「日本は原子力潜水艦を持てるの?」→「激ムズです!」 国際法×自衛隊の専門家が語る“決定的な理由”とは?
- 乗りものニュース |

機運高まる原潜保有論 本当に実現できるの?
昨今、日本の次世代潜水艦をめぐる議論が注目を集めています。これまで、海上自衛隊ではディーゼルエンジンと蓄電池の組み合わせにより航行する通常動力型潜水艦を連綿と導入、運用してきました。
海上自衛隊のたいげい型潜水艦(画像:海上自衛隊)。
しかし、最近では原子炉を搭載する原子力潜水艦の導入に関しても、これを推進する言説が盛り上がりを見せています。11月6日には、小泉進次郎防衛大臣がTVの生放送で原子力潜水艦の導入について必要性を説いたほか、直近では11月25日に放送されたBSフジの番組に出演した前防衛大臣の中谷 元衆議院議員が、周辺諸国の動向などを念頭に原子力潜水艦の導入に前向きな発言をしています。
それでは、実際に日本で原子力潜水艦を保有するとなると、それにはどのようなプロセスや障壁が存在するのでしょうか。ここでは、主に原子炉に搭載される核燃料をめぐる国際的・国内的な規制の視点から、整理してみたいと思います。
まず、核物質に関する国際的な規制という観点では、核兵器不拡散条約(NPT)とそれに基づく保障措置協定が問題となります。NPTは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシア、中国を核兵器国(1967年1月1日前に核兵器その他の核爆発装置を製造し、かつ爆発させた国)、その他の締約国を非核兵器国として、核兵器国以外への核兵器の拡散を防止する一方、非核兵器国には国際原子力機関(IAEA)の保障措置(核物質の核兵器への転用を防ぐための厳格な管理体制)受け入れを義務付けたうえで、原子力の平和利用を認めるという条約です。
これにより、非核兵器国である日本は、核兵器を保有することは許されないものの、IAEAによる厳格な保障措置の下で、原子力発電に代表される原子力の平和利用については許されているわけです。
さて、それでは原子力潜水艦に搭載される原子炉とその燃料として使用される核物質は、このNPTの下でどのように扱われることになるのでしょうか。まず、これが核兵器にあたらないことは明白ですから、問題は「原子力の平和利用」にあたるかどうかということになります。
この点について、NPTが核兵器の拡散防止を主眼とした条約であることや、他の国際条約でも「平和=非軍事」という厳格な解釈がとられていないことを考慮すると、軍事用途に用いられる原子炉が原子力の平和利用にあたらないと整理することは難しいと考えられます。
軍事機密の塊をどう管理する? 実はそのための規定が
そうなると、原子力潜水艦に対してもIAEAによる保障措置が適用されることになるのでしょうか。しかし、高度な軍事機密の塊である原子力潜水艦の原子炉に対して、たとえば監視カメラの設置や定期的な査察など、原子力発電所などと同様のIAEAによる保障措置を適用することは事実上不可能です。
オーストラリアがアメリカおよびイギリスと共同で開発を目論んでいるAUKUS級原子力潜水艦のイメージ図(画像:BAEシステムズ)。
そこで、日本とIAEAとの間で交わされている「日IAEA保障措置協定(核兵器の不拡散に関する条約第3条1及び4の規定の実施に関する日本国政府と国際原子力機関との間の協定)」が重要になってきます。これは、NPT上の非核兵器国がIAEAと結ぶ保障措置に関する条約で、日本は1977(昭和52)年にこれを結びました。
その第14条では、「1、当核物質を平和的な原子力活動においてのみ使用する旨の日本国政府が行った約束と抵触しないこと」、「2、核物質が核兵器その他の核爆発装置の製造に使用されないこと」を条件として、特定の活動に用いられる核物質に関して、IAEAによる保障措置の対象から除外することができるというものです。ただし、これに関してはIAEAとのあいだで個別の取り決めを結ぶ必要があり、その内容をめぐって長期間の協議を要することになると考えられます。
