「アジアン装甲車」なぜ台頭? 日欧米の撤退・ブランド消滅は“儲からない”から? ひっくり返りつつある市場
- 乗りものニュース |

主役はインドネシア製「装甲車」欧米メーカー不在の展示会
インドネシアの装甲車メーカー「PT SSE」(以下SSE)が、2025年11月10日から14日までタイのバンコク近郊で開催された防衛・セキュリティ展示会「ディフェンス&セキュリティ2025」に、四輪駆動軽装甲車「P2タイガー」を出展しました。同社に限らず、いまアジアでは新興国を中心に“新顔”の装甲車メーカーが勃興しつつあります。
インドネシアのSSEが製造する装甲車「P2タイガー」の装甲兵員輸送車(画像:SSE)
P2タイガーは陸上・航空自衛隊が運用している軽装甲機動車より大型の装輪装甲車で、最大10名(軽装甲機動車は最大5名)が搭乗できます。
SSEは日本では馴染みのないメーカーですが、インドネシア軍が使用しているパナール軽装甲車を後継する「P2 KM」などをインドネシア軍に供給しており、P2タイガーと同じ最大10名が搭乗可能な「P2 APC」は、スリランカに輸出されています。
P2タイガーはインドネシア軍への採用を狙って開発されたものではなく、輸出を想定して開発された車両です。このためNATO(北大西洋条約機構)が定めた防御基準を充たしており、ヨーロッパ企業が開発した兵装や対ドローンシステムなどの統合も容易に行うことができます。
SSEの目論見通りにP2タイガーが輸出市場で成功できるのかは、まだわかりませんが、これまで兵器の“輸入国”と見なされてきた国々の装甲車メーカーの勃興には、目を見張るものがあります。
ディフェンス&セキュリティの会場でも、インドネシアのSSEに加え、タイのチャイセリとタイ・ルン・ユニオンカー、UAE(アラブ首長国連邦)のカリダスの3社が装輪装甲車の実車を展示していました。模型の展示にまで幅を広げても、トルコのヌロルマキナ、マレーシアのMILDEFなどがあります。
他方、これらは新興国の企業ばかりで、これまで装輪装甲車市場を牽引してきた欧米やロシアのメーカーの姿を見ることはありませんでした。
“儲からない”から?
ドイツのラインメタルやフランスのネクスターなどの大手装甲車メーカーは、依然として装輪装甲車の生産を継続していますので、これらのメーカーがタイや、ディフェンス&セキュリティを視察するため代表団を送り込んでいた東南アジア諸国を、市場として重視していないのかもしれません。しかし、実のところ欧米の装甲車メーカーの数は少なくなっています。
日本のコマツが製造していた陸自の軽装甲気動車(画像:陸上自衛隊)
前に述べたようにアジア諸国やトルコなどのメーカーが台頭してきたため、2010年代後半からアジア諸国で開催される防衛装備展示会で、欧米装甲車メーカーの存在感は小さくなっているという印象を受けます。
アメリカとヨーロッパ諸国には冷戦時代、国営も含めて多数の装甲車メーカーが存在しました。しかし、そのメーカーの多くは冷戦終結後に装甲車部門の他社への売却、同業者同士の合併などにより、装甲車事業を行っている企業の数は減少しています。
イタリアのイベコは、イタリア陸軍などに採用された装輪自走砲「チェンタウロ」などを開発・生産した老舗企業ですが、2025年に防衛部門をイタリアの防衛大手レオナルドに、メイン事業の商用車部門はインドのタタグループにそれぞれ売却すると決定しています。売却完了後はイベコというブランドが消滅する見込みです。
日本でも、陸上自衛隊の装輪装甲車の開発・生産を行ってきた小松製作所が、装甲車の新規開発・生産事業から撤退しています。
小松製作所の撤退理由は明らかにされていませんが、装甲車の生産・開発は労働集約型産業(機械や設備よりも人間の労働力に依存する度合いが高い産業)の側面が強く、航空機や指揮統制システムのような「高付加価値商品」と見なされる防衛装備品に比べて大きな収益を上げることは困難なことから、より大きな収益を上げられる建設機械などの事業に経営資源を集中するためだとも言われています。
欧米で装甲車メーカーの統合や装甲車事業からの撤退が相次いでいるのは、この低収益性に加えて、少子化により労働力の確保が困難になりつつあることも影響しています。
“韓国に続け” アジア・中東メーカーが席巻する日
装甲車は航空機などに比べると参入へのハードルが低く、アジアやトルコ、中東のメーカーにとっては参入しやすい分野です。これらの国々は一様に工業国家への仲間入りを目指していますが、その国の防衛力強化にもつながる防衛装備品という製品の性質上、政府の支援を受けやすいという側面もあります。
マレーシアの装甲車メーカー、MILDEFが「ディフェンス&セキュリティ2025」に出展した「RIBAT」の模型(竹内 修撮影)
また、これらの国々は日本や欧米諸国に比べれば労働人口が多いので、労働集約型産業に対応しやすいという利点もありますし、まだ労働者の賃金が安価なため、それを価格競争力に反映させることもできます。
アジアのなかでも韓国は1970年代から兵器の輸出を行っていましたが、それは小規模なものでした。しかし1990年代末にドイツで開発された装甲車「TM-170」のライセンス生産品の輸出に成功してから四半世紀を経た現在、韓国は世界第10位(ストックホルム平和研究所2024年調べ)の兵器輸出国となっています。
韓国がそこまで上り詰めた要因の一つは、韓国政府の手厚い防衛産業の保護育成にあり、それが韓国の工業化を牽引したと考えられています。アジアや中東諸国の工業化を目指す国々が、韓国と同じ手法で工業化を推進していこうと考えるのは、当然の流れなのかもしれません。
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