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アメリカ「戦艦復活させます!」→そもそも“戦艦”ってどんなフネ? かつては「力の象徴」も廃れていった理由とは

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アメリカで「戦艦」建造計画が始動

 2025年12月2日、日本政府は戦艦の定義について「参議院議員辻元清美君提出高市内閣総理大臣の『台湾有事』答弁における『戦艦』の意義等に関する質問に対する答弁書」で、「(1) 戦争に用いる船。戦闘艦。(2) 軍艦の一種。最も卓越した攻撃力と防御力とを有する大型艦で、第二次大戦までは水上兵力の中心」という広辞苑の定義を持ち出し、「戦艦」を特定の艦種ではなく、軍艦全般の意味で使用できるとしました。

Large figure1 gallery71943年に就役したアメリカ海軍の戦艦「アイオワ」の主砲は16インチ3連装砲。1984年7月撮影(画像:アメリカ海軍)

 これは、2025年11月の国会における高市総理の台湾有事答弁で「戦艦が用いられるような紛争」という表現があり、立憲民主党の辻本清美参議院議員から「言い間違いか」と質問されたため、それに対する答弁として公表されたものです。

 軍事にある程度詳しい人たちのネット世論では「戦艦は艦種。戦争に用いられる艦艇の総称は軍艦」というこれまでの定義が持ち出され、違和感も表明されていました。筆者(安藤昌季:乗りものライター)もその一人ではあります。戦艦は「航空母艦」とか「潜水艦」と同じで、軍艦のジャンルの一つだからです。

 ただ、一般的に「戦艦」と「軍艦」が混同されているのも事実です。マスコミが、巡洋艦以下の艦種を「戦艦」と説明することも多いですし、一般にもアニメに登場する宇宙軍艦を全て「戦艦」と呼称するなど、政府の答弁通りという実態もあります。

 そうした中で、アメリカのトランプ大統領は艦種としての「戦艦(Battle Ship)」建造を発表します。それが、トランプ級戦艦と通称される大型水上戦闘艦です。同級の1番艦は「デファイアント」であることが発表されていますが、あくまでトランプ級となるそうです。
 アメリカが大量建造している、アーレイ・バーグ級駆逐艦が、満載排水量8850~9700トンなのに対して、トランプ級戦艦は3~4万トンと格段に大きく、まさに「最も卓越した攻撃力と防御力とを有する大型艦」といえます。実際、駆逐艦には搭載できない特大サイズの極超音速ミサイルである「CPS(Conventional Prompt Strike)」12セル分や、32MJ級のレールガンを搭載する予定です。

 つまり、こうした兵器を運用するための船体サイズや発電システムを搭載し、イージス艦と同等の防空能力を備えているのが、新世代の「戦艦」となるわけです。かつてソ連が建造した重原子力ミサイル巡洋艦のキーロフ級は、満載排水量が2万8000トンもあることから「ミサイル戦艦」と通称されたこともありますが、新造艦はキーロフを上回る規模です。トランプ大統領いわく「アメリカ海軍の旗艦となる。このような艦はかつて存在したことはない」とされています。

そもそも「戦艦」とは

 このように、現代では定義がブレる戦艦ですが、元々はどういった軍艦を指すのでしょうか。19世紀まで、各国は大砲を何十門も搭載した帆船「戦列艦(ship of the line)」が艦隊の主力でした。これが蒸気機関の発明と造船技術の進歩で「装甲艦」に変わります。そして、当初は帆走を残していた装甲艦からこれを廃し、主砲を船体の中心線上にある回転式の露天砲郭に搭載した軍艦が、イギリスで出現しました。1880年代に6隻が建造されたアドミラル級です。

Large figure2 gallery81906年に進水・就役したイギリス海軍の戦艦「ドレッドノート」(画像:アメリカ海軍)

 1887(明治20)年にイギリス海軍は、この艦種を公式に「戦艦」と呼びました。1889年(明治22)年に就役したロイヤルソヴリン級が「最初から戦艦」だった初めての艦型です。ロイヤルソヴリン級は、艦の前後に34.3cm連装砲塔を搭載し、側面に15.2cm副砲を搭載するデザインでした。日露戦争前に旧日本海軍がイギリスに建造を依頼した、富士型戦艦は1897(明治30)年に就役していますから、当時の最新ジャンルの兵器だったわけです。

