“中継ぎ”のはずが長寿命!攻撃ヘリ元祖「コブラ」60年間活躍中 ドローンが出現しても全機退役はまだまだ先?
- 乗りものニュース |

怪獣映画などでも度々登場したことのあるAH-1「コブラ」。同機は実は世界初の攻撃ヘリコプターですが、当初は間に合わせ的に生まれた兵器でした。ヘビ年にちなみ、同機がなぜ長く使われるようになったのかさかのぼります。
「攻撃ヘリ」というジャンルの創設者は実は“中継ぎ”だった?
陸上自衛隊も運用しているAH-1「コブラ」は、今から約60年前の1965年9月7日、世界初の本格的な攻撃ヘリコプターとしてアメリカで初飛行しました。陸上自衛隊の訓練動画だけでなく、『シン・ゴジラ』などの映画やアニメ・マンガなどにもたびたび登場しており、馴染みの深い機体でもあります。しかしこの機体、実は当初、いわゆる“間に合わせ”の中継ぎ的な存在として誕生したという経緯があります。
陸上自衛隊が運用しているAH-1S「コブラ」(画像:陸上自衛隊)
試作機は「ベル・モデル209」と呼ばれ、テストパイロットのウィリアム・クインランによって12分間の飛行試験が行われました。この初飛行は、回転翼機の歴史において新たな時代の幕開けを告げる出来事となりました。そして実戦配備も早く、1967年6月にはアメリカ陸軍への納入が始まっています。
アメリカ軍がここまで、地上攻撃に特化した攻撃ヘリコプターを求めた理由――それはベトナム戦争での苦戦にあります。当時、陸軍や海兵隊では、ジャングル地帯でも高い機動力を発揮できる「ヘリボーン作戦」を多用していました。
しかし、地上の状況が分からない中で低速のヘリコプターを飛ばすと、敵の地上部隊からの対空砲火を受けて撃墜されるケースが多くありました。そのため、ヘリボーンの実施前に固定翼の攻撃機を投入し、着陸地点の掃討を試みるようになりますが、敵は神出鬼没で効果的な掃討は困難でした。また、飛行中のヘリコプター編隊を護衛する機体も必要でしたが、固定翼機(飛行機)ではヘリコプターとの速度差が大きすぎて、護衛任務を的確に果たすことができませんでした。
こうした、空からの支援がうまく機能しないというジレンマから、輸送ヘリコプターの編隊と同じ速度で同行・護衛し、着陸時にはほぼ同時に掃討や周辺警戒を担える機体として、当初は汎用ヘリコプターに機関砲やロケット弾を搭載した「武装ヘリコプター」、いわゆる「ガンシップ」が登場します。
この機体では、敵が十分な対空兵器を持っていないと判断される場所で、ホバリングしながらその都度目標を発見し、攻撃を行っていました。しかし、もともと重火器を搭載する前提で設計された機体ではなかったため、速度低下や防弾装備の不十分さなど、さまざまな問題を抱えていたのです。
本命機体はAH-56「シャイアン」だった!
こうした教訓を踏まえ、アメリカ陸軍は専用の攻撃ヘリコプターの開発を決定し、新型空中火力支援システム(AAFSS)計画が立案されました。陸軍がまとめた要求性能は米国内の各メーカーに示され、その中でベル・エアクラフト(現ベル・ヘリコプター)が開発したのが、UH-1汎用ヘリコプターをベースにしたAH-1「コブラ」でした。
UH-1をベースにベルが開発した「モデル209」(画像:パブリックドメイン)
高速性能を追求するため、空気抵抗を減らすべく機体を極限までスリム化。結果として、ヘリコプターとして初めて操縦席のタンデム配置(前後にシートを設ける形)を採用しました。また、進行方向に関係なく射撃可能な旋回銃塔を搭載し、多様な武器を装備できるよう機体側面に小翼を設けるなど、以降の攻撃専用ヘリコプターの基本設計を形作った機体でもあります。なお、AAFSS計画が立案されたのは1964年であり、AH-1はわずか約7か月という超短期間で開発されました。それだけ早くアメリカ軍はベトナム戦争での問題解決のため、攻撃ヘリと欲していました。
とはいえ、アメリカ陸軍の本命機は別に存在しました。同機と並行してロッキード(現ロッキード・マーチン)によって開発されていたAH-56「シャイアン」です。AH-1「コブラ」は初の本格的な攻撃ヘリとはいえ、エンジンやローターは既存のUH-1汎用ヘリからの流用が中心でした。それに対し、AH-56「シャイアン」は全て新規設計の機体であり、AAFSS計画内では本命とされ、AH-1「コブラ」はあくまで間に合わせ的な位置づけでした。
しかし、AH-1「コブラ」から2年遅れて1967年9月21日に初飛行したAH-56「シャイアン」は、新機軸を多数盛り込んだ結果、かえって数々の問題点が露呈することとなりました。
肝心の本命機体がほぼ失敗作で現役続行! 今に至る
AH-56「シャイアン」は、ヘリコプターの基本となるメインローターと機体制御用のテールローターに加え、後部に推進用のプロペラをもう一つ装備していました。この3つ目のプロペラにより高速化を図っていたのです。さらにメインローターにはコンピュータ制御を導入し、索敵・照準用として赤外線暗視装置も採用するなど、非常に先進的な機体に仕上がっていました。
アメリカ海兵隊が運用しているAH-1Z「ヴァイパー」はAH-1「コブラ」の最新タイプ(画像:アメリカ海兵隊)
しかし、高性能を追求しすぎた結果、開発コストが膨れ上がり、新機軸に伴うトラブルも頻発。これにより開発スケジュールが遅延し、大きな問題となりました。
決定的だったのは、試作機の墜落事故です。その頃には攻撃ヘリの運用構想自体が変化していたこともあり、採用は見送られ、AH-56「シャイアン」は開発中止となりました。結果としてアメリカ陸軍はAH-1「コブラ」の改良を継続しながら使用する方針に転換します。同機はグレナダ侵攻(1983年)、パナマ侵攻(1989年)、湾岸戦争(1990~1991年)といった主要な軍事作戦に参加しました。
1985年にはAH-1「コブラ」の後継機であるAH-64「アパッチ」の部隊運用が開始されましたが、長期間にわたる後継機不在やAH-64「アパッチ」の高価格などの理由により、西側諸国でのAH-1「コブラ」全機種の置き換えは2025年現在でも完了していません。アメリカ軍に関しても、陸軍はすでに全機退役していますが、海兵隊はAH-64「アパッチ」を導入せず、AH-1J、AH-1T、AH-1Wと改良型を開発し続け、現在は最新型のAH-1Z「ヴァイパー」の導入を進めています。
2022年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻では攻撃ヘリの損害率の高さが指摘されるなど、高価な攻撃ヘリの運用を疑問視する声もあり、実際に陸上自衛隊やドイツ陸軍のように将来的に攻撃ヘリを廃止する方針である組織もあります。しかし、依然として地上戦で強力な火力支援を望めるのは攻撃ヘリであり、その代名詞たるAH-1がすぐに世界中の軍隊で不要になることはなさそうです。
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