どうせ読むならポイント貯めない?

「夜行列車はオワコン、全廃だ」→「わが国が引き継ぐ!」 10年で見事“復権”させた立役者に聞く“イマっぽい”成功の秘訣

4,805 YOU
  • 乗りものニュース
  • |

賭けだった国際・高速寝台列車「Nightjet」

「夜行列車の最新車両に5億ユーロ(約920億円)以上の予算を使った」――こう話すのは、欧州の夜行列車の運行で最大手と目されているオーストリア連邦鉄道(オーストリア国鉄)の広報担当者、ベルンハルト・リーダー氏です。筆者(赤川薫:英国在住アーティスト・鉄道ジャーナリスト)の取材に明かしました。

Large figure1 gallery2オーストリア国鉄の寝台列車「Nightjet」(画像:オーストリア国鉄)

「夜行列車」といえば、2016~2017年頃にはその終焉(しゅうえん)が世界的に議論されるほど衰退の一途をたどっていました。それから10年、新型車両に1千億円近い巨額予算を投じても勝算があるほど乗客をつかんでいるのです。成功の秘訣は何だったのでしょうか。

 かつては日本全国を走っていた夜行列車ですが、空路の台頭で利用者が激減し、今、定期運行をしているのは東京と高松・出雲市を結ぶ寝台特急「サンライズ瀬戸・出雲」のみになりました。

 欧州でも同様、フランスと東欧を結んだシンプロン急行や北急行といった超有名な夜行列車が次々と廃止に追い込まれ、2016年にはドイツ鉄道(DB)が夜行列車事業から完全撤退するという衝撃的なニュースが走りました。

 そのドイツ鉄道から夜行列車事業の約半分を4000万ユーロ(当時の相場で約50億円)で買い取り、2016年末に運行を始めたのが、現在ではヨーロッパ夜行列車の象徴的存在となっているオーストリア国鉄の「Nightjet(ナイトジェット)」です。

「ドイツ鉄道が撤退を決めた事業を買い取り、Nightjetのような新しいブランドを立ち上げることは、我々にとって非常に大きな挑戦でした」。リーダー氏は、当時の社内の緊張を明かします。無理もないことかもしれません。

 オーストリアといえば、ハプスブルク家の華やかさが今も残る首都ウィーンや世界最大級のザルツブルク音楽祭などで知られていますが、面積は北海道と変わらず、人口は神奈川県より少ない約919万人と、意外にも実態はかなり「小国」なのです。

 比べてオーストリアの隣国ドイツは、面積が日本とほぼ同水準で、人口もオーストリアの10倍近くあります(外務省サイトより)。ドイツ鉄道とオーストリア国鉄の売上も約10倍の差があり(両社の2019年の報告書より)、両社の運行規模・路線網の広さなどの差も考えると、ドイツ鉄道が「衰退一路」と切り捨てた事業を買い取ることは、オーストリア国鉄にとっていかに大きな決断だったかが分かります。

成功のカギは環境意識とブランド戦略

 無謀とも思えた挑戦を後押ししてくれたのが、環境意識の高まりです。2017年頃からスウェーデンで使われ始めた、飛行機利用者を非難する「飛び恥(Flight Shame)」という言葉が、環境活動家、グレタ・トゥーンベリ氏の活動とともに世界へと普及しました。これにより、飛行機で飛び回る人への風当たりが強くなったのです。

 特に、1990年代半ばから2010年代序盤に生まれた「Z世代」の社会人の間では60%が飛行機よりも鉄路などの環境に優しい移動手段での出張を望むという統計もあり(Trainline Partner Solutions 2025年3月発表)、欧州の若者の間では一過性の流行ではなく定着したライフスタイルとなったようです。

 清水の舞台から飛び降りる気持ちで夜行列車を買い取ったと思われるオーストリア国鉄ですが、こうした傾向を反映して、早くも2017年にNightjetの利用者増を報告しています。実際、「条件によっては、鉄道による移動は航空機に比べて最大20倍も環境負荷が低い」と、リーダー氏は指摘します。

 夜行列車から完全撤退したドイツ鉄道は、代わりに高速鉄道ICEの増便・延伸を行いました。そうした高速鉄道と夜行列車の関係についても、同氏は「競合ではなく補完的な存在」と捉えています。「高速鉄道は確かに長距離移動に有効ですが、高速路線が未整備の区間はまだ多く、そうした区間では夜行列車が大きな役割を果たす」とのことです。

 ブランド戦略に長けていたことも見逃せません。2008年から運行が開始し、人気を得ていたオーストリア国鉄の高速列車「Railjet(レイルジェット)」のイメージを踏襲し、ブランド名の末尾に鉄道のライバルであるジェット機を連想させる「jet」を付けたのです。RailjetにもNightjetにも共通で使われている特徴的な白抜きの書体で、車体の側面に大きく書かれた「○○jet」の文字を見れば、「オーストリア国鉄の列車だ」と一目瞭然です。

 分かりやすいブランド認識を利用者に持ってもらう大切さを同氏は語ります。これにより、Railjetにすでに親しんでいる顧客に、「Nightjetを予約すれば、どの路線でも(Railjetに通じる)一定水準のサービスが保証されている」という、明確で統一されたプロダクトコンセプトが打ち出せたそうです。

 共通のロゴをまといながら、高級感がある艶やかな赤い車体のRailjetに対して、Nightjetは控えめな紺の車体にしたのも戦略勝ちではないかと個人的に感じます。

予約が取れないカプセル型寝台

 欧州で列車の写真を撮っていると、真っ赤なRailjetの車両がまさしくジェット機のように勢いよくビュンッと通過して行きます。その派手な車体に目を引かれていると、いつの間にか紺色のNightjetが死角から走って来ていて、慌ててシャッターを切ったことが何度かありました。

