最近よく聞く「寒暖差アレルギー」とは? 原因&改善法を専門医に聞く
- オトナンサー |
朝晩は寒さが厳しくなる一方、日中は比較的暖かい日もありますが、そんなときに鼻水や鼻詰まりなどの症状に悩まされる人がいるようです。
朝晩と日中の温度差が大きい時期に鼻水や鼻詰まりといった症状が出ることは、「寒暖差アレルギー」と呼ばれています。なぜ寒暖差アレルギーが生じるのでしょうか。症状を改善するには、どうしたらよいのでしょうか。草ヶ谷医院(静岡市清水区)・院長で、アレルギー専門医の草ヶ谷英樹さんに聞きました。
寒暖差アレルギーは「血管運動性鼻炎」に相当
Q.寒暖差アレルギーとは、どのようなものなのでしょうか。
草ヶ谷さん「寒い場所にいたり、急に冷たい空気を吸ったりすると、鼻水が出たり、鼻が詰まってしまったりするなどの症状で困る人は少なくありません。診察の際に『寒暖差アレルギーで困っています』と話してくださる人がよくいらっしゃいます。
この『寒暖差アレルギー』ですが、実は正式な病名ではなく、アレルギー学会の用語集にも記載されていません。医学的には『血管運動性鼻炎』と呼ばれる病気が、この寒暖差アレルギーに相当します。正確にいうと、この病気はアレルギーではないのです。そこで、寒暖差アレルギーを血管運動性鼻炎と仮定して解説したいと思います」
Q.血管運動性鼻炎を発症しやすい人の特徴はありますか。
草ヶ谷さん「血管運動性鼻炎の詳しい原因は明らかになっていませんが、一つの原因として、自律神経のバランスが関係しているといわれています。急に寒くなったり、寒い場所から暖かい場所に移動したりしたときに生じる刺激が、自律神経のバランスを乱し、鼻の粘膜の血管の収縮・拡張の調節を崩すことで、鼻水や鼻詰まりといった症状を引き起こすとされています。
血管運動性鼻炎を発症する人は、幅広い年代に見られますが、男女別で見ると、やや女性に多いともいわれています」
Q.血管運動性鼻炎と症状が似ている病気として、風邪や花粉症が挙げられると思います。これらの病気と血管運動性鼻炎の違いについて、教えてください。
草ヶ谷さん「風邪は上気道のウイルス感染症のため、程度の差はありますが、鼻水だけではなく、喉の痛みやせき、発熱、倦怠(けんたい)感などの全身症状を伴います。また鼻水自体も、サラサラではなく、ややドロッとした感じになることが多いです。
ハウスダストや花粉などが原因で生じるアレルギー性鼻炎(いわゆる花粉症)は、血管運動性鼻炎と症状が似ています。見分け方の一例ですが、目や皮膚のかゆみのほか、喉の奥のムズムズ感などを伴うようであれば、アレルギー性鼻炎のようなアレルギー反応が、鼻だけではなくさまざまな部位に生じている可能性があります。寒暖差とともに、鼻汁のみの症状であれば血管運動性鼻炎の可能性が考えられるでしょう。
血管運動性鼻炎か別の疾患かについては、症状や症状が出るタイミングなどで総合的に判断しますが、中には見分けるのが難しいケースもあります。症状が長引く場合は、医療機関を受診するのをお勧めします」
Q.血管運動性鼻炎の予防法や改善法はあるのでしょうか。
草ヶ谷さん「病気は何事も予防することが大切です。温度変化や環境変化など、自分で『こういうときに鼻水が出やすい』と分かっているものがあれば、あらかじめその要素を避けることが非常に大切です。
冬に鼻水や鼻詰まりがひどくなる場合、鼻の中の温度が低くなることも影響していると考えられているため、温かい蒸しタオルを鼻に当てると有効な場合もあります。
血管運動性鼻炎は、7度以上の気温差で生じやすいといわれています。例えば、暖房がよく効いている部屋から外に出ることなどがきっかけで生じることがあります。
そのため、体が感じる温度差をできるだけ小さくすることも大切です。外出時などはさっと羽織れる衣類のほか、マスクを持ち歩くなど、身に着けるものを工夫しましょう。マスクを着用するのはお勧めです。マスクを着けることで鼻の粘膜に触れる冷気を遮断する効果が期待できます」
Q.血管運動性鼻炎の治療法はあるのでしょうか。
草ヶ谷さん「確立された予防方法や治療方法はありません。アレルギー性鼻炎の治療と同じ薬を使うとよくなるケースがあるほか、薬を使って様子を見ることもあります。
アレルギー反応を抑える『抗ヒスタミン薬』の中で、現在最もよく使われている『第2世代抗ヒスタミン薬』ではなく、一昔前に使われていた『第1世代抗ヒスタミン薬』の方がやや効果が見られるという話もあります。第1世代抗ヒスタミン薬の副作用であった眠気や口の渇きなどを引き起こす作用のことを『抗コリン作用』といいます。この抗コリン作用が、血管運動性鼻炎には有効な可能性があるのです」
Q.ちなみに、寒い場所に行くと鼻水が出やすくなるのはなぜなのでしょうか。
草ヶ谷さん「鼻は寒暖差だけではなく、体外から何らかの刺激を受けると、神経反射で鼻症状をよく起こすからです。
そもそも、寒さは鼻症状を引き起こします。スキー場の周辺の診療所を訪れた患者の症状を調べたある研究では、96%の患者に鼻水の症状が認められたことが報告されています。また、48%の患者にひどい鼻水の症状が見られたということです。
辛くて熱いもの、例えばアツアツの担々麺を食べたときに、鼻水が出た経験はありませんか。この場合も神経反射によるものです。また、欧米では、光の刺激によってくしゃみが出る体質の人もいますが、これも神経反射の一種です」
オトナンサー編集部
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