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漫画きっかけに…「7月5日に日本で大災害」説が拡散 “単なるうわさ”と笑い飛ばしてはいけないワケ

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ネット上で「2025年7月5日に日本で大災害が起きる」という内容の情報が流れており、海外では日本への渡航を控える動きも(画像はイメージ)
ネット上で「2025年7月5日に日本で大災害が起きる」という内容の情報が流れており、海外では日本への渡航を控える動きも(画像はイメージ)

 ある漫画をきっかけにネット上で「2025年7月5日に日本で大災害が起きる」という内容の情報が流れており、海外では日本への旅行を控える動きが広がりつつあります。こうした事態を巡り、気象庁の野村竜一長官は6月13日、「現在の科学的知見では、日時と場所、大きさを特定して地震を予知することは不可能」「そのような予知の情報はデマと考えられるので心配する必要は一切ない」などと話し、日本での大災害に関する情報を否定しました。

 評論家の真鍋厚さんは、今回のように科学的根拠がない情報が注目される現象について、今後、思わぬ事態を引き起こす可能性があり、軽視してはいけないと指摘します。真鍋さんが、災害に関するうわさが注目される背景について、解説します。

「予言の自己成就」が起きる可能性

「今年の7月5日に日本で大災害が起こる」といううわさが日本国内だけでなく、アジア各国にも広がっています。

 地球に小惑星が衝突して壊滅的な被害が出る隕石説から、富士山の噴火によって首都圏が崩壊するという大噴火説に至るまで、実に多くの説が出回っていますが、うわさの出所は、「東日本大震災を予知した」として注目を集めた漫画作品だといわれています。

 その漫画作品とは、2021年に出版された『私が見た未来 完全版』(たつき諒 著、飛鳥新社)です。作品では「本当の大災難は2025年7月にやってくる」と断言されており、具体的には「日本とフィリピンの中間あたりの海底がボコンと破裂(噴火)」し、「南海トラフ地震の想定をはるかに超える壊滅的な大津波が日本の太平洋側を襲う」という予知夢が紹介されています。

 同作の国内での累計発行部数(電子版を含む)は100万部を超え、話題となっていますが、今回の災害のうわさを基にインフルエンサーがYouTubeなどで拡散していることから、「7月に何かヤバいことが起こるらしい」という情報だけが独り歩きをしています。

 また、この漫画の中国語版も発売され、香港や台湾でも大きな話題になっています。現地の風水師などが積極的に情報発信したため、SNSで急速に広がっており、旅行客にまで影響が出ているのです。

 たつきさんは、6月に発売された自伝などで「7月5日」に何か起こるわけではないという趣旨のコメントを出していますが、時すでに遅しといった感じで、うわさがうわさを呼ぶ状況は止まらなくなっています。

 一般的に見て、占いや予言は、単なるネタとして消費されることが多く、真剣に受け止められることはほとんどない印象があります。しかし、世の中が悪い状況にある場合は別です。人々の不安を一身に背負わされる形で、占いや予言がブームとして膨れ上がり、ともすると思わぬ事態を引き起こす可能性があります。

 そもそも、科学的な知見に基づき、近いうちに発生が警告されている自然災害は、当たり前ですが、予言がなくとも起こる可能性は高いといえます。

 明治時代に興った新宗教「大本」の教祖の一人である宗教家の出口王仁三郎は、大正時代に関東大震災を予言した逸話の持ち主とされていますが、明治末期に地震学者の今村明恒(あきつね)が関東地方での大地震発生を予測していました。当時は地震学の黎明期だったこともあり、今村は「ホラ吹き」と呼ばれましたが、のちに「地震の神様」と持ち上げられました。今振り返ればそれほど不思議な話ではありません。

 特定の占いや予言に注目が集まることを軽視したり、笑い飛ばしたりしてはいけない理由は、すでに新聞やテレビなどで報じられている通り、実際に悪影響が出ているからです。香港からの旅行客の予約減少を受けて、一部の航空会社が香港と仙台や徳島などを結ぶ航空便の減便を進めるなど、人々に対して、まるで本当に日本で大災害が起こるかのような行動を取らせているのです。