というのも、仮にこの枠組みの中で特定の核物質を保障措置の対象から除外した場合、これが核兵器開発に転用される可能性も否定はできず、安易にそうした取り決めを結ぶことは核拡散のリスクを大きくしてしまうことにもなりかねないためです。
実際、日本と同じくNPT上の非核兵器国にあたるオーストラリアが、アメリカとイギリスの協力を得て原子力潜水艦保有計画「AUKUS」を進めていますが、まさにIAEAとの保障措置協定第14条に基づく取り決めをめぐって、さまざまな議論が続けられています。
ただし、たとえばオーストラリアが潜水艦への搭載を計画している高濃縮ウランを用いた原子炉の場合、一度艦内に設置された原子炉を取り出すには、高い水圧に耐えられるよう設計された潜水艦の船体を大きく切断しなければならず、そのためにはドック内での複雑かつ長期間の作業が必要となります。裏を返せば、一度搭載された原子炉から核物質を取り出すことは困難であり、それによる核拡散の懸念は小さいといえるわけです。
そこで、AUKUSについて議論する専門家の間では、軍事機密との兼ね合いも踏まえつつ、現実的な拡散防止の方策としては、原子炉の輸送、潜水艦への積み込み、その後の入港期間の確認等といった手段が現実的ではないか、という主張もなされています。
日本国内の規制はどうクリアする? 課題は法律の解釈
では、翻って日本国内の原子力利用に関する規制はどうなっているのでしょうか。これに関しては、日本における原子力の研究開発や利用推進を目指して1955(昭和30)年に成立した、原子力基本法の第2条1項の規定が重要となります。
「原子力利用は、平和の目的に限り、安全の確保を旨として、民主的な運営の下に、自主的にこれを行うものとし、その成果を公開し、進んで国際協力に資するものとする」
この「原子力利用は、平和の目的に限り」という一文について、1965(昭和40)年4月14日に国会でその解釈を問われた愛知揆一科学技術庁長官(当時)は、政府見解として次のように答弁しています。
「原子力基本法第2条には、『原子力の研究、開発及び利用は、平和の目的に限り、』云々と規定されており、わが国における原子力の利用が平和の目的に限られていることは明らかであります。したがって、自衛隊が殺傷力ないし破壊力として原子力を用いるいわゆる核兵器を保持することは、同法の認めないところであります。また、原子力が殺傷力ないし破壊力としてではなく、自衛艦の推進力として使用されることも、船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては、同じく認められないと考えられます」(愛知揆一科学技術庁長官答弁『第48回国会 衆議院 科学技術振興特別対策委員会議録』第15号、8頁(昭和40年4月14日))
この答弁を一見すると、潜水艦を含む自衛艦の推進力として原子力を利用することは、原子力基本法上は認められないと整理されているように見えます。ただし、これについては「船舶の推進力としての原子力利用が一般化していない現状においては」という限定が付されているのがポイントです。
では、各国で原子力潜水艦が運用されている現在の状況で、この限定は解除されたといえるのでしょうか。
重要なのは、ここでいう「一般化」の意味です。じつは、日本政府の理解は「原子力で推進する商船が一般化した場合」というものであると、1980(昭和55)年に国会で説明されています。
「(原子力利用が)一般化するという状況は、原子力商船が一般化するという状況であるというふうに御理解いただきたいと存じます」(石渡鷹雄科学技術庁原子力局長答弁『第93回国会 衆議院 科学技術委員会議録』第3号、8頁(昭和55年10月23日))
これら一連の答弁は現在でも踏襲されているので、仮に日本が本当に原子力潜水艦を保有しようとする場合には、この原子力基本法の解釈を変更する必要があります。そのうえで、IAEAとの取り決めを改めて結び、核拡散防止に関する仕組みを新たに設けることも必要です。
つまり、原子力潜水艦の保有は一朝一夕に実現できるものではない、と断言できます。
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