「あのときの恨み」を一生引きずる夫婦の共通点とは 定年後に“不機嫌”を連鎖させない対話のコツ
- オトナンサー |

年齢とともに不仲になる夫婦の特徴とは?(画像はイメージ)
近年、「熟年離婚」という言葉を耳にする機会が増えました。
厚生労働省の「令和4年度 離婚に関する統計の概況」によると、離婚した夫婦のうち同居期間が20年以上の割合は、上昇傾向にあり、2020年には21.5%となっています。つまり、離婚は、「え?いまさら離婚?」と周囲が驚くほど、長年連れ添った夫婦にも起こり得る現実なのです。
一方で、年齢を重ねて、シニア世代になってもラブラブで笑顔を絶やさないご夫婦もいます。街や公園で手をつないで歩いたり、旦那さんが奥さんの腰に手をあてて歩いたりする姿を見かけたことがありませんか。私は「ご機嫌夫婦」と呼んでいます。
反対に、年齢を重ねるにつれ、顔つきが怖くなったり、無表情になったり、他者の前でも平気で相手に怒っている夫婦を「不機嫌夫婦」と呼んでいます。年を重ねると人は丸くなる場合もありますが、イラついたり怒りやすくなったりする人も確実にいます。
店員や、政治家に文句ばかり言うシニア世代。こうした方々は家ではにこやかかと言えばそうではないでしょう。毎日相手への小さな不機嫌が積み重なり、やがて会話も気遣いも消えていきます。今回はご機嫌夫婦と不機嫌夫婦の違いについて、解説します。
ご機嫌夫婦は「相手を変えよう」としない
ご機嫌夫婦の大きな特徴は、相手を自分の理想像に変えようとしません。年を取ると、頑固になり、生活の癖はますます強くなります。食事の時間、テレビの音量、片付け方、お金の使い方、休日の過ごし方。若いころは流せたことが、定年後や子どもの独立後には急に目立つようになります。
不機嫌夫婦は、そこで「なんで変わってくれないのか」と自分視点で考えます。ご機嫌夫婦は少し違います。「この人はこういう長年の習慣がある、こういうタイプなのだろう」といったん受け止め、自分がイライラしない距離や仕組みを編み出します。
例えば、夫がリビングで大きな音でテレビを見るなら、妻は別室で読書をします。妻が朝に強く、夫が夜型なら、無理に生活リズムをそろえないといった形です。また、寝室を分けているのも特徴です。
ご機嫌夫婦ほど長時間“べったり”していません。近すぎない、遠すぎないというほどよい感じの距離感を自分たちで創り出します。
会話の量より「ご機嫌ボイス!」
夫婦関係の調査では、会話は重要な要素として繰り返し出てきます。明治安田生命の「いい夫婦の日」に関する2024年の調査では、「夫婦円満のために必要なこと」のトップは「よく会話する」(50.2%)で、次いで「感謝の気持ちを伝える」(36.9%)でした。また、夫婦仲が円満な人の休日1日当たりの会話時間は4時間30分、円満でない人は1時間未満とされています。
ただし、大切なのは会話の“量”だけではありません。同じ「お茶いる?」でも、ぶっきらぼうに言えば命令のように聞こえます。少し柔らかく言えば、思いやりになります。長い話し合いをしなくても、声の温度が低すぎない夫婦は、日常の空気が悪くなりにくいのです。もちろん、ご機嫌夫婦は、相手の顔を見ながら言葉をかけます。スマホを見ながら「コーヒー入れてくれ」とは言いません。
不機嫌夫婦は、必要事項しか話しません。「ご飯は?」「電池買ってきて」「あなた行けば」「知らない」「勝手にして」。こうした低温度の言葉が、相手の心を少しずつ閉じさせます。不機嫌夫婦の言葉には小さなトゲが混ざり込みます。そして、相手と3秒以上、目を合わせることはほぼありません。
「ありがとう」は家の空気をよくする換気扇
里江子さん(仮名・56歳)は、事務用品の会社でパートとして働く主婦です。夫の秀平さん(仮名・60歳)は会社員。結婚して30年以上になります。
里江子さん夫婦は、いわゆる仲良しをアピールせず、記念日に外食するわけでもありません。ただ、家の中の空気がやけに軽く明るいです。
