ホリエモン航空業界参入で「“小型機界の革命児”日本で作るぞ」実現なるか? 最大のカベは“製造”ではない
- 乗りものニュース |

地域航空会社「トキエア」が取締役に堀江貴文氏を迎え「軽量スポーツ航空機」の新事業を開始予定です。一体どのようなもので、事業成功にあたっては、法制度上にどんな課題があるのでしょうか。
国際的には「小型機界の革命児」に
新潟空港を拠点とする地域航空会社「トキエア」が取締役に実業家の堀江貴文氏を迎え、新規事業として小型航空機の製造に参入するプランを発表しました。今回、トキエアが参入を目指すと発表した航空機は「軽量スポーツ航空機 (以下LSA)」と呼ばれる新しい法制度に基づいた航空機です。それは一体どのようなもので、そして製造事業の成功にあたっては、法制度上にどんな課題があるのでしょうか。
「トキエア」事業戦略発表会に登壇する堀江貴文氏(乗りものニュース編集部撮影)。
新たな航空機を開発して製造・実用化するには、型式証明と生産証明という二つの証明を取得する必要がありますが、この2点を取得する作業はメーカーにとって大変な負担になっています。経験豊富なボーイングでさえも、証明取得に難航した結果、新型機の就航遅延を発表しているほどです。また、三菱航空機の旅客機「MSJ(三菱スペースジェット。旧称MRJ)」が開発中止になったのは証明取得の目途がつかなかったというのが大きな要因です。
もちろん、小型航空機であっても型式証明を取得することは容易ではありません。そのため、新型機の価格が高騰してしまう問題に加え、セスナ機に代表される既存の小型機においては、半世紀以上も前に設計された古い機種が今でも生産され続けるという状況が生まれています。
この制度は航空機の価格高騰の原因であると同時に新しい技術の恩恵が航空機に反映されることを阻害しているとみなされるようになりました。こうした事情を背景に導入されたのがLSAです。
LSAは機体を小型軽量に限定することを条件に型式証明と生産証明の代わりに「ASTM」と呼ばれる工業規格の厳格な適合が義務付けられています。各国ではLSAの制度化と並行して、LSAの飛行に限定することで自家用操縦士免許よりも短い訓練で資格取得を可能とした「スポーツパイロット」という免許が制度化されています。
残念ながら日本ではLSAもスポーツパイロット免許も制度化されていませんが、制度化を果たした各国では、新制度の恩恵を受けてパイロット人口の減少に歯止めがかかり、航空機の登録機数も増加に転じるなどの実績を上げています。それに加えて、新技術をふんだんに投入して開発されたLSAは旧式の小型機に比べ経済性と安全性の両面で優れていることが証明されてきました。こうした実績が評価され、LSAの適用範囲を広げようという機運が生まれ、数年前から各国で議論が進められています。
「日本でLSA事業」最大の壁は作ることではない
このようななか、2025年7月にアメリカ運輸長官が正式発表したのが、「MOSAIC」と呼ばれる航空法の大規模改訂でした。その中身はLSAの大幅な拡大です。結果として4人乗りまでの小型機のほぼ全機種がLSAとして生産することが可能になった画期的な改訂でした。この改定はアメリカで10月22日から施行されますが、多くの国が追従する見込みです。
トキエア機(乗りものニュース編集部撮影)。
今回、トキエアが参入を表明した小型機もLSAを指していますが、日本で開発してアメリカに輸出するには、最初に日本でASTM規格適合宣言までの開発作業を行う必要があります。ここでネックとなる可能性があるのが、日本の航空法が諸外国に比べて遅れていることです。
日本ではLSAが実験機の一種であり実用機として制度化されていません。日米間には機体の認証やパイロットの資格を相互に認め合う「BASA」とよばれる二国間合意がありますが、その基本ルールは製造国が認めた機体に関しては相手国も追認する形式をとっているため、日本がLSAとして認めない航空機をアメリカがLSAとして認めることはかなり難しいといえます。
その理由は、BASAを適用するには日米間の航空法、安全基準や従事者資格などの細部にわたる共通化を前提としているからです。日米間のBASAは10年以上も前に締結されていますが、それを実行するための日米間の綿密な擦り合わせは進んでいるとは言い難く、これもMSJ失敗の要因ともいわれています。
日本の航空法が急速に進化してLSAが諸外国と同じ内容で法制化したと仮定すると、日本で開発された小型機がLSAとして認定されることは夢ではなくなります。ただし、それを海外に輸出するとなると、もう一つのハードルが存在します。日本人が乗らない新型機を海外のパイロットが乗りたいと思うでしょうか?
価格と性能面で圧倒的に優れている機体として完成すれば話は別ですが、日本で作られたLSAはまず日本国内で売れることが重要です。そのためには、現在日本の航空法では存在しないスポーツパイロットという新たな免許制度を日本においても導入することが望ましいと考えます。
日本で自家用操縦士が増えない理由は、免許資格にあたる時間と費用があまりにかかりすぎるためです。つまり飛べる資格を持つハードルが高いと、製造した機体が優れていても、その性能を国内ユーザーが「使って体感」し、海外にアピールするチャンスを逸していることになります。
LSA制度と同様で、主要国の中でスポーツパイロットが制度化されていないのは日本だけです。筆者はこれが、日本の国際競争力が下がり続けている理由の一つであるとも考えています。
トキエアの新規事業、小型機事業への参入は堀江氏が報道発表の場で仰っていたとおり「夢のある事業」です。筆者も日本人の一人としてこの事業の成功を切に願っています。ただ、そのために何よりも必要なのは日本の航空法そして航空行政の近代化だと考えます。
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