。2両の内装は、金の純度が95.8%以上という23金と、青の絹を使った豪華絢爛なもので、すべて女王自らが選びました。完成当初は走行中に外気に触れずに車両間の移動ができませんでしたが、後に不便さを解消するため台車などに改造が加えられています。女王の鉄道旅を快適にすべく工夫が凝らされていて、今でもヨークにある鉄道博物館の目玉展示のひとつになっています。
エリザベス2世が愛した現在のお召列車も、2026年から英国の国内を周遊した後、2027年初頭に博物館に収蔵される予定です。
鉄道200周年にあたる2025年は、伝説の蒸気機関車が走る記念イベントなど、各地で企画が目白押しで鉄道の話題に事欠かない年になっています。明けて2026年は、英国各地を惜しまれつつ走るお召列車が話題をさらうことになりそうです。
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