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国内線はタダなのに!「国際線の機内Wi-Fiが数千円」するワケ あえて高くする“蛇口理論”とは

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国内線はタダなのに… 国際線Wi-Fiなぜ完全無料にならない?

 JALやANAなどでは、国内線で機内Wi-Fiを無料で利用できるようになりました。移動中もメールやSNS、Web閲覧がしやすくなっています。

Large figure1 gallery5アジアの航空会社として初めてスターリンクとの提携を発表したZIPAIR(画像:PIXTA)

 JALは2017年から、ANAも2018年から国内線の機内Wi-Fiを無料化しており、もはやインフラの一部といえるでしょう。

 ひとたび国際線に乗ると事情は一変します…といいたいところですが、実はJALやANAも2024年から国際線での無料化を大幅に拡大しています(座席クラス、接続時間、接続可能サービスなどの制限等諸条件あり)。

 ANAについては、「2025年夏以降、さらに全クラス無料・動画視聴可能へ順次拡大予定」と2025年6月にアナウンスしています。

 とはいえ、まだ多くの航空会社ではフルプランで20ドル前後(数千円)といった価格が表示され、驚いた経験がある人も多いのではないでしょうか。カフェのコーヒー代どころの話ではありません。なぜ、国内線と国際線でこれほど料金に差があるのでしょうか。

 最大の理由は「距離の壁」です。

 地上の基地局と通信する携帯電話とは異なり、洋上を飛ぶ国際線は、はるか宇宙にある人工衛星と通信しなければなりません。

 相手は、赤道上空3万6000km付近にいる静止衛星です。地球をほぼ1周するほどの途方もない距離とデータをやり取りしているのです。

 当然、衛星の打ち上げや維持には莫大な費用がかかります。衛星通信の利用料や機材搭載など、航空会社側の負担は小さくありません。国内線であればフライト時間が短いため、一人当たりのデータ通信量もたかが知れており、広告宣伝費の一部として処理することもできました。

 しかし、国際線はそうはいきません。10時間を超えるフライトで乗客全員が使い続けたら、データ量は膨大になり、桁違いのコストがかかってしまうからです。そのため、どうしても有料にせざるを得なかったのです。もっとも、高い理由はコストだけではありません。そこには、あえて高くしなければならない技術的な事情もありました。

あえて高くしている? 「水道の蛇口」でわかる意外な理由

 ここでイメージしてほしいのが「水道の蛇口」です。

Large figure2 gallery6スターリンクが機内Wi-Fiにイノベーションを起こす?(画像はイメージ:PIXTA)

 はるか彼方の静止衛星とつながる回線は、いわば非常に細い水道管のようなものです。一度に送れる水(データ)の量には限界があります。

 もし、これを全員に無料開放したらどうなるでしょうか。乗客みんなが一斉に動画を見始め、細い水道管はすぐに飽和してしまいます。

 結果、水圧(通信速度)が極端に下がり、仕事でメールを1通送りたい人ですら、つながらなくなってしまうでしょう。

 つまり、3000円という高額な料金設定は、コスト回収のためだけでなく、利用のハードルを上げて利用者を絞るための「蛇口」の役割を果たしていたのです。

 あえて使う人を減らすことで、必要な人に最低限の通信速度を確保していたといえます。

 しかし、そんな空の常識がいま、劇的に変わろうとしています。「スターリンク」が登場したからです。

 イーロン・マスク氏率いるスペースXが展開するこのサービスは、従来の常識を覆しました。使うのは高度約3万6000kmの静止衛星ではなく、わずか高度550kmを周回する低軌道衛星です。

 距離にして従来の約65分の1。圧倒的に近いため、衛星までの距離が近く、静止衛星方式に比べて遅延が小さいとされています。

 日本でも、JAL傘下のLCC(格安航空会社)であるZIPAIRが、既存の通信衛星を使いながらも機内インターネットを無料で提供しています。

 しかし、同社はアジアで初めてスターリンクとの提携を発表。一部報道では早ければ2026年春を目処にシステムを一新し、名実ともに「自宅のように使える無料Wi-Fi」の実現を目指しているとしています。

 もちろん、既存のアンテナの交換や契約の切り替えには時間がかかるため、すべての飛行機ですぐに実現するわけではありません。

 それでも、空の常識が変わり始めていることは確実でしょう。

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