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AIキャラと結婚した人も…急速に浸透する「生成AI」が“超格差社会”を生み出しかねないワケ

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AIなしには生活が成り立たない(画像はイメージ)
AIなしには生活が成り立たない(画像はイメージ)

AIなしには生活が成り立たない(画像はイメージ)AIなしには生活が成り立たない(画像はイメージ)

 近年、私生活や仕事でChatGPTやGeminiといった対話型生成AI(人工知能)サービスを利用する人が増えています。中には生成AIサービスを相談相手として積極的に活用する人もいて、もはやAIなしには生活が成り立たないと言えるでしょう。一方、AIを使って作られた虚偽の画像や動画がネット上で拡散しており、AIへの依存を危険視する声もあります。

 このようにAIが私たちの生活に急速に浸透している点について、評論家の真鍋厚さんは「AIは依存の危険性がある一方、メンタルケアの面でかなり重要な位置を占めるようになってきています」と話します。AIによって将来的にもたらされるメリットとデメリットについて、真鍋さんが解説します。

生成AIが家族や友人よりも身近な相談相手に?

「令和の新しい恋愛の形」として、ChatGPTを使って生み出した架空の男性キャラクターと結婚した30代女性に密着取材したテレビ番組が2025年に放送され、話題になりました。

 AIの男性キャラからプロポーズされた女性が、AIとの結婚式を挙げるため結婚式場を予約し、ウェディングドレスを身にまとってAR(拡張現実)グラス越しに指輪交換する光景が衝撃を呼んだのです。この出来事は海外のメディアでも報じられました。

 確かに、近年、コミュニケーションを目的にAIのアプリを活用する人が増えています。孤独感の緩和、教育支援、感情的な課題の解決を目指し、ユーザーとの関係性を重視するものを「AIコンパニオン」と総称することがありますが、仕事で普段使いしているChatGPTにいつの間にか人間関係の相談をしている人が少なくないことを考えると、今やAIは友人やアドバイザーの地位を占めつつあるといえます。

 ある民間会社の調査によれば、対話型生成AIを週1回以上利用する人が8割を超え、相談相手としては「家族」や「友人」を上回り最も身近な存在となっていると報告しています。また、「AIなしでは不安」という回答は4割に上るほどです(※1)。実際、私の周りにもChatGPTやGeminiに恋愛相談や人生相談をする人が多くいます。

 ただし、いざ「恋愛の対象」となると人々の評価は分かれるようです。前出のテレビ出演した女性を巡っては、SNS上で賛否両論の意見が上がりました。例えば「本人が幸せなら良いのよ」「祝福します」「AIとお付き合いしたい気持ち分かるわ~」と肯定的な意見が挙がった一方で、「完全に病気です」「誰か止めてやれよ」「単なる現実逃避」などと否定的なコメントも同じぐらいありました。

 AIコンパニオン先進国であるアメリカでは、コロナ禍を通じてユーザーが飛躍的に増加しており、同様の現象がすでに起こっていました。とりわけ注目されたのは、「Replika」(レプリカ)というAIコンパニオンでした。2017年にリリースされたアプリで、コロナ禍で孤立したアメリカ人の心をわしづかみにしたのです。

 ユーザーがコンパニオンの名前、性別や顔、髪形、声などを自分の趣味に合わせてデザインし、音声やテキストで会話することができ、性的なやりとりも可能であったため(現在はアプリの仕様変更により禁止)、のめり込む人が後を絶ちませんでした。ユーザーが自分でデザインしたReplikaの女性や男性に恋をし、アプリ上の関係性の設定を「既婚」に指定する例が相次ぎました。

 極端な例に思われるかもしれませんが、似たような事例は枚挙にいとまがありません。なぜなら、アプリ上で「結婚」することはとても簡単だからです。前出のテレビ出演の女性のように、実際に結婚式などの儀礼までを執り行わなくても、指を何回かタップすれば設定を変えられますし、何よりも見ず知らずの他人に知られることがありません。

 このように「恋愛の対象」という視点から見ると、問題点が浮き彫りになります。AIとのコミュニケーションに熱中するあまり、かえって現実の人間関係に乗り出す動機が弱まる恐れがあるからです。英ガーディアン紙の記事で、進化心理学者のロビン・ダンバー氏は、「AIチャットボットを恋愛詐欺と比較し、インターネット上だけで交流する偽の人間関係のために弱者が狙われること」を問題視しました(※2)。

