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海自は米国製MQ-9Bに決めたのにナゼ!? 川崎重工とエアバスが「ユーロドローン」対潜型でタッグ組む理由

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  • 乗りものニュース
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本命視された「シーガーディアン」

 川崎重工業は2026年6月26日、エアバスの子会社であるエアバス・ディフェンス・アンド・スペース(エアバスD&S)と、滞空型無人機に関する協業に向けた覚書を締結したと発表しました。また同日、エアバスも、川崎重工と中高度長時間滞空型無人機U950「ユーロドローン」の対潜哨戒型を共同で検討する覚書の締結について発表しています。

Large figure1 gallery62023年のパリ航空ショーで展示された「ユーロドローン」(画像:エアバス)

 両社の発表を総合すると、この覚書では、川崎重工とエアバスが協力して、「ユーロドローン」をベースに日本向け対潜哨戒型の開発・導入の可能性について検討するほか、川崎重工が開発・製造する海上自衛隊のP-1哨戒機とのハイブリッド運用を含む、新たな使い方についても検討するとしています。

 現時点では、共同で検討する段階の「ユーロドローン」対潜哨戒型ですが、あえてこのような発表を行った、両社の狙いはどこにあるのでしょうか。

 ロシア・ウクライナ戦争での活躍をきっかけに無人兵器の可能性に世界各国の海軍が目を向けるなか、日本では2022年12月策定の「防衛力整備計画」に「重層的な警戒監視態勢を構築するとともに水中及び海上優勢の確保や人的資源の損耗を低減させるため、各種無人アセットを導入するとともに、無人機部隊を新編する」ことや、「広域での洋上監視能力強化のため、滞空型無人機(UAV)を取得することに伴い、固定翼哨戒機(P-1)の取得数を一部見直す」ことが明記されました。

 これに基づき、防衛省は2024年11月、海上自衛隊の滞空型UAVとしてGA-ASI(ジェネラル・アトミックス・エアロノーティカル・システムズ)製のMQ-9B「シーガーディアン」を決定し、2025年度予算に機体2機分などの取得経費を計上しています。

ユーロドローンの決め手となった2つの要因

 海上自衛隊では、MQ-9B「シーガーディアン」を23機導入し、2028年度から鹿屋基地、次いで八戸基地に約10機ずつ配備する計画です。

Large figure2 gallery7 海上保安庁が運用するMQ-9B「シーガーディアン」。海上自衛隊も導入予定(画像:海上保安庁)

 このように洋上監視用として海上自衛隊に導入される計画のMQ-9Bですが、アメリカ海軍とGA-ASIは、同機を潜水艦の探知に活用する実験を進めており、2024年2月には、実機からソノブイの投下試験を行い、正常に受信・監視できたことを発表しています。

 こうした経緯もあり、MQ-9Bが洋上監視用に加え、将来的にはP-1の補完戦力として対潜戦で活用する可能性も指摘されていました。

 ただ一方で、防衛省は2023年12月、ヨーロッパのOCCAR(防衛装備協力共同機構)が管理する装備プログラムのひとつ「MALE RPAS(中高度長時間滞空型無人機)」にオブザーバー参加が承認されて以降、MALE RPASすなわち「ユーロドローン」に関する装備・技術情報の収集を進めてきた経緯もあります。

「ユーロドローン」は現在、主契約会社のエアバスD&Sがヨーロッパの防衛企業3社とともに開発中であり、初飛行は2029年を予定しています。すでに開発メンバー国であるドイツ、フランス、イタリア、スペインが空軍向けに発注済みですが、海軍向けの採用はありません。

 このようにMQ-9シリーズに比べ実績が乏しい「ユーロドローン」ですが、なぜ川崎重工とエアバスの共同検討の対象になったのでしょうか。

圧倒的なペイロードと、川崎重工の「経験」

 ひとつの要因としては、飛行性能の差があると考えます。MQ-9はターボプロップ単発で最大離陸重量が4760kg、ペイロード1700kg、巡航速度約310km/h、滞空時間が最大28時間であるのに対し、「ユーロドローン」はターボプロップ双発で、最大離陸重量1万1000kg、ペイロード2300kg、巡航速度約500km/h、滞空時間は最大40時間です。

Large figure3 gallery82022年11月28日、海上保安庁の「シーガーディアン」を視察した酒井海上幕僚長(向かって左:当時)。その隣は白石海上保安監(当時)(画像:海上保安庁)

 また「ユーロドローン」はノースロップ・グラマンが開発したRQ-4B「グローバルホーク」に近い機体サイズで、MQ-9よりも大きいです。この大きさを活かしてソノブイだけでなく魚雷や各種対潜装備も搭載できることから、P-1と連携して任務に就くだけでなく、単独での運用も想定しているようです。

 加えて、川崎重工には、1950年代後半からP2V-7のライセンス生産を行い、改良型P-2Jの独自開発、P-3Cのライセンス生産およびアップデート、そして国産哨戒機P-1の開発まで、連綿と行ってきた実績があります。

 このような、70年にわたって哨戒機のシステムインテグレーターとして培ってきた技術と知見をユーロドローン対潜哨戒型に活かせることも、もうひとつの要因だったのではないかと筆者(小林春彦:月刊『軍事研究』記者)は推察します。

 エアバスは今後、日本が「ユーロドローン」対潜哨戒型を導入した際に制限なく運用できるように、川崎重工と想定される機体の仕様や日本製対潜戦システムとの統合、製造・維持整備における日本産業界とのワークシェアなどの可能性について、検討すると説明しています。

 日欧の大手防衛企業が無人航空機で初めてタッグを組んだ「ユーロドローン」対潜哨戒型ですが、実現した暁には、防衛省への提案だけでなく、第三国への輸出も視野に入れている模様です。

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