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AIで航空機整備に「大きな変革」が!? そこで欠かせない”重要な視点”とは 米大手企業が日本に提案するソリューションをトップに独占取材(後編)

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航空機整備の分野でも欠かせないAI 今後の動向とは

 日本を取り巻く安全保障環境が大きく変化する中、すでに日本における防衛関連事業を展開してきた企業に加えて、新たに日本における事業拡大を模索する海外企業が増えてきています。航空機整備に関するアメリカの大手企業であり、ミッションの近代化と維持における重要な課題に対し、先端的なエンジニアリングと技術ソリューションを提供する「Amentum(アメンタム)」も、そのうちの一社です。今回、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は同社のミッションソリューション上級幹部であるジョー・ダナウェイ氏にインタビューする機会を得ました。

Large figure1 gallery7 無人航空機であるMQ-9「リーパー」の点検を行うアメリカ海兵隊の隊員。自衛隊でも派生機であるMQ-9B「シーガーディアン」の導入が決定している(画像:アメリカ海兵隊)。

 近年、あらゆる分野において導入が進められている「人工知能(AI)」。ダナウェイ氏によると、それは航空機整備の分野においても同様だといい、さらに今後は維持整備と近代化のあり方そのものをも変革させ得る存在になるといいます。

「ここ数年でAIが急速に進化し、多くの分野で導入が進んでいます。航空分野においてもAIは不可欠なツールとなりつつあります。特にMRO(Maintenance, Repair, Overhaul:整備・修理・オーバーホール)におけるデータの傾向分析ではAIの力が非常に大きく、将来的には新規プラットフォームだけでなく既存機材の寿命延長にも重要な役割を果たすと考えています。

 現時点でも、契約条件や業務範囲に合致するプログラムではAIを活用し、効率を高め、コスト削減につなげています。ただし現状では、機体側にセンサーやヘルスモニタリング機能、さらにオープンアーキテクチャが備わっていなければ、AIの恩恵を最大限に引き出すことはできません。設計思想がモジュール化され、ヘルスモニターから得られるデータを統合できるようになれば、さらに精度の高い『状態基準整備(Condition-Based Maintenance)』が実現します。これにより、従来では困難だった予測的整備へ移行するための基盤となります。

 つまり、AIを活用すれば、部品やシステムが『いつ故障するか』を事前に把握し、予測することができ、不要な定期点検を削減できるということです。これによって、作業時間・コスト・修理の負担を大幅に軽減でき、必要な時にだけ的確な整備を行うことが可能になります。従来のように『100時間飛行したら点検する』といった形式的なサイクルではなく、全飛行条件と飛行頻度において、機体に搭載された部品やシステムの使用状況といった個別要素を踏まえた本質的な整備が可能になるのです」

 そんなAIの導入に関して、航空機整備分野における特有の課題として「AIに対する信頼」が挙げられると、ダナウェイ氏は語ります。

「AIを航空機整備の分野に導入する上で、最も大きな要素は『信頼』です。私は長いキャリアの中で、航空機のOEMや、検査基準が正確に適用され、厳格に遵守されるよう尽力するエンジニアと密接に協力してきました。時折、『航空機を整備しすぎている(We over maintain the aircraft)』という声を耳にするのですが、これは私たちが安全第一の考え方を厳格に守っていることの現れです。一方で、AIの導入が進むことにより航空機を『必要な時に、必要な分だけ』整備する、というパラダイム転換が起こることになります。

 しかし、それを受け入れるにはAIが『このエンジンはあと100時間稼働できる』と示すデータを信じる覚悟が必要です。特に航空業界では、それは大きな変革です。もし自動車であれば、故障すれば路肩に停まれば済みます。しかし航空機ではそうはいきません。したがって、AIのデータ精度への信頼を築くには時間がかかりますが、定着すれば機体プラットフォームや運用ライフサイクルの維持整備のあり方を根本から変えることになるでしょう」

注目を集める無人航空機 有人機との「大きな違い」とは

 近年導入が進められているものといえばもう一つ、無人航空機(UAV)が挙げられます。ウクライナ戦争以降、日本を含めた各国で導入が急速に進められている無人航空機ですが、そのプラットフォームと部隊維持の双方において有人機とは大きな違いがあるとダナウェイ氏は説明します。

Large figure2 gallery8 アメンタム社のミッションソリューション上級幹部 であるジョー・ダナウェイ氏(稲葉義泰撮影)。

「ウクライナ戦争の影響もあり、近年ではFPV(First Person View)型の小型無人機が爆発的に普及しています。そのため、無人機と一口に言っても、FPVドローンのような手のひらサイズのものから、高高度を高速で飛行可能な高性能なものまで幅が非常に広い。単純な比較はできませんが、無人システムが大型化し、技術的にも高度化していくほど、整備や維持の面では有人機との共通点が増していきます。

 双方とも有人介入が必要ですが、当然大きな違いも存在します。有人機では、整備の対象は主に機体そのもの、搭載システム、動的部品、航空機の構造健全性などに限られます。しかし無人システムの場合は、機体のサイズや構造にかかわらず、プラットフォームだけでなく、管制ステーション、データリンク、通信ネットワークなど一連のシステム全体を維持する必要があるのです。つまり『プラットフォームそのもの』だけでなく、『それを飛ばすための環境全体』を維持することが求められるのです。

 したがって、機体単体ではなくシステム全体の維持整備(System-level Sustainment)という考え方が不可欠になります。これが有人機との最も大きな違いです」

 システム全体の維持が不可欠となると、気になるのはサイバーセキュリティです。UAVを含めた無人アセットの運用システムがサイバー攻撃を受ければ、通信システムがダウンしたり、あるいは運用システムを乗っ取られたりする危険性があります。じつは、アメンタムは航空機整備のみならず、サイバーセキュリティ分野でも存在感を示している企業です。そこで、無人アセットの維持整備とサイバーセキュリティの関係について、ダナウェイ氏に伺いました。

「おっしゃるように、今後はサイバーセキュリティを含めた多面的な要素が無人システム運用に絡んできます。たとえば、戦闘ヘリコプターのAH-64やF-16戦闘機を飛ばす際、サイバーセキュリティの関与は限定的です。というのも、これらは基本的に人が乗り込んで操縦し、自律的な運用が可能な『自己完結型(self-contained)』のシステムであり、外部からの干渉といえば電磁妨害(EMI:Electro-Magnetic Interference)程度だからです。

 しかし、無人アセットの場合、事情は大きく変わります。通信リンクや制御ネットワークに依存する無人プラットフォームは、サイバー攻撃の脅威に常時さらされることになります。したがって、AIとサイバー、両者を包括的に扱える企業こそが、この分野で優位に立つでしょう。そして、多層的な事業基盤を持つ当社は、すでにこれに対応可能な態勢を有しています」

 今後、日本の自衛隊においても無人アセットの導入が続々と予定されていますが、単にモノを導入するだけではなく、それをどのように維持し、どのように効率的に運用していくのかという視点も必要です。そこで、アメンタムが提供する各種ソリューションが、日本においても重要になっていくと、筆者(稲葉義泰:軍事ライター)は思います。

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