 このような現象を「予言の自己成就(自己成就的予言)」(Self-fulfilling prophecy)と言います。もともとは、米国の社会学者のロバート・K・マートンが提唱した概念で、1930年代に米国で起こった銀行倒産のうわさによる取り付け騒ぎとそれによる経営破綻などから着想を得ています。

 予言の自己成就は「ある出来事が起こるといううわさ」によって、「その出来事が起こる可能性が高まる」ことを指しています。ポイントは、まったく根拠がなくても「ある出来事が起こるといううわさ」だけで回避行動が生じてしまうメカニズムにあります。

 例えば、新型コロナウイルスが流行した時期は、非常事態宣言などで社会が混乱している状況下で、「トイレットペーパーがなくなる」というデマが一気に拡大しました。デマを信じていなくても、デマによる買い占めを恐れる人々がスーパーやドラッグストアなどに押し寄せ、通常であれば十分な在庫があるはずのトイレットペーパーが棚から消えたのです。

 また、2024年8月には、気象庁による「南海トラフ地震臨時情報」(巨大地震注意)の発表を受け、各地で買いだめが発生し、店からミネラルウオーターなどがなくなったことはまだ記憶に新しいところです。このような買い占めなどが7月に向けて増加する可能性があり得るでしょう。その中でも、とりわけ心配なことは、特定のグループや団体などがこの機会を利用して人々をそそのかす可能性です。

 社会学者の清水幾太郎は、『流言蜚語(りゅうげんひご)』(ちくま学芸文庫)で、社会が危機的な状況になり、秩序が混乱しているときが流言飛語(口づてに伝わる、根拠のない情報)の温床となると指摘しました。これは現在のような終わりが見えない物価高と増税という経済レベルの非常事態にも当てはまるかもしれません。清水は「うそを語る人間は無力であっても、このうそによって生み出された環境は断じて無力ではない」と意味深なことを述べています。

 先述の予言の自己成就は、まさに「うそによって生み出された環境」そのものだからです。しかも今回の予言には、リセット願望のようなものがうかがえます。これは災害史研究が専門の歴史学者である北原糸子が、江戸時代の庶民たちの大地震に対する捉え方について、「『災害という異常事態がもたらした非日常状態』を『日頃は願望の世界に属する一種の理想郷に近い』ものと認識していた」と分析していたことと深く関連しています(『安政大地震と民衆 地震の社会史』三一書房)。

 北原がこのように分析するのは、大地震後に幕府による救済活動や、町人や武家、寺院による施しなどが行われるのと並行して、被災によって富裕層が没落したり、職人のような技術者が潤ったりする逆転劇が演じられていたからだということです。大勢の人が死に、火災が町をのみ込む悲劇の面だけでなく、世の中のゆがみを正すような「世直し」の機能を見いだしていたのです。

 予言ブームの震源である、先述の『私が見た未来 完全版』でも同じ傾向が見られます。「大災難」の後に「ものすごく輝かしい未来」が約束されているとしているからです。「みんなが助け合い、協力し合って、あらゆる物事がプラスの方向に進んでいく世界」を確信していることは、これが「世直し」とセットになっていることを示しています。

 そこには、解放や高揚、融和的なコミュニケーションに満ちた世界が実現してほしいという強い願望があります。そのため、予言が外れた際の失望感は、過度な期待を抱いていた場合には、特に抑うつやストレスとして現れ、心身の不調につながるかもしれません。それは必然的に予言の修正、つまり予言の先延ばしや新たな予言を求めることにもなります。

 ここには、ある予言が世の中をかき回せばかき回すほど、その予言がもっともらしいもの、真実味があるものに変わるという「非現実の現実化」のマジックがあります。恐らく今の現実に不全感や無力感を覚えているからこそ、巨大な災害による「世直り」という物語を繰り返し意識することで、日常に非日常というアドレナリンを分泌しようとしているのではないでしょうか。

「予言の自己成就」という小さなスペクタクル(見世物)に向かいつつある、私たち自身の心の中を見つめてみる必要がありそうです。

評論家、著述家 真鍋厚

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