『トップガンM』主役機「F/A」の意味 世界で主流の「マルチロール機」とは?
- 乗りものニュース |

ひと口に「戦闘機」といいますが、実は現代戦闘機で純粋に「戦闘機」としての任務だけをこなすものは少なくなり、全般的に「マルチロール機」化しているといえます。軍用機黎明期から現代への、マルチロール化の流れを追います。
答えからいえば「戦闘&攻撃」
2022年5月末に公開された映画『トップガン マーヴェリック』において、主人公たちが搭乗したF/A-18E/F「スーパーホーネット」という戦闘機は爆撃後、空戦を行っている描写などがありました。こうした空戦、爆撃、偵察など幅広い任務に対応する軍用機を「マルチロール機」といいます。実は2022年現在で「ジェット戦闘機」というと、多くの場合、このマルチロール機を指します。
米海軍空母「エンタープライズ(CVN65)」の近傍を飛行するF/A-18F「スーパーホーネット」。2012年撮影(画像:アメリカ海軍)。
サッカー用語で、複数ポジションをこなせる選手を「マルチロールプレイヤー」または略して「マルチプレイヤー」と呼びますが、マルチロール機という呼称が指す意味もそれとほぼ同じです。つまり、1機で複数の仕事をこなせる軍用機といった意味合いです。ビジネス用語でいうと「ジェネラリスト」、人材育成用語だと「横断型/融合型人材」といった、何でも屋的ポジションと考えれば分かりやすいかと思います。
100年以上前、第1次世界大戦に投入された航空機は、そこで目覚ましい進化をしました。最初は偵察のみでしたが、そのうちレンガや石、さらには爆発物を投下し、地上にいる敵兵士を攻撃するようになりました。こうした敵飛行機による偵察や爆撃を阻止するため、やがて飛行機に機関銃が取り付けられ迎撃にあたるようになります。そういった戦闘を繰り返していくうちに戦闘機、爆撃機、偵察機などの分類が確立されていきました。
増えすぎた軍用機の役割をなるべく兼任させたくて
戦間期から第2次世界大戦にかけて、攻撃機、雷撃機、急降下爆撃機、夜間戦闘機といったような、任務ごとの専門性を持たされた様々な軍用機が誕生し、「機種」はさらに細分化されていきます。
一方でこの大戦中には、あまりに増えた機種を統合しようという試みも見られました。まず、空母で運用されている艦上機の中で、魚雷攻撃を専門に行う雷撃機と爆弾攻撃を行う艦上爆撃機の統合が試みられ、日本海軍の「流星」やアメリカ海軍のA-1「スカイレイダー」が開発されます。
旧日本海軍の艦上攻撃機「流星」(画像:Unknown author、Public domain、via Wikimedia Commons)。
同じころ陸上機でも、新型戦闘機の投入により旧式化した戦闘機に爆弾やロケット弾を積んで戦闘攻撃機(戦闘爆撃機とも)化する試みが、連合、枢軸両陣営で試みられます。戦闘機用の兵装と攻撃機用の兵装を両方搭載できるため、地上攻撃を終えた後は空戦ができると考えたからです。ただ当時は、ピストン(レシプロ)エンジンを使うプロペラ機だったため出力に余裕が持てず、重い爆弾を抱えた的(まと)になる可能性が高いという問題がありました。
しかし第2次世界大戦も後期なると、2000馬力超えの出力の大きいエンジンも登場するようになり、1943(昭和18)年から登場したアメリカ陸軍航空軍のP-47「サンダーボルト」は、最新鋭戦闘機でありながら攻撃機並みの対地攻撃能力を備える、後世のマルチロール機に繋がる機体となります。
ジェット時代の到来でマルチロール機は完成形へ
戦後、ジェット機時代が到来すると、エンジンの出力は格段にあがり、ペイロードが増加しても速度や機動性などに満足な性能を発揮することが可能になります。さらにレーダーの発展により、昼夜天候問わず飛行できる「全天候戦闘機」が登場し、小型爆撃機の仕事だった地上攻撃任務を戦闘機に兼任させてはどうかというプランがアメリカで考えだされます。
ただ1960年代に登場した「戦闘爆撃機」と呼ばれるF-105「サンダーチーフ」やF-111「アードヴァーク」のようなジェット機は、今のマルチロール機に通ずるものはありますが、爆撃能力に主眼を置きすぎて肝心の空戦がイマイチという評価になってしまいます。
しかし60年代以降、陣営の東西を問わず、任務別にそれ専用の航空機を配備する金銭的余裕のある国は米ソのような超大国以外には存在せず、マルチロール機の研究は各国で進められました。
小松基地でシステムの動作チェック中のF-16「ファイティングファルコン」三沢空軍基地所属機。2014年撮影(画像:アメリカ空軍)。
そうしたなかで脚光を浴び、いまなお生産数を伸ばし続けているマルチロール機は、やはり開発力で一歩先んじるアメリカ製で、1978(昭和53)年に運用が開始されたF-16がそれになります。
F-16は当初、F-15のような大型の戦闘機に比べ安価に運用できる軽戦闘機というコンセプトでしたが、採用当初から無誘導爆弾などを搭載できる設計、すなわち対地攻撃能力を持っており、1984(昭和59)年に全天候対応の戦闘攻撃機となったC/D型へモデルチェンジすると、精密誘導爆弾や対レーダーミサイルの運用能力も獲得し、攻撃機としてもトップレベルの性能を持つマルチロール機となりました。
海軍の艦載機向けとしては、F/A-18「ホーネット」がこれまでの艦上戦闘機および攻撃機の任務を兼任する機体として登場し、『トップガン マーベリック』に登場するF/A-18E/F「スーパーホーネット」へ発展していきます。
世界中の戦闘機がマルチロール化
他の国では、たとえば1978(昭和53)年にフランスのダッソーが開発した「ミラージュ2000」が初飛行しました。こちらも、のちに空戦だけではなく、対地/対艦攻撃も可能なマルチロール機へと発展していきます。
サーブJAS 39C「グリペン」(Copyright SaabAB/Foto:Ramon Wenink)。
また、スウェーデンのサーブが開発し1996(平成8)年に運用が開始されたJAS 39「グリペン」は、比較的低価格でありながら制空戦闘、対地攻撃、偵察などを過不足なくこなすということで、スウェーデンだけでなく複数の国に採用されました。2022年現在、日本の航空自衛隊が保有する自国開発のF-2や、調達が進むF-35も、マルチロール機に分類されます。
もちろん、ひとつの機種に複数の任務を担当させることに、疑問の声もありました。そうしたなか1990(平成2)年に湾岸戦争が勃発すると、そこでマルチロール機の有用性が証明され、以来、現在にいたるまで運用、開発されている戦闘機のほとんどが、マルチロール機化しています。
疑問の声はいまだ根強く残るものの、各国の金銭的事情を考えると、コスト削減という観点からも、マルチロール機の開発、採用はまだ続きそうです。
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