Large figure2 gallery3オーストリア国鉄の高速列車「Railjet」(赤川薫撮影)

 実際には最高230km/hと、「サンライズ瀬戸・出雲」の最高130km/hに比べてかなり高速で走るNightjetですが、対照的な車体色にしたことで、Railjetが「動」、Nightjetが「静」のイメージが打ち出され、静かな走りで安眠を守ってくれそうな印象を受けます。

 実際、同氏は、「夜行列車の揺れや騒音を完全になくすのは不可能」と前置きしつつ、巨額を投じた新型夜行列車では「振動を大幅に低減する最先端の台車が装備されていて、騒音対策にも努めている」と、乗客の乗り心地を追求している姿勢を示しました。

 また、成功の大きな要因として挙げられるのが、カプセル型の一人用簡易寝台です。従来の車両は、座ったまま夜を明かす座席車と、4~6人用の簡易寝台の2階級構成でしたが、「夜行列車で最も求められるのはプライバシーである」という考えから新型車両に追加されました。

「夜行バスで旅する客層をターゲットにしている」という座席車はもちろん、簡易寝台も多くは相部屋で男女同室になることもあり、プライバシーへの配慮はありません。貸し切りにできるコンパートメント(個室)も一部ありますが、値段が張るため、頭数で割れば採算が取れる家族や、予算を気にしないビジネス客などが主な利用者です。

 また、「女性だけで貸し切りにできるコンパートメントもある」とNightjetの公式サイトには明記されているものの、多様性の時代で「男女」というだけの区分も難しくなってきています。

 そのような現代のニーズに合わせ、「個人空間を確保しながらリーズナブルに旅できる新しい車両」を構築したのです。日本のカプセルホテルを想起させるミニキャビンですが、ネットでは「なかなか予約が取れない」というレビューが散見されるほど人気です。

国際列車ならではの苦労も乗り越えて

 取材を通じて首尾一貫して感じられたのは、Nightjetが夜行列車でありながら、同時に「国際列車」でもあることを、オーストリア国鉄が非常に誇りに思っているということです。

 オーストリアを起点に西欧・中欧・南欧へと国境をまたぐ18の運転系統を持つNightjetは、「オーストリア国鉄全体の輸送サービスの中では決して大きな割合を占める列車ではありません。しかし、その運行はヨーロッパ各国へ広がっており、オーストリア国鉄にとって不可欠な存在と位置付けられています」とリーダー氏は説明します。

 巨額の予算で欧州連合(EU)の鉄道業界を牽引(けんいん)し、EUの鉄道網のハブとして心臓のような存在であるドイツ鉄道が捨てた夜行列車。それを引き継いだオーストリア国鉄がNightjetを夜の旅客鉄道網の心臓へと昇華させたのですから、その誇りと自信がみなぎっています。

 とは言え、運行面での苦労はあるようです。Nightjetの多くは1000kmを超える長距離を走行し、複数の国を通過します。「EU内でも未だに各国で異なる電源方式、保安装置や安全基準、インフラ規格があり、国際列車特有の課題が存在します。規格の差に対応して一気通貫で走れる設計にする必要があり、新型車両のコスト増加要因ともなっています」とリーダー氏は吐露します。

 また、オーストリア国鉄が誇る昼行列車の高い定時運行率(94%)と比べると、Nightjetの定時性が劣るという点もあります。これは、「超長距離運行や多国間運行による構造的な要因が大きい」そうです。

 こうした課題はあるものの、「オワコン」として捨てられたところから華やかに復活したNightjetは、環境性能、快適性、多様性を重んじたプライバシー、国境を越えたグローバル化という4つの現代的な要請に応えるために生まれた21世紀型の夜行列車です。日本では夜行列車がほとんど姿を消した今だからこそ、ヨーロッパで進化を続けるNightjetの取り組みは、多くの鉄道ファンにとって旅自体に多様性をもたらしてくれる存在になりそうです。

 取材の最後に、広報のリーダー氏から日本の読者に向けて、「ヨーロッパを訪れる機会があれば、ぜひNightjetに乗車してください。ローマやヴェネツィアからウィーン、ミュンヘンへの路線がおすすめです。可能であれば寝台車を予約し、夜行列車ならではの快適さを体験してほしいです。そして何より重要なのは、早めに予約することです」とのメッセージが寄せられました。

 歴史的な円安に悩む日本旅行客にとって、ホテル代を節約するためにも、国際・高速寝台列車Nightjetは注目したい存在です。

実は損している?

ニュースを読んでポイントが貯まるサービスがあるのを知っていますか?ポイントサイトのECナビでは好きなニュースを読んでポイントを貯めることができるのです。(※ECナビはPeXの姉妹サイトです。)今日読んだニュースが実はお小遣いになるとしたら、ちょっと嬉しいですよね。

ポイントの貯め方はニュースを読む以外にも、アンケート回答や日々のネットショッピングなど多数あるので、好きな貯め方でOK!無料で登録できてすぐに利用できます。貯まったポイントはPeXを通じて現金やAmazonギフトカードなどに交換できます。

運営実績も15年以上!700万人以上の方がポイントを貯めています。毎日好きなニュースを読んでお小遣いを貯めてみませんか?

YOUの気持ち聞かせてよ!

いいね いいね
ムカムカ ムカムカ
悲しい 悲しい
ふ〜ん ふ〜ん
NEWS一覧へ

ポイント ポイント獲得の流れ

ポイント獲得の流れ

ポイント ルール・注意事項

ポイント獲得!!