なぜ人は怪談や伝承に心を引かれるのか? 墨田区「本所七不思議」を例に考える
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知的好奇心をくすぐる怪談
夏の風物詩のひとつと言えば怪談で、不思議なものや怖いものへの興味が増すシーズンとなってきました。
地域に残る古くからの伝承には、不思議で怖い話がたくさんあります。それらは今考えると実際に起こったことに起因していたり、超常現象だったり、科学的な根拠があったりして、知的好奇心がとても刺激されます。
例えば、江戸時代には「虚船(うつろぶね)」と言う伝承がありました。
虚船とはどんぶり型の謎の飛行物体のことで、江戸時代に目撃が多発。中には美女が乗っていたなどのうわさがありました。これは今で言うところの、未確認飛行物体(UFO)ではないかと言われています。
また、各地に見られる「殺生石(せっしょうせき)」は中国の妖狐(ようこ)が日本で正体がばれて石になり、近づくものを殺すと言われていますが、実際は石の近くに有毒ガスが出ていることが原因とされています。
どちらも不思議なもの、怖いものとして人から人にうわさ話が広がっていきました。
「不思議」の意味の語源はギリシャ語
江戸時代後期、南町奉行の旗本である根岸鎮衛(やすもり)はうわさ話や怪談を集め、全10巻の「耳嚢(みみぶくろ)」と呼ばれる本を編さんしています。近年、実話怪談の本として人気を呼んでいた「新耳袋」はこの本をもじったものです。

伝承を集めたものに「七不思議」があります。七不思議と言うとすぐに思い出すのは「学校の七不思議」でしょう。
どこの学校にも独自の七不思議があり、例えば校内に古い銅像があれば夜中に校舎を歩いていたとか、校庭を走っていたとか言ううわさ話がつきものです。学校の七不思議以外にも土地にちなんだものが多く、全国にさまざまな七不思議が存在しています。
伝承のひとつひとつの話の中にはたわいのないものもありますが、数が集まって七不思議と呼ばれることにより一定の存在感が生まれます。
日本における七不思議は、明治期に入ってきた「世界の七不思議」(ギザの大ピラミッド、バビロンの空中庭園など)という言葉が契機となって一般的に使用されるようになったと言われています。
「不思議」と訳された言葉の元々の語源は、ギリシャ語で「眺めるべきもの」と言う意味で、特に怪談や超常現象を表したものではありません。
元々、日本の地域に数多くあった怪談や奇妙な事象などの伝承が七不思議という言葉と結びついたと考えられます。
七不思議と言っても実際の数は多かったり少なかったりしており、七不思議と言う言葉の語呂が良く、キャッチーであったため、広がったのかもしれません。
墨田区の「本所七不思議」とは
伝統の根強く残る地方に多いと考えられがちですが、都市部には人の多い分、うわさ話も多く存在し、東京都内にもいくつか七不思議が存在します。
有名なところでは墨田区の「本所七不思議」があり、内容は次の通りです。
●置行堀(おいてけぼり。両国から錦糸町)
堀で釣りをすると帰りがけに釣った魚を置いてけと呼び掛けられ、気が付くと獲物がなくなっている
●足洗邸(あしあらいやしき。墨田区横網または亀沢)
武家屋敷の天井から血まみれの足が下がってきて足を洗えと言ってくる
●狸囃子(たぬきばやし。本所一帯)
本所一帯で夜中に祭りばやしが聞こえるが、探しても出どころが突き止められない
●片葉の葦(かたはのあし。両国橋)
美女に恋慕した男が美女の片手片足を切り落として殺して堀に投げ込んでから、そこで生える葦は葉が片側しか生えなくなった
●送り拍子木(おくりひょうしぎ。本所割下水)
火の用心の拍子木を打って歩くと後ろから同じように拍子木の音がついてくる
●送り提灯(おくりちょうちん。本所石原、竪川)
夜歩いている人を送るように提灯の灯りがついてくるが、照らしてくれる人の姿はわからない
●燈無蕎麦(あかりなしそば。本所の南割下水)
いつも無人の屋台で、店先の提灯にうかつに点火すると不幸が起こる
伝承によっては、七不思議と言っても七つ以上存在することもあります。
本所七不思議は三代歌川国輝の錦絵が「すみだ郷土文化資料館」(墨田区向島)に所蔵されており、現在は公開されておりませんが、企画展などの際には見ることができますので、興味がある方は機会があったらぜひご覧になってください。

そのほかにも都内には江東区の「深川七不思議」や港区の「麻布七不思議」などがあります。
不思議や伝承に心引かれる理由
人は、なぜ七不思議や伝承に心引かれるのでしょうか?
まず怖い話が多いのでひやっとしたり、ドキドキしたりするホラー特有の魅力があります。ただし、それだけではなく、その地域の風土や歴史、時代性が色濃く反映されているため、独自の世界や様式美に引かれる人も少なくありません。
七不思議は怪談だけではなく、滑稽な話や超常現象的な不思議な話が含まれ、話のバリエーションが豊富なことも魅力です。
さらに七不思議は探究する面白さがあることが特筆されます。
七不思議を追って実際にその地域を巡るのも面白いですし、背景にある事象や時代性に考えをめぐらして謎解きするのも知識欲を満たす面白さがあるのです。
コロナ前は関連ツアーも活況
近年、七不思議や土地の伝承を活用したガイドツアーが京都など各地で開催されており、改めて七不思議の人気がうかがわれます。
東京でも、2017年に国内旅行を手掛けるポケットカルチャー(中央区日本橋小網町)が「江戸時代から伝わる怪談名所を歩く「本所七不思議をめぐるてくてく散歩」」を開催。前述の本所七不思議に関連したエリアを巡り、七不思議以外の吉良邸跡(墨田区両国)やエリア内の日本料理店で昼食を取るツアーでした。
都内にはそのほかにも七不思議ツアーやはとバスの怪談ツアーがありますが、残念ながら現在は新型コロナウイルス感染拡大の影響で中止や延期になっています。
身近な七不思議を巡ってみよう
一方、近年は個人がホストとなり趣味の講座やガイドツアーなどを行える支援サイトがあり、ツアー・イベント会社でなくても小規模な怪談や七不思議の探訪ツアーも見られます。
ガイドツアーでなくても麻布七不思議を回るオリジナルコースを作成し、ウェブサイトで公開している個人サイトや浅草や北千住の伝承をまとめて紹介するサイトもありますので、チェックしてみてください。
七不思議のほかにも七福神めぐりなど、不思議なものやスピリチュアルなものを巡るツアーがあります。
今はコロナ禍の中、疫病退散の御利益があると言われている「アマビエ」を御朱印にしている寺社が多く出てきており、それらを巡るのも面白いかもしれません。
都内だと、東郷神社(渋谷区神宮前)や平河天満宮(千代田区平河町)、六本木天祖神社(港区六本木)などがあります。近年はアーバンツーリズム(都市観光)の活性化が叫ばれていますが、七不思議のように地域を深く探究するツアーにはさまざまな可能性があるのではないでしょうか。

まだコロナによって遠出がしにくい状況が続いていますが、身近な七不思議を巡ってみてはいかがでしょうか。
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