核ミサイル原潜を“魔改造”!? 電撃作戦を密かに支えた米軍「最強兵器」の多才ぶり 日本はマネできるのか?
- 乗りものニュース |

麻薬密輸船取り締まりに空母打撃群を動員?
トランプ政権は2025年9月1日、ベネズエラに対し「サザンスピア作戦」を開始しました。麻薬密輸を取り締まるためとされましたが、小型の密輸船を追いかけるのにアメリカ軍は1個空母打撃群、原子力潜水艦、150機以上の航空機、陸海空海兵隊約1万5千人の兵力を動員したのです。反米的なベネズエラのマドゥロ大統領に対する圧力だとしても、「やりすぎ」に見えました。
オハイオ級SSGN「USSフロリダ」。甲板上の円筒形の物が特殊部隊を水中から出撃・帰還させるドライ・デッキ・シェルター(画像:アメリカ戦争省)
正月ボケも冷めやらぬ2026年1月2日、この作戦の真の目的が明らかになります。トランプ大統領がマドゥロ大統領拘束作戦「アブソリュート・リゾルブ」の決行を指示したのです。1月2日22時46分(アメリカ東部標準時)に作戦開始が下命され、3日2時29分には拘束されたマドゥロ大統領夫妻がカリブ海洋上に展開した強襲揚陸艦「イオー・ジマ」に収容されます。作戦発動から任務完了まで3時間43分という驚くべき手際の良さでしたが、サザンスピア作戦は「やり過ぎ」ではなく、アブソリュート・リゾルブ作戦の入念な事前準備だったのです。
直接実行したのは、ヘリコプターを使った特殊部隊「デルタフォース」でしたが、今回の視点は作戦支援に原子力潜水艦が参加していることです。何をしたか明らかにされませんが、潜水艦は「確実にそこにいた」のです。
アメリカ軍の軍事作戦といえば、表では空母艦載機による空爆や特殊部隊による急襲が報じられることが多いです。しかし、その裏側で密かに重要な役割を果たしているのが潜水艦です。特に近年、静かに評価を高めているのがオハイオ級戦略ミサイル原潜(SSBN)から改造された巡航ミサイル原潜(SSGN)です。そもそもSSBNは、なぜSSGNに姿を変えたのでしょうか。そして、その姿は日本にとって他人事なのでしょうか。
弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN)は核弾頭を搭載した弾道ミサイルを積み、長期間にわたり海中に潜み続けることで相手の攻撃を思いとどまらせる「核抑止力」となるのが任務です。「最強ではあるが、使われては困る」戦略兵器です。
2010年代の冷戦終結後、核軍縮を目的とした条約によって、アメリカは保有する核戦力の削減することになり、オハイオ級SSBN18隻のうち4隻が余剰となります。この「余った」世界最大級の潜水艦を別の役割に転用することにしたのです。核抑止力よりもいわゆる「ならず者国家」や対テロ戦争への対処という安全保障戦略の変更も影響しています。
日本の潜水艦は「SSGN化」する?
SSGNへの改装内容は大胆でした。SSBNの直径約2.2mの弾道ミサイル発射管24基のうち22基を、巡航ミサイル用の垂直発射装置に変更。1基あたり最大7発のトマホーク巡航ミサイルを格納でき、合計で最大154発という圧倒的な火力を持つに至りました。ミサイルは非核の通常弾頭です。残る2基は特殊部隊用のロックアウト・チャンバーに改装され、ドライ・デッキ・シェルターを搭載してネイビーシールズなどの特殊部隊を秘密裏に出撃・帰還する能力を備えました。
その結果、オハイオ級SSGNは一隻で水上戦闘群に匹敵する巡航ミサイル打撃力、原子力潜水艦ならではの秘匿性と航続力、特殊作戦の母艦としての機能を併せ持つ存在となりました。これは、どの水上艦や航空機にも代替できない多才な能力です。水中排水量1万8000tにもなる巨大原潜を「対テロ戦争」に使おうとは、条約対応の「苦し紛れ」の改造に見えましたが、結果的に唯一無二の「汎用兵器」になったわけです。
SSGNが初めて本格的に実戦投入されたのは、2011年のリビア空爆「オデッセイ・ドーン作戦」でした。作戦最初の段階でアメリカとイギリス艦艇から112発のトマホークが発射され、防空網や重要拠点を一気に無力化しています。その中にオハイオ級SSGN「USSフロリダ」も含まれていました。
その後もSSGNは、中東を中心に繰り返し展開されてきました。近年では、2025年6月に実施されたイラン核施設への大規模攻撃で、SSGNが攻撃を実施したことをアメリカ戦争省が公式に認めています。
ここで重要なのは、SSGNが「いつ、どこから撃ったのか」がほとんど語られない点です。前触れもなく防空圏外から大量の精密打撃を行い、作戦終了後は再び海中に消える。「使えない戦略兵器」SSBNから「使える汎用兵器」SSGNになったことが最大の価値といえるでしょう。
では、日本はどうでしょうか。「スタンド・オフ防衛能力」の強化を掲げ、潜水艦から発射可能な国産誘導弾の開発と量産を進めています。現時点では、既存の潜水艦の魚雷発射管から発射する方式が採用されています。
この方式は比較的すぐに戦力化できますが、ミサイルの直径は魚雷と同じ533mm以下という制約があり、搭載できるミサイルの大きさや種類が限られます。また、魚雷運用も制限されます。垂直ミサイル発射システム(VLS)を導入すれば、搭載弾種の自由度や運用の柔軟性は大きく向上します。
海洋国家である日本にとって、潜水艦は抑止力となる「戦略的アセット」です。秘匿性の高い潜水艦から状況に応じて地上にも強力な打撃を与える。声高に誇示する兵器ではなく、静かに存在感を発揮するSSGN的発想も専守防衛の日本に必要です。
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