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「ハーキュリーズの後継はハーキュリーズで」とはならない? 空自C-130H輸送機の後継選び “アレコレ叶える”欲張り機体はどれ!?

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「輸送力強化」と「空中給油」がカギ

 防衛装備庁は2025年11月19日、「固定翼輸送機に関する代替案分析」業務の一般競争入札を行いました。

Large figure1 gallery15航空自衛隊のC-130輸送機(画像:航空自衛隊)

 固定翼輸送機は航空自衛隊がC-2とC-130H、海上自衛隊がC-130Rをそれぞれ運用しています。防衛装備庁は2025年9月に「固定翼輸送機の整備の方向性を検討するための情報提供企業」の募集を行っていますが、これは海上自衛隊のC-130Rを対象としたものでした。また、2011(平成23)年度から調達が開始されたC-2の代替案を分析・検討するとも考えにくいため、今回の一般競争入札は、最も新しい機体でも1998(平成10)年度に導入された、航空自衛隊のC-130Hの後継機の分析を行う業務のものと考えられます。

 C-130Hの原型であるC-130「ハーキュリーズ」は、70年以上も世界中で使われている輸送機のベストセラーです。C-130Hの後継機であれば、C-130の現行生産型であるC-130Jの導入が、一番手っ取り早く思えるのかもしれませんが、2つの要因から簡単にC-130Jの導入では決まらないのではないかと、筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は考えます。

 一つはC-130Hを改造した、KC-130H空中給油・輸送機の存在です。16機が導入されたC-130Hは空中給油任務に使用する際には、貨物室に給油用タンクと主翼下に給油用ポッドを搭載する必要があります。

 この給油用タンクは着脱式ですが、空中給油を行う際には機体の燃料システムと接続・点検を行う必要が生じるため、頻繁な着脱は現実的ではありません。これはC-130Jの空中給油・輸送機型でも変わっていません。

 日本政府は2018年12月に閣議了承された防衛計画の大綱と、2022年12月に閣議了承された国家防衛戦略に「機動展開能力」、すなわち輸送能力を強化するという文言を盛り込んでいます。

 これがC-130Jの導入がすんなり決まりそうもないと筆者が考える2つ目の理由なのですが、仮にC-130J/KC-130JをC-130H/KC-130Hと同数導入して、現在と同じ運用をするとすれば、うち3機は事実上、空中給油専用機となってしまいますので、輸送能力の強化には大きく寄与しないと考えられます。

でっかいC-2に空中給油機能をつければ万事解決、でもないワケ

 C-2は空中給油を受ける機能はあるものの、他の航空機に空中給油を行う機能はありません。C-2の貨物搭載量は32~36トンと、C-130Jの約19トンより大きいですから、C-2に空中給油機能を追加して、それを調達すればいいと考える人もいるのではないかと思います。

Large figure2 gallery16航空自衛隊のC-2輸送機。ウクライナへの物資輸送にも用いられた(画像:防衛省)

 日本の安全保障環境がそれほど厳しくなく、財政状況も現在より良好だった1990年代前半ならば、そのような選択もあったのかもしれません。しかし今は時代が違います。

 アメリカ太平洋海兵隊司令官のジェームズ・グリン氏はアメリカ軍の防衛装備品について、「インド太平洋地域において年単位のタイムラインは通用しない。我々に完璧な解決策を待つ時間はない」と述べています。これはインド太平洋地域に所在する日本の防衛装備品にも共通して言えることでしょう。

C-2に空中給油機能を追加するという手法は「完璧な解決策」と言えるのかもしれませんが、設計変更や開発に伴う長い時間と、そのための大きなコストを費やす余裕は、安全保障環境と財政状況がひっ迫している現在の日本には無いと筆者は考えます。

 では、どのような機体がC-130Hの後継として考えられるのでしょうか。

日本が「脈あり」と考えている? 空中輸送機メーカーとは

 2025年8月30日、日本の外交使節団は、他国の外交使節団と共にブラジルの航空機メーカーであるエンブラエルのKC-390空中給油・輸送機の製造施設を見学しています。これはエンブラエルの招待に応じたものですが、エンブラエルが「脈あり」と考えていなければ、日本の外交使節団を招待するとは考えにくいため、航空自衛隊はC-130Hの後継機として、KC-390の導入も検討しているものと思われます。

KC-390は燃料タンクを搭載しなくても、他の航空機に空中給油ができますし、最大貨物搭載量(26トン)もC-130Hより大きく、空中給油能力と輸送力の強化を実現できます。

 もうひとつ候補機となり得るのが、エアバスのA400M輸送機です。A400Mも燃料タンクを搭載しなくても空中給油ができますし、最大貨物搭載量は約30トンに達します。

「空中給油だけじゃない」エアバスA400Mのメリット

 エアバスは2025年6月に、A400M用の空中消火キットの試験キャンペーンを完了しています。このキットは大規模な山火事などへの使用を想定して開発されたもので、貨物室に搭載する短時間で着脱が可能なキットから、最大2万リットルの水または難燃剤を散布できます。

Large figure3 gallery17海上自衛隊のUS-2飛行艇。消防飛行艇へ改造するよりも、輸送機で火災への対応能力を備える考え方もある(画像:海上自衛隊)

ターボプロップ機のA400Mはジェット機に比べて低空・低速飛行が容易に行えますので、フランスで行われた試験では30mの低高度を235km/hの低速で飛行して、難燃剤の散布を行っています。

 石破 茂前首相は2025年3月10日に開催された参議院予算委員会で、消火能力の高い消防飛行艇の可能性について、「検討を早急に行う」と述べています。この方針が高市内閣に継承されているのかは不明ですが、海上自衛隊の運用しているUS-2飛行艇の消防飛行艇への改造はコストと時間がかかりますし、他国で運用されている消防飛行艇の導入は、どの組織が運用するのかという問題がクリアできそうにないため、どちらも現実的ではないと筆者は考えます。

 輸送能力の拡大と空中給油能力の確保に加えて、大規模火災への対処能力の強化を短期間で実現したいと政府や航空自衛隊が考えるならば、A400Mの導入も真剣に検討すべきだと筆者は考えます。

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