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なぜ「酷道」は存在する? 走行リスク抱える一方“命綱”の役割も ダム建設で一新した例まで

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国の道なのに…「酷道」が生まれた背景

「国道」と聞けば、多くの人が整備された幹線道路を思い浮かべるでしょう。しかし、その看板を掲げながら、およそイメージとはかけ離れた道が存在します。

Large figure1 gallery7国道の標識が似合わない酷道(画像:写真AC)

 自動車1台がようやく通れるほどの極端な狭隘(きょうあい)区間、未舗装のダート路面、落石や崩落が頻発する急峻な山道。これらは、自動車愛好家などから国道を揶揄し、「酷道(こくどう)」と俗称されています。

 このような道が、なぜ県道や町村道になることなく法的に「国道」として存在するのでしょうか。その背景には、戦後の道路行政、特にふたつの大きな法改正と政治的判断が関わっています。

 ひとつは、1965(昭和40)年の道路法改正です。この時、それまでの「一級国道」と「二級国道」という明確な等級区分は廃止され、「一般国道」へと一元化されました。

 そして「酷道」誕生の決定打となったのが、1993(平成5)年に行われた国道の大量指定です。このとき、整備が不十分な多くの都道府県道や林道が、一斉に「国道」へと昇格しました。

 この背景には、地方自治体と国(当時の建設省)の「思惑の一致」があったとされています。地方自治体側には、道路整備の財源負担を軽減するため、国の補助金交付対象となる「国道」への昇格を望む強い動機がありました。

 いっぽう国側には、全国的な幹線道路網の「ミッシングリンク」を地図上で解消したいという意図があったといわれています。

 この結果、物理的な整備状況が「国道」の基準に達していない道路が、法的に「国道」として組み込まれました。

変わりゆく「酷道」国道418号の事例

 こうして国道の本数は一気に増えたものの、酷道区間の多くは交通量が極めて少ないため、改良工事に莫大な費用がかかる一方で、費用対効果が悪いことから、整備の優先順位が著しく低くならざるを得ませんでした。

Large figure2 gallery8奈良県生駒市にある国道308号。石畳の酷道だ(画像:PIXTA)

 結果として、「国道指定」という法的な地位と、「整備未了」という物理的な実態が乖離したまま、多くの「酷道」が固定化され、現在に至っているのです。

 行政が「酷道」を廃道にしないのは、マニアックな視点からでは見えにくい、地域社会と国土保全における重要な役割を担っているからです。

「酷道」と呼ばれる区間であっても、沿線に点在する集落にとっては、外部とつながる唯一の生活道路であるケースは稀ではありません。

 これら地域の住民にとって、「道がある」こと自体が、日常生活を維持するための不可欠な「生命線(ライフライン)」なのです。

 加えて、もうひとつの重要な側面が、災害時などにおける「代替路」としての潜在的な機能です。

 平時には交通量が皆無に等しい道でも、大地震や豪雨によって主要な幹線国道が寸断された場合、これら「酷道」が緊急車両などの通行ルートとして、それこそ最後の代替路となる可能性も含んでいます。

「酷道」の維持管理は、日常的な経済効率性では正当化が難しいかもしれませんが、「災害時の国土の冗長性」を確保するという観点で見ると、いわば国家の「保険」として捉えることもできます。

変わりゆく「酷道」の今:国道418号の事例

 なお、酷道と呼ばれながらも「快走路」へと変貌を遂げた道路もいくつか存在します。

Large figure3 gallery9国道418号「新旅足橋」(画像:写真AC)

 その代表的な例が「日本三大酷道」のひとつとされる国道418号です。

 岐阜県八百津町から恵那市にかけては、長らく「水没区間(通行不能区間)」を抱える「酷道の象徴」でした。

 しかし近年、この国道418号が劇的に生まれ変わっています。その最大の要因は、道路整備そのものではなく、「新丸山ダム建設事業」という、別の巨大公共事業でした。

 国土交通省が進めるこの事業は、ダム建設に伴い、将来ダム湖に水没する現道を、高規格な道路に付け替える事業です。これにより、同区間の所要時間は大幅に短縮される見込みです。

 これは、道路単体では決して捻出できなかったであろう莫大な建設費が、「ダム事業の一環」として投下されたことで、結果として「酷道が快走路へと変貌する」という現象になります。

 筆者(伊藤 進:ライター)は「酷道」を、単なる「ひどい道」ではなく、日本の地理的制約と、戦後から平成にかけての道路行政、すなわち法改正、政治的妥協、経済的合理性の追求が生んだ、「道の遺産」と呼ぶべき存在であると捉えています。

 その多くは今もなお沿線住民の「生命線」として地域社会を支え、あるいは国土強靱化の観点から「代替路」としての価値を秘めています。そのため、少しずつながら改良、架け替えは続けられています。

 よって、いまだ廃道区間を抱えたままの「酷道」は各地に存在していますが、減少傾向にあることは間違いありません。

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