 こうした「各国で最大の軍艦で、かつ前後の中心線上に主砲塔を備えた軍艦」である戦艦は、大量に建造されました。しかし、それを一変させたのが、イギリスが1906(明治39)年に就役させた戦艦「ドレッドノート」です。「ドレッドノート」は、それまでの戦艦では30.5cm砲4門、18ノット(33.3km/h)が標準的な性能だったのに対して、30.5cm砲10門、21ノット(38.8km/h)と圧倒的な性能を有していました。

 既存の戦艦が「ドレッドノート」と戦おうとしても、数で立ち向かえば優速で離脱されますし、1対1では勝ち目がありません。各国はこぞって、この「ドレッドノート級」、つまり「弩(ド)級」戦艦を多数建造するようになりました。逆を返せば、イギリスがそれまで大量に建造・保有していた「前弩級戦艦」が、建造中の新型戦艦も含めて、旧式・無力な艦種となったのです。

 これにより「今までの戦力は関係ない。弩級戦艦を大量に建造すれば、イギリスに追いつける」という皮肉な展開となりました。イギリスは1908(明治41)年、「多数の主砲塔を備えつつ、装甲を減らしてより高速を発揮できる」巡洋戦艦インヴィンシブル級を建造。さらに1912(大正元)年、より高性能な34.3cm主砲を採用した「超弩級戦艦」オライオン級を就役させるなど、他国を突き放しに入りますが、オライオン級を上回る35.6cm砲を搭載した日本の金剛型巡洋戦艦が翌年に就役(1番艦「金剛」のみイギリス建造)するなど、他国もこぞって超弩級戦艦を建造しました。なお、戦艦は「主力艦」とも呼ばれ、その保有数は強国の証明でした。

戦艦「続々建造」時代に終止符 そこで生まれた名戦艦たち

 歯止めがかかったのは、1923(大正12)年にワシントン海軍軍縮条約が締結されてからです。基準排水量3万5000トンまで、主砲口径が20.3cm砲以上、40.6cm砲以下の軍艦が「戦艦」という定義でした。第一次世界大戦で疲弊した各国にとって、戦艦の建造は大きな負担でした。新型の戦艦と巡洋戦艦計16隻を整備する「八八艦隊計画」を進めていた日本では、国家予算の半分が海軍費になったほどです。

 ワシントン海軍軍縮条約と、ロンドン海軍軍縮条約により、各国は戦艦建造が禁止されたため、既存艦の改装などで対応しました。1936(昭和11)年に、戦艦建造が解禁されたことで、各国は新世代の戦艦を建造し始めます。イギリスのキング・ジョージ5世級、アメリカのノースカロライナ級、フランスのリシュリュー級、日本の大和型、イタリアのヴィットリオ・ヴェネト級、ドイツのビスマルク級などです。

 これらは基準排水量3万5000トン程度の艦型でしたが、日本は軍縮条約を脱退前提で、大和型を設計していたため、基準排水量6万4000トン、46cm主砲9門と他国を圧倒する艦型で、史上最大最強の戦艦となりました。

 なお、日本が大和型の性能を秘匿したために、条約の「エスカレーター条項」が適用され、アメリカが4万5000トンの高速戦艦として建造したのがアイオワ級です。新規設計艦としては最後の戦艦であり、長砲身の40.6cm主砲9門、33ノット(61.1km/h)の高速など、優れた性能を有していました。

 その後、フランス海軍が第二次世界大戦で完成できなかった、リシュリュー級戦艦「ジャン・バール」を1955(昭和30)年に就役させ、最後の戦艦となります。 しかし、戦艦自体が主砲の届く30~40kmの範囲しか攻撃力がないのに、建造・維持費が高いことから、1960~70年代までに全て退役してしまいます。

 アメリカのアイオワ級戦艦のみが、ベトナム戦争に参加。1982(昭和57)年にミサイル搭載可能に改装され、湾岸戦争でも活躍。1992(平成4)年までに予備役となりました。トランプ大統領は、アイオワ級戦艦の復活を主張したこともある人物ですが、終わっていたはずの戦艦の歴史が、続くことになります。

 トランプ級戦艦は2030年代に就役する予定です。いつの時代も、戦艦は「最も卓越した攻撃力と防御力とを有する大型艦」であり、トランプ級は正しく現代の戦艦といえるでしょう。

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