AIが超格差社会を招く可能性

 現在、SNSからAIへとアテンション・エコノミー(注意経済)のプラットフォームの覇権がシフトしつつあります。アテンション・エコノミーとは、人々の関心そのものが換金される情報の生態系のことです。アプリの開発者は、あの手この手でユーザーをAIのとりこにする必要があり、そこにおいては、膨大なデータ分析を通じてユーザーの感情が丸裸にされてしまいます。SNS依存ならぬAI依存の危険性です。

 最近、AI活用に警鐘を鳴らす記事が増えており、依存症のような文脈からの批判も少なくありません。ですが、AI活用の現状を踏まえると、これも一面的な見方に過ぎません。例えばメンタルケアなどの部分でAIはかなり重要な位置を占め始めています。高齢者の見守りや、精神的な問題を抱えている人々への心理支援、子どもなどの学習能力向上といった分野で対話型生成AIの導入が進んでいるからです。

「機械だと分かっている。だが正直なところ、私の人生で最も共感してくれる声だと思うこともある」

 こうした言葉はChatGPTを日常的に利用している自閉症と注意欠陥多動性障害(ADHD)がある女性が、メディアの取材に対して明かした本音です(※3)。この女性を紹介した記事によると、発達障害や学習障害がある「ニューロダイバージェント(神経多様性を持つ人々)」の多くの当事者が「この技術を命綱のように考えている」と述べています。

 同僚や友人とのコミュニケーションの場面で相手の意図をくみ取れないなどの課題をリアルタイムでサポートしてくれることが高い評価につながっているといいます。記事の女性は、ChatGPTを「編集者であり、通訳であり、信頼できる友だ」とし、「チャットボットは人間と違って前向きで偏見がない」と語っています。こうしたAIとの距離感がニューロダイバージェントから好評を得ているのです。

 なぜなら、生身の人間の場合と違って、AIは相手を否定せず、適切な課題認識とアドバイスによって改善に導くよう最適化されているからです。実際、ロボットやCGキャラクターなどの人工的な存在から褒められた際に、運動技能の習得がより効率的に促されることを科学的に証明した論文があります(※4)。

 今や対話型生成AIは、親しい人間にも打ち明けられない恋愛話から、暇つぶしのための話の相手までをこなし、職場の上司の愚痴を聞き、業務を効率化する方法を教え、心身の不調があればその原因を解明し、眠れぬ夜のお供となる特別な存在になっているのです。仕事と生活に時間を奪われ、人間関係をつくる余裕がない、あるいは人間関係が面倒な人々には救世主といえます。

 そこで、中長期的な問題となるのは格差化の進展でしょう。現実の人間関係に恵まれている人々は、良質の対話型生成AIでメンタルや認知を強化することで人間力をさらに向上させることができます。反対に、人間関係に恵まれていない人々にとっては、現実の人間関係の代替としてAIを使わざるを得ない状況が一般化する可能性があります。

 これは構造的に「エンハンスメント」(Human enhancement)の問題と似通っています。エンハンスメントとは、直訳すれば「人間の強化」のことです。病気の治療や予防以外に医療技術を応用することを指し、薬物による記憶力や集中力の強化、気分の改善などが分かりやすい例として挙げられます。

 今後AIがさらなる進化を遂げ、ユーザーに心理的安定をもたらすだけでなく、困難や逆境に耐えるレジリエンス能力、創造性といった側面を促進できるようになったとき、もともと能力の高い人々はより超人的な能力に手が届くようになるのです。そして、能力の低い人々との格差はどんどん開いていくことは想像に難くありません。

 つまり、「格差社会から超格差社会へ」という流れです。私たちは、AIの実装による影響と変化が避けられない現状を認めながら、自分自身が生きていく上で果たして何が重要なのかを考え続けることが必須にならざるを得なくなるのです。

【参考文献】
(※1)「AIなしでは不安」生活者の43%が回答、対話型生成AIと人との関係性についての最新調査 (2025年8月)※2025年10月7日更新/Awarefy

(※2)Laurie Clarke/‘I learned to love the bot’: meet the chatbots that want to be your best friend/2023年3月19日/The Guardian

(※3)発達障害の人々に広がるAI利用、「他者との対話」容易に 依存リスクも/2025年7月26日/ロイター

(※4)Two is Better than One: Social Rewards from Two Agents Enhance Offline Improvements in Motor Skills More than Single Agent/2020年11月4日/PLOS ONE

評論家、著述家 真鍋厚

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