「これはいい車両だ」登場41年の“料金不要”電車も残りわずか 夜行まで想定した乗り得車両の今
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日光快速の新時代を切り開いた6000系
東武鉄道で浅草から東武日光・鬼怒川温泉方面に向かう長距離列車は、長らく有料の特急(急行)と、料金不要の快速に分かれていました。
野岩鉄道6050系電車(安藤昌季撮影)
この快速用車両として初めて登場したのが、6000系電車です。それまで快速には戦前の旧型車両も使われていましたが、それらを置き換えるため1964(昭和39)年に投入されました。1960年代の東武は日光方面への旅客輸送で国鉄日光線と競合しており、特急には1720系「デラックスロマンスカー」のような豪華車両を投入していました。
これに対し、国鉄も153系などを使った列車を整備し、対抗を強めていました。東武は料金不要の快速列車の底上げをするために、6000系を投入したのです。
快速用とはいえ、そうした経緯で製造されたため、6000系は車端部にロングシートがある以外はボックスシートでした。座席間隔1480mmは国鉄急行形の153系より20mm広く、窓側に肘掛けとテーブルが備わるのも、国鉄急行形と同等でした。ただ、背もたれの上半分にモケットがないのは6000系ならではの特徴でした。
1985(昭和60)年、野岩鉄道会津鬼怒川線の開業を翌年に控えて、6000系を新型車両に置き換える話が持ち上がります。当初は6000系を改造して継続使用することも考えられましたが、新線開業に合わせたイメージアップと冷房化を達成するため、新型車両の投入が望ましいと考えられたのです。なお、全66両のうち、完全新造されたのは14両のみで、残りは6000系からの機器流用車両でした。
2扉セミクロスシートで、扉間はボックスシートとする構成は6000系と変わりませんが、座席間隔は1525mmに拡大。窓下のテーブルも、折りたたみ式を引き出して展開する形として、面積を大幅に広げました。また、和式トイレや、分割・併合運転時の誤乗防止に配慮して、客室内に行先表示器が設けられました。
蛍光灯にカバーが取り付けられたのも料金不要車両としては画期的でしたが、これはスキー客を想定して、蛍光灯の破損防止という観点もあってのことでした。中づり広告は観光利用に配慮して設けていないため、落ち着いた車内空間が実現していました。また、夜行列車への使用も想定して、車内照明の減光機能と常夜灯の設置も行われました。
有料快速や夜行にも使用
側窓は一段下降窓となり、6000系よりも眺望性が向上しています。
前述の6000系からの更新車の移行期間や、野岩鉄道・会津鉄道への直通運転による運用距離の増加も考慮して、更新車だけでなく完全新造車が製造されました。
7編成14両が新規製造された6050系は、2編成が野岩鉄道に、1編成が1990(平成2)年に会津鉄道に譲渡されました。なお、会津鉄道はこの6050系200番台が唯一の保有電車でした。
運行当初は6000系と混用され、併結運転も行われていました。1991(平成3)年までは快速だけでなく、座席指定の有料快速急行「だいや」「おじか」「しもつけ」にも使われたほか、「尾瀬夜行」「スノーパル」といった夜行列車にも使用されました。
2006(平成18)年に区間快速が新設されても、基本的には長距離運用に従事していた6050系でしたが、2012年に2編成が634型特急形電車「スカイツリートレイン」に改装されます。側窓に天窓が追加されて眺望性が向上したほか、床のかさ上げや、座席の1+2列リクライニングシート化、さらに窓向き座席の設置といったグレードアップが行われました。
車端にはフリースペースとなるミニサロンや、運転台後方に前面展望可能なフリースペースを設置。売店やバリアフリー対応のトイレ、観光案内のモニターまで備えた大規模改造でした。
634型は2017(平成29)年まで特急「スカイツリートレイン」として定期運用を持っていましたが、それ以降は団体運用を基本として、浅草・春日部~会津田島間などで臨時特急として運用されるほか、花見シーズンには浅草~とうきょうスカイツリー間で花見列車「サクラトレイン」として運行されています。
野岩鉄道で活躍中の最後の6050系
また、6050系の廃車による車両不足が進んだ現在では、検査期間だけ野岩鉄道を中心とした普通列車運用にも従事しており「その期間はお客様が増えます」(野岩鉄道)といほどの盛況です。
なお、有料特急列車の車両としては非常に珍しい「窓の開く車両」でもあります。
2017(平成29)年に快速・区間快速が廃止されたことで、定期での浅草駅乗り入れと6両編成での運転がなくなり、日光線南栗橋以北と鬼怒川線、野岩鉄道、会津鉄道での運用となりました。長距離運行は特急「リバティ会津」の500系が担うようになり、6050系の廃車が始まったのです。
2022年、東武と会津鉄道が保有する6050系が廃車となり、現在は野岩鉄道の2編成と「スカイツリートレイン」の4両1編成(固定編成で分割は行わない)のみが残っています。なお、2022年にクラウドファンディングにより、野岩鉄道6050系の1両が畳と掘りごたつを備えた「やがぴぃカー」となり、さらに実物の運転台を「模擬運転台」として観光用に設置する改造が行われました。この際に、61103F編成のトイレは洋式に改められています。
なお、現状では「やがぴぃカー」の有料設定はなくなり、ほかの車両と共通運用されているため、鬼怒川温泉・新藤原~会津田島間の普通列車や区間快速で運が良ければ乗車できます。座席鉄の筆者(安藤昌季:乗りものライター)は「やがぴぃカー」に乗車しましたが、ちゃんと座布団もあり、足が伸ばせる、とても快適な車両でした。乗車していた利用客からも「これはいい車両だ。これならバスよりずっといい」といった声が聞かれました。「おかげさまでお客様からは好評をいただいております」(野岩鉄道)とのことでした。
せっかくの素晴らしい車両が活用されていないのは、惜しまれるところです。ホームページなどで運行予定を発表するとか、夜行列車運用をするなど、車両を生かした運用をしていただきたいものです。
6050系は1985(昭和60)年の登場から40年以上が経過し、いつ後継車両が登場してもおかしくはありません(あるいは500系で置き換えられるかもしれませんが)。首都圏から比較的近い場所で活躍する6050系。野岩鉄道のために誕生したこの名車の活躍を今のうちに見届けておくのもいいかもしれません。
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