「1人いれば100人分」日本軍の南方戦線で“驚異的な活躍”を見せた人々をご存じか? 靖国から“戻してあげたい”現地の思い
- 乗りものニュース |

日本兵の多くが「神兵」と慕った「高砂義勇兵」
太平洋戦争の南方戦線において、日本軍は東南アジア諸国でのジャングル戦で苦戦しました。他方、この時期に台湾を統治していた日本は、山岳部の台湾原住民族による抗日運動で苦戦した経験などから、同時に彼らの優れた身体能力や攻撃能力も理解していました。
太平洋戦争中盤より、「日本兵」として編成された台湾原住民による「高砂義勇兵」の像(2019年、松田義人撮影)
そこで日本軍は台湾原住民族(主にタイヤル族、パイワン族、ブヌン族、アミ族など)を「志願」させる形で日本兵として採用しました。1942年より、彼らは「高砂義勇兵」としてニューギニア、フィリピン、ソロモン諸島などの南洋諸島の激戦地で活躍しました。
「高砂義勇兵」の高い能力と忠誠心を物語る伝説
「高砂義勇兵」のジャングルでの活躍ぶりは、日本兵の多くが「神兵」「高砂の神様」と深く慕い畏敬の念を抱いたと言われていますが、その理由は大きく3つあったとされています。
一つ目は「戦闘・身体能力の高さ」です。台湾の山岳地帯で培われた自然への深い理解・狩猟技術と合わせて、ジャングルにおいても音を立てずに敵に忍び寄ることができ、夜間も鳥目にならずに敵の動きを察知できました。結果的に、ゲリラ戦で米兵へ斬り込む活躍などを見せ、米軍を震撼させました。
二つ目は「食用植物の識別・狩猟に長けていた」ことです。これも自然への深い理解と経験から「どの食物を食べることができ、どれが有毒なのか」を瞬時に見極めることができました。日本軍の食糧補給ラインが途絶した際には、高砂義勇兵が蛇を捕まえ飯盒で煮込み、多くの日本兵に与え命を救ったといいます。
三つ目は「極限状態でも揺るぐことのない実直な民族性と行動」です。自ら志願し「高砂義勇兵」となった以上、国(日本)のために戦うことは、部族や自分自身にとっての最大の名誉であり、それが高い忠誠心へと繋がりました。
その思いは「日本の敗戦」を知らされた後もしばらく変わることはなく、戦地のジャングルに潜伏し続け戦い続けようとした「高砂義勇兵」が多数いたほどです。戦時中から約31年(1974年まで)、「日本軍の司令を守る」とし、単独でジャングルに潜伏し続けた中村輝夫(現地名:スニオン/アミ族出身)という伝説の「高砂義勇兵」も存在しました。
これら3つの理由から戦時中、日本兵の間では「『高砂義勇兵』が1人いれば、日本兵が100人助かる」とまで賞賛されたそうですが、その忠誠心を物語る、特に有名なエピソードがあります。
ジャングルで日本兵のために食糧を運搬していた「高砂義勇兵」が、背中に背負った食糧にいっさい手をつけぬまま運搬途中で餓死したというものです。自分がどれだけ飢えたとしても「食糧を届ける」という約束を、最期まで貫いたということです。この現場を見た韓国籍の兵士は、「高砂義勇兵」の高い忠誠心を前に「もし同じ立場だったら、まず自分の死活問題を優先していただろう」と、こうべを垂れたとも言われています。
日本政府は「高砂義勇兵」に満足な救済をしていない
これだけ戦前の「日本」に貢献し、日本兵からも深い畏敬の念を抱かれていた「高砂義勇兵」ですが、戦後、日本が台湾の統治を放棄すると、同時に日本国籍を失ったことで給与の未払いなどが多く発生し、恩給法などによる補償対象に当たらないとされ、満足な救済がなされない状態となりました。これには明確な補償がされないまま、今日に至っています。
また、戦死した「高砂義勇兵」の多くは、同じく戦死した日本兵と共に、靖国神社で「英霊」として合祀されています。もともと「自宅で先祖を祀る」文化がある台湾原住民の遺族の中には強く反発する声も聞かれ、今日もなお戦後の日本および靖国神社の対応を批判的に捉える人も少なくないようです。
訪れたい2つのスポット
戦死した「高砂義勇隊」の慰霊のために訪れたい場所が2つあります。
台湾・烏来にある「烏来高砂義勇隊主題紀念園区」。2026年3月に再訪した際は、改装工事中(2026年、松田義人撮影)。
1つは台北からクルマで1時間ほど、公共交通機関を乗り継いだ場合は2時間半ほどの新北・烏来エリアにある「烏来高砂義勇隊主題紀念園区」です。有志や遺族によって建立された慰霊施設で、そこには李登輝元台湾総統が揮毫(きごう)した「霊安故郷」の文字があります。
直訳すれば「魂よ、故郷に安らかに眠れ」という意味であり、靖国神社での合祀で故郷・台湾に帰れぬままの英霊を「いつかこの地に戻してあげたい」という思いが込められているとされています。
もう1つの「高砂義勇隊」に関連する場所が、台湾南部・屏東県の小高い山の中にある「高士神社」です。日本統治時代に創建された「高士祠」という日本人・地元のパイワン族双方から信仰された神社がルーツです。戦時中この地で共に過ごしていたパイワン族の「高砂義勇兵」と日本兵は、「生きて帰って来られなかったら、この神社で会おう」と約束されることがあったと言われています。
しかし、戦後に廃社となり、台風被害などによって社殿自体も無くなっていたところ、地元の有志たちが立ち上がり日本の神職に「神社の再興」を依頼。2015年に改めて「高士神社」として創建されました。
屏東県の山々を望む真っ白の鳥居へ続く階段にはパイワン族の伝統紋様が彩られており、戦時中の「高砂義勇隊」が高い忠誠心を胸に、日本のために命をかけて戦った思いが表現されているかのようです。
「高砂義勇隊主題紀念園区」と「高士神社」は、台湾を訪れた際に立ち寄りたい大切な場所です。来訪の際は慰霊の祈りと合わせて「英霊の故郷への想い」に心を寄せることが望まれます。
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