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「飛行機が雷」浴びるとどうなる? スカイマーク機も遭遇…ド級の実験も行われた航空業界の“対策の進化”

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  • 乗りものニュース
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かつては「墜落事故」も

 国土交通省は2025年11月22日、羽田空港発新千歳空港行きスカイマーク705便(ボーイング737-800)が11月1日、飛行中に落雷に遭い、胴体部分に修理を要する損傷があったとして航空事故に認定しました。この事故では乗員と乗客にけがはありませんでしたが、航空機が飛行中に落雷を受けるとどのような影響があるのでしょうか。

Large figure1 gallery2スカイマークのボーイング737-800(乗りものニュース編集部撮影)。

 過去には、パンアメリカン航空214便のように落雷が引き金となって墜落した事故も起きています。この事故は1963年12月8日、プエルトリコのサン・ファンからメリーランド州ボルチモアに向かっていたパンアメリカン航空のボーイング707が落雷を受けた後に火災が発生して操縦不能に陥り墜落しました。この事故では乗員と乗客あわせて81人が亡くなりました。事故の原因は落雷により気化した燃料の一部が左翼の通気口から漏れて引火し、爆発と火災を起こし墜落したものと推定されました。

 しかしその後、同型機を用いて事故の検証が行われましたが、同じ現象を再現することはできなかったと発表されています。そのようななか事故を受けて、アメリカ連邦航空局(FAA)では再発防止策として、放電装置の増設を勧告する耐空性改善勧告を発出しました。この放電装置とは主翼や尾翼の先端近くの後縁に取り付けられた針状もしくは糸状の小さな突起です。

 1970年代に入ると航空機の新しい材料としてCFRP(炭素繊維強化プラスチック)などの複合材料や「フライ・バイ・ワイヤ」に代表される電子機器を用いて機体を制御する技術が普及します。NASA(アメリカ航空宇宙局)ではこうした新しい素材や電子装置に落雷が及ぼす影響を調査することになりました。

「ひたすら雷雲入れ!」NASAがやった驚愕の実験

 NASAではこの研究を「ストーム・ハザード・プログラム」と命名し、飛行中の航空機が直撃雷を受けた時のデータを収集することから始められました。そして本格的な実験としてF-106「デルタ・ダート」戦闘機を雷雲の中に突入させることで、飛行中に受ける直撃雷のデータを収集する実験が始まったのです。

 この実験は1980年から1986年にかけてオハイオ州クリーブランドにあるNASAのルイス・リサーチ・センターで行われ、実験機がアメリカ中西部の上空で高度3500フィート(1067m)から高度50000フィート(15240m)の範囲で雷雲に突入してデータの収集が行われました。実験に使われたNASA816号機(F-106B型戦闘機)は195回の飛行中に1496回雷雲に突入し714回の落雷を受けてデータを記録しました。

 こうした実験で、雷雲に入った際に最も落雷を受ける可能性がある機体の部分、落雷位置の集中度、落雷と空中の水滴密度と乱気流の関係、機上に搭載される雷雲探知装置の正確度、機体の表面による落雷の影響の受けやすさの差異なども調査されました。収集されたデータはその後の航空機の設計と開発に役立てられたことは言うまでもありません。

 貴重なデータを収集するために、果敢に雷雲突入飛行を実施したパイロットの勇気と文字通り体を張ってデータ収集を敢行したNASA816号機には敬意を表したいと思います。

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