中国大陸まで最短2km「金門島」に行ってみた 台湾有事の最前線に? “上陸阻止”施設を前に元軍人が語る【前編】
- 乗りものニュース |

金門は「台湾」ではなく、台湾と同じ「中華民国が統治するエリア」
2022年以降、ロシアによるウクライナへの侵攻、イスラエルによるガザ地区やレバノンの侵攻、そしてアメリカによるイランへの軍事攻撃が始まり、いずれも、いまだ停戦の見通しが立っていない状況です。世界各地で戦争が起きている今、私たち日本人が最も危惧するのは、いわゆる「台湾有事」でしょう。
1933年に旧日本軍が万里の長城へ進軍した際、軍事衝突で活躍した7人の兵士を讃えるモニュメント・八達楼子。金門にはこうした戦争の遺産が随所にある(2026年、松田義人撮影)
もし「台湾有事」が起きたとき、台湾や中華民国の統治の過去がある島々はどうなるのでしょうか。様々な説が飛び交う中、中国大陸まで最短2kmという離島・金門の今を知りたく現地に行ってきました。
金門は中国大陸福建省の対岸にある大小12個の島々で構成されるエリア。かつて台湾を統治する中華民国がこの金門も統治し、同国が主張する「福建省政府」が置かれていました。これは中国福建省とは異なる政府でしたが、現在はその実態がなくなりました。
また、中華民国が台湾を統治していることから、同政府が統治する金門も「台湾の一部」とする情報やガイドブックもありますが、これは正しくありません。正確には、台湾と金門は「中華民国に統治された」親戚のような関係で、金門の人は台湾を「遠い親戚の別の国の人」のように話しますし、台湾人もまた然り。
日本人からすると、この辺の理解が少々難しく感じますが、長年台湾に通い続ける筆者から見て台湾・金門の間に争いなどはなく極めて友好的な関係ではあるものの、双方ともに「違う立場の地域」としてお互いを指す人が多い印象です。
しかし、それでもやはり気になる「台湾有事」です。前出のとおり金門は中国大陸まで最短距離で約2kmと迫ったエリアにある小さな島々。また、1945年に日本が降伏して以降は、中国大陸を舞台に国共内戦が再燃し、こういった場面で金門はたびたび「中華民国軍の軍事的拠点」となりました。島のあちこちには、その時代の戦争の痕跡が生々しく残っています。
国共内戦の時代と今とでは事情が全く異なるものの、仮に中国が台湾に侵攻した場合、金門はその最前線になってしまうのではないか……そんな最悪のシナリオを抱きながら、今年3月、金門に行ってみることにしました。
台湾から約1時間で行けちゃう「最前線」
金門へのアクセスは台湾の台北、台中、高雄などから直行の航空便が多く運行していて、所要時間は約1時間。あっという間に金門にたどり着くことができます。
筆者はたまたま滞在していた台中から金門へと飛び、事前に一緒に巡る約束をしていた台湾人の友人で元中華民国軍人の孟憲徳さん、陳見安さんと空港で落ち合い、まずは金門の中心となる金城エリアを散策することにしました。
実は筆者、今から8年前の2018年に単独で金門を旅行したことがありました。その際は、中国大陸と金門をフェリーなどで行き来できました。国境を越える際の手続きはあれど、意外と自由で、筆者も金門から海向こうの廈門(アモイ)に日帰りで行きましたし、逆に金門の金城エリアは大陸から遊びに来た中国人でごった返していました。
しかし、今年行った金城エリアはやや静かでした。緊迫する様子はなく穏やかな空気が流れてはいるものの、中国大陸と金門の行き来が厳しく制限されたことで中国人をほぼ見かけず、地元の人たちがのんびり行き来する「ごく普通の地方の離島」といった雰囲気でした。
「鉄杭についた牡蠣は食べられるものもある」
ただし、これは金城エリアに限っての話。金城エリアから離れれば、金門中のあちこちにかつて、中国共産党の中国人民解放軍と何度も繰り返した戦争の痕跡が至るところにあり、幹線道路のあちこちに、軍関係の迷彩柄に塗られた建物もあります。
海岸、特に中国大陸のある西方面には複数の旧軍事施設があり、鉄線などが張られている。その鉄線の向こうに見えるのが中国福建省の廈門だ(2026年、松田義人撮影)
また、金門の海岸には必ず「鉄杭」が張り巡らされていて、その数は島全体でなんと数万本とも。これは海向こうから戦車などが金門に上陸してくることを想定した防衛策です。今なおこの「鉄杭」が張り巡らされているということは、やはり「いつ中国が攻めてきてもおかしくない」ことを暗に示しているのでしょうか。
ところで、孟さんに「鉄杭には、満潮時に牡蠣がつくことがあり食べられるものもある」と教えてくれました。「軍人時代、長官の目を盗んで、鉄杭の牡蠣をこっそり採ることもあった」と笑っていましたが、そう聞いても穏やかな気持ちにはなれず、ただただ金門の緊張感を前に、やはり最悪のシナリオ「台湾有事」の恐怖を覚える筆者でした。(つづく)
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