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JR各社「インバウンド効果が過去最高」JR東日本だけが違う…なぜ? 「予言」の影響は本当か?

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  • 乗りものニュース
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7月の「予言」は影響したのか?

 インバウンドが好調です。日本政府観光局(JNTO)の統計によれば、2025年11月速報値は前年同月比10.4%増の約352万で、11月の過去最高を更新。1~11月の累計は3900万人を超えました。通年では初の4000万人超えが確実な状況です。

Large figure1 gallery3東海道新幹線(画像:写真AC)

 鉄道にも大きなインバウンド効果が出ています。特に東京・箱根・富士山・京都・大阪を巡る定番コース「ゴールデンルート」を形成する東海道新幹線は、いつ乗っても数多くの外国人旅行者を見かけます。

 JR東海は2025年度中間決算で、上期(4~10月)のインバウンド運輸収入を770億円と推定しており、前年同期の510億円から50.1%の大幅増となりました。上期の運輸収入は前年同期の6864億円から7854億円へ約14%増加しましたが、うち3%がインバウンド効果です。

 大阪・京都・奈良を擁するJR西日本も好調です。上期のインバウンド運輸収入は、大阪・関西万博関連需要を除いても前年同期比21.3%増の233億円。JR九州も前年同期比12.9%増の37億円となりました。

 一方、苦戦しているのがJR東日本です。上期のインバウンド運輸収入は278億円で、前年同期の256億円を上回ったものの、計画値の300億円に届きませんでした。

 同社は「7月の地震予言影響により、香港からのお客さまを中心にご利用が減少したため」と説明していますが、出回った「予言」は「日本列島の南の太平洋沿岸で東日本大震災の3倍の津波を伴う大災害が発生する」というもの。東日本に限って旅行者が減少したわけではなく、前述のようにJR東海、JR西日本は目立った影響がありませんでした。

 6・7月の香港からの旅行者は前年比3割以上の大幅な減少となりましたが、逆に言えば7割の人々はデマに踊らされなかったわけです。そもそもインバウンド全体に占める香港の割合は6%程度であり、「地震予言」だけに原因を求めることはできないでしょう。

 JR上場4社の鉄道運輸収入に占めるインバウンドの割合を比較すると、JR東海は9.8%(770億円/7853億円)、JR西日本は5.0%(233億円/4657億円)、JR九州は4.2%(35億円/836億円)。これに対してJR東日本は3.0%(278億円/9157億円)であり、規模の割にインバウンド収入が少ないことが分かります。

「地域性・国民性」により訪問先は様々

 前述のようにインバウンド人気は東京~大阪間に集中しています。JNTOの統計によれば、首都圏一都三県と近畿圏二府四県以外に年間訪問者数が100万人を超えるのは、北海道、山梨、長野、石川、静岡、岐阜、愛知、広島、福岡、大分、熊本、沖縄の12道県のみ。前述のゴールデンルートを中心に西日本に偏っていることが分かります。

 また、全体の3分の2を占める東アジア(韓国・中国・香港・台湾)に絞って都道府県別旅行者数の割合を見ると、中部・関西は中国、九州は韓国が多いなど、かなりの地域差があることが分かります。

 これに対して台湾人旅行者は様々な場所を訪れます。特に東北の訪問率が圧倒的に高く、岩手と山形では3分の2、宮城・秋田・福島では約半数を占めています。また北陸・信越や四国でも高い傾向を示しており、JR東日本のインバウンド収入に大きな貢献をしているのです。

 これには各国・地域ごとの旅行スタイルが反映されています。団体旅行が多い中国は欧米の旅行者と同様に定番のゴールデンコースが人気で、韓国は国内旅行感覚で距離的に近い九州を訪れます。一方、台湾人旅行者はリピーターが多いため、定番観光地だけでなく様々な地域を訪問しているのです。

 ただ、東北の外国人旅行者は総数が小さく、都道府県別ランキングでは宮城が23位、青森が29位ですが、それ以外は33~42位と低位にあります。台湾以外の旅行需要を開拓しなければ観光客は増えないでしょう。

 現在、高市首相の「存立危機事態」発言に反発する中国政府が「渡航自粛」を呼び掛けており、観光業にも影響が出始めています。2019年には日韓情勢の悪化で韓国人旅行者が前年比25.9%減少したこともありました。インバウンド需要は様々な外的要因に左右されるため、特定国への依存はリスクがあります。

「外国人旅行者」はざっくりとしたイメージで語られがちですが、実際には地域性、国民性が色濃く反映されています。誰に何を訴求するか、JR東日本に今、必要なのはターゲットを絞った地道な取り組みといえるでしょう。

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