防御力ダメダメ戦車がまさかの無双! スグ使えることに特化した「コンパクト戦車」英国で生まれたワケ
- 乗りものニュース |

戦車ほど防御力も火力も強くないけれども、装甲車や歩兵にとっては厄介な存在なのが、軽戦車です。では軽戦車のメリットは何かというと即応性の高さです。それが最大限発揮されたのがフォークランド紛争でした。
強烈な“毒針”を持つ軽戦車
戦車と装甲車の中間を埋める装甲戦闘車両、それが軽戦車です。戦車ほど防御力や攻撃力はないけれど、小型軽量なので輸送機やヘリコプターなどで簡単に運ぶことができ、有事における即応性に優れます。また履帯(いわゆるキャタピラ)で走行するので、タイヤを履いた装輪装甲車より悪路走破性も高いのが特徴です。
イギリスで開発された「スコーピオン」軽戦車。アルミニウム装甲ボディで車体前面でも14.5mm機銃弾に耐えられる程度でしかなかった(柘植優介撮影)。
そんな軽戦車の一種として、1960年代末にイギリス陸軍が開発したのがFV101「スコーピオン」です。全長約5.3m、幅2.2mという寸法は、陸上自衛隊で多用されている82式指揮通信車よりひと回り小さいくらい。それでいて、重量は5t以上も軽い8tほどしかありません。
ゆえに当然、装甲は薄く、前面装甲こそやや頑丈ではあるものの、機銃弾や砲弾の破片に耐える程度です。自然界では比較的、重装甲なスコーピオン(サソリ)を愛称にしている割には物足りない印象です。
しかし砲塔には威力抜群の76mm砲と7.62mm機銃を搭載しています。たとえるなら、まさに強力な「毒針」。加えて強力なエンジンで80km/h以上の最高速度を発揮したことから、「世界最速の量産戦車」というギネス世界記録を保持しています。
極端すぎる長所と短所が同居している、かなりピーキーなAFV(装甲戦闘車両)といえるでしょう。
「スコーピオン」が開発された理由、それは戦車部隊を支援して偵察に従事し、場合によっては火力支援や対戦車戦闘もこなせるAFVが求められたからです。これは軽戦車としては常識的な要求でした。
45年前の離島奪還作戦で無双!
「スコーピオン」に期待された役割は、戦略的即応性でした。母国であるイギリスは、2度の世界大戦を経て多くの植民地を失いましたが、それでも世界各地に重要な権益や領土を維持していました。
「スコーピオン」軽戦車。乗員は操縦手、砲手、車長(兼装填手)の3名(柘植優介撮影)。
そうした海外領土で何かあった際に即応可能なAFVの役割を「スコーピオン」に期待したのです。そのため、最初からC-130輸送機などで空輸できるサイズと重量で設計されたのです。
この戦略的即応性が存分に発揮されたのが、1982年4月に勃発したフォークランド紛争でした。この戦争で注目を集めたのは、アルゼンチン空軍が使用してイギリス艦隊に大損害を与えた空対艦ミサイル「エグゾセ」や、イギリス軍が投入した垂直離着陸が可能な戦闘機「ハリヤー」などで、新兵器が活躍した海の空の戦いに目が行きがちです。しかし、紛争を決着させたのは地上戦でした。
5月中旬、イギリス軍は東フォークランド島のサン・カルロスに上陸を開始します。そして、この上陸部隊の一員として投入されたブルース・アンド・ロイヤルズ王立近衛騎兵連隊のB中隊が、「スコーピオン」軽戦車4両と、同じ車体ながら30mm機関砲を搭載した「シミター」偵察戦闘車の4両を装備していました。これら8両が、同紛争に投入された唯一のAFVとなりました。
さすがに敵軍が占領する孤島への空輸は不可能でしたが、貧弱な港湾施設でも揚陸できる「スコーピオン」は、海兵隊およびパラシュート連隊と行動を開始。5月28日からのグースグリーンの戦いでは、榴弾を使ってアルゼンチン軍陣地を制圧し、友軍歩兵の占領を支援しました。また6月11日からの山岳拠点攻撃では、「スコーピオン」が照明弾を撃ち上げてイギリス軍の夜襲を成功に導いています。
中小国にとって使い勝手の良い戦闘車両に
アルゼンチン軍も105mm戦車砲を搭載した30t級のTAM戦車や、フランス製のAMX-13軽戦車を保有していました。しかし輸送手段がなく、フォークランドには投入されていません。
「スコーピオン」軽戦車と同じ車体ながら、30mm機関砲塔を組み合わせている「シミター」偵察戦闘車。こちらは2025年現在もイギリス陸軍で現役である(柘植優介撮影)。
その結果、アルゼンチン軍が「スコーピオン」に対抗するためには、歩兵携行用の対戦車火器もしくは対戦車地雷を使うしかありませんでした。ところが「スコーピオン」は歩兵支援に徹したため、アルゼンチン兵は近づくことができず、「スコーピオン」と「シミター」は無双状態だったのです。
「スコーピオン」は紙のような装甲しかない軽戦車ですが、それはあくまで相対的な評価に過ぎません。敵に対抗できる兵器がなければ、いくら「紙装甲」であっても恐るべき火力プラットフォームになります。
実際、フォークランドで「スコーピオン」に対峙したアルゼンチン軍兵士は、「戦車」の出現にパニックを起こしています。これが、もしAMX-13軽戦車を持ち込んでいれば、イギリス軍はより慎重な作戦を強いられ、紛争が長期化していた可能性もあります。
このような戦車の有無が戦局を左右した実態を見て、アジア、アフリカの小国はこぞって「スコーピオン」を導入しました。開発メーカーのアルヴィス社は、突然の特需を前にして、搭載砲を90mm低圧砲に強化した「スコーピオン90」まで開発して、新たに顧客の掘り起こしを行っています。
結果として、「スコーピオン」系列の軽戦車は主力戦車を保有できない中小国の貴重な装甲戦力の座を勝ち取りました。そしてシリーズ全体で3000両を超えるベストセラーAFVとなり、誕生から60年近く経ったいまも10か国以上で運用され続けているのです。
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