“犯人ネット晒し”は序の口!? 「鉄道vs銅線ケーブル窃盗団」許さん! 対策高度化も“いたちごっこ”の泥沼に
- 乗りものニュース |

欧州各地で鉄道の銅製ケーブルが盗まれ、列車の運行に影響が出る事態が相次いでいます。鉄道事業者はあらゆる手段を駆使して対策を進めていますが、犯行も“プロ集団化”が進んでおり、いたちごっこが続いています。
ケーブル盗難で「ユーロスター」もストップ
欧州各地で銅製ケーブルが盗まれ、電車が運休・大幅遅延する被害が続いています。
2010年、防犯カメラが捉えた犯行の様子。いとこ同士のトニー・プライスとテリー・プライスが銅線を盗んでいる(画像:ネットワーク・レール社)
直近では、ドーヴァー海峡をくぐるトンネルで英ロンドンと欧州大陸を結ぶ国際高速鉄道「ユーロスター」が被害に遭いました。2025年6月25日、ロンドンから海底トンネルを抜けたときの欧州大陸側の最初の停車駅であり、フランスの首都パリ、ベルギーの首都ブリュッセルへと分岐するターミナル駅のリールで、深夜のうちに約600mにわたって銅線が盗まれたのです。
このためユーロスターは始発から運休・遅延が続き、前日の人身事故の影響も残っていたため、数千人の乗客が巻き添えを食う大混乱となりました。15人のエンジニアがケーブルの修復作業に当たり、午後には修復工事は終わったものの、遅延は終日続きました。
5月も、類似の事件がスペインで発生しています。首都マドリードの南、トレド近郊で高速鉄道の銅線150mが盗まれ、1万人以上の客足に影響が出ました。
筆者(赤川薫:アーティスト・鉄道ジャーナリスト)の住む英国でも、2024年12月、北西部の街ボルトンでクリスマス休暇明けに出勤した職員が、10万ポンド(約2000万円)相当のケーブルが線路沿いから盗まれていることに気が付くという衝撃的な事件がありました。同路線は2022年から約2年間におよぶ電化工事を終えたばかりで、2025年1月1日から電化路線になるはずでした(ネットワーク・レール社による)。
英国・ケーブル窃盗団との20年越しの闘い
英国の鉄道の銅線窃盗は、実は20年以上前、2004年頃から増え始め(下院運輸委員会の発表資料による)、中国の台頭などで銅価格が歴史的高騰を記録した2011年度にピークを迎え、845件の盗難被害、盗難由来の列車の遅延は6000時間以上に達しました(ネットワーク・レール社による)。
このため、2010年代から様々な対策が取られてきました。まず、2011年には鉄道警察の中にケーブル窃盗専門チームが設けられました。線路沿いの監視カメラを増やしたり、犯罪抑止につながる情報提供者には1000ポンド(約20万円)の報奨金を提供したりという措置も取られています。
ネットワーク・レール社では、2011年から「セレクタDNA」というスプレーを同社のケーブルに塗布しています。スプレーした箇所をブルーライトで照らすと、一意の認識番号が浮かび上がる仕組みで、盗難ケーブルが金属回収業者に持ち込まれた時点で窃盗品だと分かるのです。また、ケーブルのそばにセレクタDNAの張り紙をすることで、窃盗団のやる気をそぐ効果も。
盗まれた金属を買い取る金属回収業者にまつわる法整備も2013年に行われました。金属を持ち込む人間の身分証明書の確認の厳格化や、現金取引の禁止、違反に対する罰金の増額などが盛り込まれたのです。
ケーブル泥棒の顔写真や氏名、刑期をネットワーク・レール社のサイトに晒(さら)す措置も取られています。例えば、2010年には、倉庫からケーブルのドラムを丸ごと4基、総額1万ポンド(約200万円)以上を盗んだ犯人、建設作業員のトニー・プライス(30)の写真と情報が掲示されています。
こうした努力が功を奏して、2013年には銅線窃盗による遅延が2011年の半分以下の2700時間になるなど(英紙ガーディアンによる)、一定の効果が得られていました。
振動を感知する最新ケーブルを開発
ところが近年、銅線窃盗に由来する鉄道遅延が再び増えてきているというのです(ネットワーク・レール社による)。
セレクタDNAのビーズを踏んだ靴底(画像:ネットワーク・レール社)
昨今の銅価格の高騰を受け、犯罪も組織化が進んでいます。現在、英国では60ほどの金属窃盗団が暗躍しているそうです。2021年3月にロンドン警視庁が金属窃盗団のメンバー20人を一斉に逮捕したところ、ロンドン近郊の金属窃盗が半減しました(英国金属リサイクル協会サイトより)。
英国でのケーブル泥棒の起訴率が低いことや、起訴されても刑罰が軽いことも、犯罪の抑止力があまりないことの一因だと問題視されています。
前述の、ネットワーク・レール社のサイトに顔写真などを掲載された窃盗犯は約200万円相当の盗難で「懲役8か月執行猶予2年、200時間の無給労働と、ネットワーク・レール社へ約50万円の賠償金の支払い」という判決です(ネットワーク・レール社のサイトによる)。
日本の山口県宇部市で2024年に銅製ケーブル323万円相当を盗んだ自動車販売業、堀江誠龍被告(22)に下された判決は、被害額に相当する金額を全額弁償したうえで「懲役3年、執行猶予5年」でした(NHKによる)。英国の方が日本に比べて窃盗犯にやや甘いといえるかもしれません。
盗難金属を買い取る側も、金属回収業者としての登録をやめ、廃棄物運搬業者免許の免許で営業することで厳格な法律をかいくぐっているようです(英国金属リサイクル協会サイトよる)。
英国内で盗難ケーブルを売りさばくのではなく、そのまま海外に輸出する犯罪組織も増えています。
こうした犯罪の巧妙化、組織化、グローバル化に対抗するため、対策も、また進化しています。
近年では見回りにドローンも導入されています。
また、2024年からは窃盗犯が通りそうなところに、踏みつけると靴底にセレクタDNAが塗布される仕組みの球状のカプセルをばら撒き、ブルーライトや警察犬で犯人を追跡することが可能になりました。
ケーブル自体も進化しています。ネットワーク・レール社では、2025年5月から、銅線から20m以内に侵入者があった場合、その位置を正確に探知できる仕組みが導入されました。不審者が歩いたり、地面を掘ったりすると、銅線とともに埋め込まれている光ファイバーケーブルがその振動を感知して緊急信号を送るという新しい技術です(フォーカス・センサーズ社サイトによる)。
銅価格高騰により犯罪が組織化し、それに対応して鉄道業界では対策に高予算を割かざる得なくなり、その盗難防止策を突破するために、より犯罪組織がプロ集団化する。いたちごっこは銅の価格高騰が続く限り終わりそうにありません。
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