西日本の赤字ローカル線=「ほぼ同じ車両」なぜ? もう30年選手「キハ120」のスゴさを知っているか!?
- 乗りものニュース |

国鉄形からの世代交代
東は長野県、西は福岡県まで管轄するJR西日本には、深刻な赤字が叫ばれる非電化のローカル線が複数あります。そうした線区でよく見かける車両が、キハ120系気動車です。なぜこの形式は、同社のローカル線の“顔”ともいえる存在になったのでしょうか。
JR芸備線のキハ120形気動車(安藤昌季撮影)
1987(昭和62)年に発足したJR西日本は、国鉄時代に製造されたキハ20系やキハ35系、急行形気動車のキハ58系などで地方交通線の輸送を行っていました。
しかし、これらの形式はいずれも製造後20~30年を経過し、また、重い大型車体で、エンジンの燃費も悪いなど、収支の厳しい地方交通線向きではない性能でした。こうしたこともあり、1990年代には地方交通線向け標準型気動車が必要だと考えられました。
当時、新潟鐵工所(現・新潟トランシス)が地方鉄道向けに製造した標準型気動車「NDCシリーズ」の第一世代が、この要請に応えるものでした。
NDCシリーズは、それまでの同社の「LE-Car」シリーズの反省を踏まえたものです。コストダウンを重視しすぎて、車体の衝突安全性や耐久性が不足していたLE-Carの欠点を改良し、一部でバス用部品を使ってコストダウンを図りつつも、鉄道車両としての堅牢さを備えていました。
NDCシリーズのうち、キハ120形と同じ全長16.3mの車両は、1986(昭和61)年からJR北海道、三陸鉄道、会津鉄道、南阿蘇鉄道、錦川鉄道、松浦鉄道、くま川鉄道など、各地に導入されました。その最後として1992~1996(平成4~8)年に導入されたのが、キハ120形です。
軽くてハイパワーの実力派
国鉄形気動車は全長21.3mのものが多く、その分重量も重くなります。例えば、現在でも各地で活躍するキハ40形0番台は、全長21.3m、車体重量35.2t、220馬力。山岳線用のキハ52形100番台は、全長21.3m、車体重量36.6t、360馬力です。
これに対してキハ120形0番台は全長16.3m、車体重量27.7t、330馬力(250馬力という資料も)。それぞれの車両をパワーウェイトレシオで比べると、キハ40形が6.25馬力/t、キハ52形が約9.84馬力/t、キハ120形が約11.91馬力/t(250馬力なら9.03馬力/t)となります。キハ120形はキハ40形よりも実質的なパワーでかなり上回り、キハ52形と大差ありません。
車両の車軸にかかる重量である軸重は、キハ40形が8.8t、キハ52形が9.15t、キハ120形が6.925tなので、キハ120形はかなり軽く、線路にかかる負担も大幅に少ないわけです。
あっという間にローカル線の顔に!?
このように軽量高性能なキハ120形は、キハ52形を必要とするような勾配路線区にも投入可能となりました。1992(平成4)年に初登場したキハ120形は、車体が普通鋼製でセミクロスシート仕様の200番台。越美北線や木次線などに投入されました。0番台より200番台が最初に登場するのは珍しいことです。
翌1993(平成5)年からは、ロングシートでステンレス車体の0番台が登場し、側窓がユニットサッシから1枚ガラスとなって眺望性が向上しています。0番台は関西本線、木次線、美祢線などに投入されました。
最後に造られたのは1994(平成6)年から登場した300番台です。0番台と同じステンレス車体ながらも、セミクロスシートを採用しています。
300番台は関西本線、高山本線、大糸線、三江線、山陰本線、姫新線、津山線、因美線、芸備線、福塩線などに投入されました。
なお、キハ120形は「車体が短いのに冷房を搭載したため、トイレの設置スペースがない」という理由でトイレがなく、乗客には駅のトイレを使う案内を出し、車内には「トイレのある駅」が掲示されていました。しかし、駅間が長いことや行き違い待ちの駅は限られることもあって、車内トイレの非設置は問題となり、中国・山陰地方と越美北線用のキハ120形には追加工事でトイレが設置されています。
2017(平成29)年から、安全性と快適性の向上を目的としてリニューアル工事が全89両に行われています。これにより、座席の袖仕切り大型化、手すり・つり革の変更、前照灯・車内照明のLED化、車内照明の間接照明化、ドア開閉スイッチとドアチャイムの設置、フォグランプ追加などが行われました。また、一部車両は低公害型エンジンに換装されました。
さらに、関西本線、越美北線、木次線、芸備線では観光振興のためのラッピング塗装も行われています。現在も関西本線で「お茶の京都トレイン」、芸備線で「庄原さとやまトレイン」、木次線で4両が「次へつなごう、木次線。RAIL is BATON」として、沿線の歴史や沿線風景を描いたデザインが施されています。
かつて各地に導入された全長16.3mの「NDCシリーズ」の初期車両は、いずれも引退や廃車となっており、キハ120形は最後の生き残りでもあります。登場から30年以上一貫して地方交通線を支え続けたキハ120形は、末永く活躍してほしいものです。
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