例えば、夕食後のキッチン。秀平さんは食器を下げるとき、必ず「今日の煮物、うまかったー、里芋っていまが旬なのか」とひと言添えます。里江子さんは「おしょうゆ、いいのに変えたのよ」などとうれしそうに返します。そこで会話は終わる日もありますが、それで十分。
秀平さんは働き盛りの頃、家事をほとんどしなかったといいます。里江子さんも何度も「これくらい自分でしてよ」と声を荒げる若き日々。妻が50代になったのを機に、家事を担当制に変えたといいます。更年期で体が疲れやすくなったという理由もあります。
秀平さんはゴミ出し、風呂掃除、休日の買い出しを担当。里江子さんは「やってくれて当然」と思いすぎないようにし、秀平さんも「手伝ってやっている」という言い方をしないようにしたといいます。
印象的だったのは、里江子さんのこの言葉です。
「『ありがとう』を言うと、負けた気がする時期があったんです。若かったな。でも、今は違う。『ありがとう』はやってあげたことの報酬じゃなくて、家の空気をよくする換気扇みたいなものだと思っています」
この感覚が、ご機嫌夫婦の核心だと思います。どちらが上か下かではなく、2人で暮らす空気を濁らせない点が大事です。小さな感謝は、相手をヨイショするものではなく、自分たちの生活を心地よくする言葉でした。
不機嫌夫婦は「昔の貸し借り」を精算し続ける
熟年期の夫婦関係が難しくなる理由の一つは、過去の不満がずっと蓄積していることです。私が運営する夫婦仲相談所でもほんとうによく耳にする言葉です。枕詞は「あのとき…」。
「あのとき、育児を私一人でやらせた」
「あのとき、うちの親の介護から逃げた」
「あのとき、仕事ばかりで子どもの非行に向き合ってくれなかった」
こうした思いは、年齢を重ねたからといって自然に消えるわけではありません。むしろ、子どもが独立し、仕事の役割が変わり、夫婦2人の時間が増えたときに表面化します。
国立社会保障・人口問題研究所の「第7回全国家庭動向調査」では、妻の家事分担割合は低下しているものの、依然として80%を超える水準にあるとされています。家事やケアの偏りは、単なる作業量の問題ではありません。「自分ばかりが」という感情の偏りにもつながります。
不機嫌夫婦は、過去の貸し借りをずっと精算しようとします。ご機嫌夫婦は、過去をなかったことにはしません。ただ、「これからの暮らしをどう軽やかに快適にするか」に焦点を移していきます。過去の反省を、未来の分担に変換できる夫婦は強いのです。
ご機嫌夫婦は「別行動」が大好き
年を取っても仲のよい夫婦ほど、実は一人の時間を大切にしています。夫は釣り、妻は友人とランチ。夫は野球観戦、妻は推しライブ。イベントを一緒に過ごすのではなく、それぞれの世界を持っているのが特徴です。これが夫婦関係の風通しになります。
ずっと同じ空間にいて不機嫌になるくらいなら、機嫌よく離れて、機嫌よく戻ってくる方がいいです。夜、ビールでも飲みながらお互い楽しい報告をする方が幸福度が高まります。
逆に不機嫌夫婦は、距離の取り方が極端です。ずっと一緒にいてイライラするか、完全に無関心になるか。その中間がありません。必要なのは、離れすぎた距離ではなく、呼吸できる距離です。
熟年夫婦に必要なのは「正しさ」より「居心地のよさ」
年を取っても夫婦円満でいられる人の特徴を簡単に言うと、「居心地のよさ」を意識していることです。「コレ言うと、空気悪くなるな」「いま、これしないとパパ、怒っちゃうかな」と、相手を思いやるセンサーが働きます。
居心地のよさを保つために、やってはいけないことを3つお伝えします。
・正論をドヤ顔で言う
・間違いを指摘する
・効率よく家事を回していないと不満を言う
夫婦の暮らしは勝ち負けでできているわけではありません。毎日の声のかけ方、感謝の出し惜しみをしないこと、不機嫌を相手にぶつけすぎないこと、そうした小さな積み重ねが、長い時間かけておうちでの「居心地の良さ」を形成します。
ご機嫌夫婦とは、特別に仲のよい夫婦ではないのです。お互いの機嫌を相手任せにしない自立夫婦です。ご機嫌夫婦を目指しましょう。
「恋人・夫婦仲相談所」所長 三松真由美
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