幸運艦? いいえ“ホワイト職場”だったからです――不死身の駆逐艦「雪風」 偶然じゃない“筋の通った幸運”
- 乗りものニュース |

陽炎型駆逐艦19隻のうち、艦齢31年という長寿記録を残したのが8番艦「雪風」です。主な海戦に参加しながらも生還し「不死身」といわれましたが、そこには艦の幸運を支えた要素がありました。
戦後まで生き残った「幸運艦」
2年10か月――19隻建造された陽炎型駆逐艦の、就役から戦没までの平均艦齢です。この姉妹艦たちの中で艦齢31年という奇跡的な長寿記録を残したのが、陽炎型8番艦の「雪風」です。
1939(昭和14)年12月に撮影された雪風の進水後就役前の姿(パブリックドメイン)
陽炎型駆逐艦はそれまでの特型から朝潮型への流れを経て誕生。高い攻撃力と復元性能・船体強度にも配慮し、高速性と航続距離のバランスが良く、艦隊主力に同行できる艦隊型駆逐艦として計画されて、1939(昭和14)年11月に1番艦「陽炎」が登場しました。
戦艦同士の艦隊決戦では、不意急襲の水雷戦で敵戦艦に打撃を与える水上戦闘に特化した戦力として期待されていました。
しかし、太平洋戦争では戦前想定したような戦艦同士の艦隊決戦は起きず、駆逐艦は対水上、対空、対潜戦闘から護衛、偵察監視、果ては兵員や物資輸送任務など「艦隊の何でも屋」として酷使され、航空優勢の喪失、レーダーや対潜装備の遅れなど、悪化する戦局の中で次々に戦没していきました。
開戦直前の1939(昭和14)年から戦争中期1943(昭和18)年に就役した駆逐艦は艦齢1~3年というのがほとんどで、1年未満という艦も珍しくなく、まさに消耗品として扱われたのです。
雪風は1940(昭和15)年1月に就役、1941(昭和16)年12月11日にフィリピン中部のレガスピー攻略戦に参加したことを皮切りに、謎の多い空母「信濃」の護衛や、戦争末期1945(昭和20)年4月には戦艦「大和」の沖縄特攻である坊ノ岬海戦にも参加しています。主な海戦のほとんどに参加しながら、大きな損傷を受けることなく終戦まで生き残りました。
戦後は復員船として多くの日本人を帰国させ、その後賠償艦として中華民国に渡って中共軍とも交戦し、退役解体されたのは1971(昭和45)年12月31日とされます。
太平洋戦争中、雪風は「強運艦」とか「不死身の駆逐艦」などと噂されていました。しかし雪風だけ特別な改装がなされたり、特別な兵器や装置を持っていたりしたわけではありません。戦中は不安感から「運」や「ゲン担ぎ」が流行るものですが、強運や不死身は偶然だったのでしょうか。
「雪風」が生き延びた要素は「人」だった?
雪風はすぐに戦闘態勢に入る初動の早さから、「超機敏艦」ともいわれていました。1943(昭和18)年11月2日から3日にかけ、南太平洋の現パプアニューギニア島嶼(とうしょ)部にあったラバウル泊地が空襲を受けた際、在泊していた日本艦艇の中で一番早く機関を動かして湾外に脱出した駆逐艦「時雨」の乗組員は、空襲を予想して最初から湾外に停泊していた雪風を見て驚いたというエピソードが知られます。「戦場のカン」も冴えていたようです。
雪風と同じ第二水雷戦隊に所属していた駆逐艦「冬月」の乗組員は、砲術指導で「雪風」に赴いた際、艦内や部署が清潔であることに驚きます。今で言う「4S」(整理・整頓・清掃・清潔)が行き届き、空気感(職場風土)もはつらつとしたものだったという証言が多く残っています。今で言う「昭和のホワイト職場」だったのかもしれません。
その職場風土から訓練成績は良好で、「実戦でも不死身」などと高評価を得てさらに奮起し、「ポジティブ思考がさらに成果を上げる」という好循環で乗組員の練度が向上します。また、経験を検証し行動に活かせる「カンの良さ」が、結果として艦としてのパフォーマンスを向上させていったようです。
元海軍少尉で作家、評論家の阿川弘之は「歴代艦長の調査や取材を通じ、雪風は訓練がよく行き届いた艦であり、幸運艦と言ってもキューピットの気まぐれによるものというよりは、自ら助くるものを助くといった筋の通ったものの様だ」と「雪風」を評しました。
日本海軍駆逐艦技術の集大成であった陽炎型というハードウェアと、乗組員の技量というソフトウェアが、良好な職場風土で最高の形で融合したのが雪風の幸運という結果だったといわれます。つまり、雪風が生き延びたのはスペックを超えた「人の要素」に起因したということです。
他の陽炎型たちの犠牲があって、なぜ雪風だけが生き残ったのかを問う意味は際立ちます。本当に雪風だけが人の要素に恵まれたのか興味は尽きません。
「幸運艦」というのは、戦後になっていわれるようになったフレーズです。戦争渦中の当事者は、自艦が幸運か不運かなど知る由もありません。戦後になって他艦の運命を知って、初めて自分が幸運だったのだと分かるのです。
ちなみに陽炎型で雪風の次に長生きしたのは「磯風」の約4年4か月です。この艦も開戦時から生き延びた幸運艦といえますが、戦艦大和の沖縄水上特攻作戦に雪風などともに出撃し、坊ノ岬沖海戦で大和と運命を共にしました。米軍機の攻撃で大破航行不能となり、最後はまた生き残った雪風の砲撃によって処分されており、運命の残酷さを感じざるを得ません。
実は損している?
ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。
ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。
運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?
簡単無料登録はこちらYOUの気持ち聞かせてよ!
いいね | ![]() |
|
---|---|---|
ムカムカ | ![]() |
|
悲しい | ![]() |
|
ふ〜ん | ![]() |
