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【大阪・関西万博】問題続出も大成功!? SNS「税金の無駄遣い」から一転「万博サイコー」…“異様な盛り上がり”を見せたワケ

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 大阪・関西万博が閉幕の日を迎え、巨大な「ミャクミャク像」の周辺で記念撮影する人々(2025年10月13日、時事通信フォト)
大阪・関西万博が閉幕の日を迎え、巨大な「ミャクミャク像」の周辺で記念撮影する人々(2025年10月13日、時事通信フォト)

 大阪市の人工島「夢洲」(ゆめしま)で、「いのち輝く未来社会のデザイン」をテーマに掲げて開催されていた「大阪・関西万博」が2025年10月13日、184日間の会期を終えて閉幕しました。今回の万博には、158の国・地域が参加。日本国際博覧会協会(万博協会)によると、4月13日から10月13日までの会期中の一般来場者数は2557万8986人だったということです。

 一方、大阪・関西万博を巡っては、会場建設費の上振れや会場の工事現場でメタンガスによる爆発火災が発生したことなどがメディアで報じられた影響で、SNS上では開幕前から「万博反対」「税金の無駄遣い」「危険」など、否定的な声が多く上がっていました。ところが、会期途中からは「万博サイコー」「万博大成功」など、肯定的な声が上がるようになり、終盤には「万博ロス」という言葉が登場。万博の閉幕を惜しむ声が多く上がりました。

 こうした万博に対する世間の風向きの変化について、評論家の真鍋厚さんは「異様な盛り上がり」だったと述べます。前評判を覆すような形で今回の万博が盛り上がった背景について、真鍋さんが論じます。

入場券の販売枚数が1800万枚を超えた8月にネガティブなムードが一変

 大阪・関西万博は、良くも悪くも非常に注目を集めたイベントだったと言えます。開幕前は、万博のシンボルである「大屋根リング」が、巨額の建設費をかけながら、閉幕後に解体されるとして疑問視されたほか、2024年3月には会場の工事現場でメタンガスによる爆発火災が発生。万博公式キャラクターの「ミャクミャク」に対しては、SNS上で「不気味」「気持ち悪い」などの声が上がるなど、評判はいまいちでした。

 また、開幕後もパビリオンの一部が完成しておらず、海外パビリオン建設を巡る工事費の未払い問題が判明。会場では、引き続き爆発する恐れがある濃度のメタンガスが検出されて爆発事故の危険性が叫ばれたほか、会場南部の「ウォータープラザ」の海水からは指針値の約20倍のレジオネラ属菌が検出され、水上ショーが一時中止になるなど、安全性の面でもネガティブな話題に事欠きませんでした。

 飲食店やパビリオンについては、一杯2000円のラーメンなど、飲食店のメニューが「高すぎる」といった批判が続出。特に、SNS上では「英国パビリオンの5000円のアフタヌーンティーセットの内容が価格に見合っていない」という内容の投稿が話題となりました。メニューにはスコーン2個と書かれていたのに、実際に提供されたのは1個だけで、紅茶が紙コップにティーバッグを入れたものだったとして大炎上。駐日英国大使館が謝罪する事態となりました。

 会期中は、このようにさまざまなトラブルに見舞われ、成功が危ぶまれていましたが、日本国際博覧会協会が8月に「黒字化」を発表後、一気にムードが変わりました。同協会によると、8月8日時点で入場券の販売が累計で1809万5703枚に上り、万博協会や政府が決めた運営費が黒字になる損益分岐点である約1800万枚の水準に達したのです。

 協会の発表以前から、実際に万博を訪れた人々の口コミが増加し、ポジティブな話題が少しずつ広まり、万博の印象はかなり改善されていました。そのため、「黒字化」の発表がその決定打になったことは想像に難くありません。当初、マスコミがネガティブキャンペーンのような報道を続けていたことも影響して、「SNSで発信されるリアルな生の声」により注目が集まったとも言えます。加えて、「黒字化」の発表は、赤字の可能性を強調していたマスコミを批判する材料にもなりました。

 そもそも、なぜ、私たちはネガティブ、ポジティブを問わず、万博に対して何かしらの反応を示さずにはいられないのでしょうか。それは万博が良くも悪くも「わたしたち意識」を作り出す「共通言語」になってしまったからだと思います。知らない者同士が一緒に盛り上がれる“お祭り”のようなものになっていたのです。

 その意味において、真夏の珍事である「オールナイト万博」は、お祭りの中のお祭りと言えるものでした。このオールナイト万博は、8月13日の夜に大阪メトロ中央線のコスモスクエア駅と大阪港駅の間で停電が発生したことに端を発したものです。この停電により約3万人の帰宅困難者が発生し、体調不良や熱中症の疑いで30人以上が救急搬送され、危機管理やサポート体制を問題視する声が相次ぎました。

 しかし、そんな大変な状況にもかかわらず、この騒動で足止めを食らった人々の一部がライブカメラの前で体操や踊りを披露したことなどが話題となり、「オールナイト万博」がXでトレンド入りしました。それに便乗した関係者などが好意的なポストをしたことには、不快感を示す声が上がりましたが、基本的にオールナイト万博は“お祭り”として消費されたのでした。

 ポーランド出身の社会学者のジグムント・バウマンは、個人化した不安定な世界で共同性を紡ごうとする人々を「劇場の観客」になぞらえましたが、まさに万博こそが「劇場」として機能したのです。バウマンは、「劇場に集まる観客を、劇場の外にいるときとは比べものにならない均一な集団に変える」と述べ、「公演中、すべての目、全員の注目は舞台に注がれる。喜びに悲しみ、笑いに沈黙、拍手喝采、称賛の叫び、驚きに息をのむ状況は、まるで台本に書きこまれ、指示されているかのように一斉に起こる」と主張しました(『リキッド・モダニティ 液状化する社会』森田典正訳、大月書店)。

 SNSでの炎上も含めて同じ物事で簡単につながって熱狂できること、それで得られる連帯感、一体感のようなものが大きな魅力になっているのです。この期間限定とも言える「わたしたち意識」をバウマンは「クローク型共同体」と呼びました。「その間、人々の他の関心(彼らの統一でなく、分離の原因となる)は一時的に棚上げされ、後回しにされ、あるいは、完全に放棄される」「最後の幕が降りると、観客たちはクロークから預けたものを受け取り、コートを着てそれぞれの日常の役割に戻り、数分後には、数時間前に出てきた町の雑踏の中へ消えていく」と(同上)。

 当初、評判が悪かった公式キャラクターのミャクミャクが急速に人気を獲得し、来場者によるSNSの投稿から各国のパビリオンが再評価され、万博を効率良く楽しむ「攻略法」の共有と実践が大流行しました。実はこの展開は、新型コロナウイルスの流行下で開催された2021年の東京五輪とそっくりなのです。五輪開催直前の世論調査で約8割が「開催すべきでない」と回答しましたが、メダルラッシュが報じられ始めると礼賛一色に覆い尽くされたからです。

 空気に流されやすいと言えばそれまでかもしれませんが、それ以上に国民が手っ取り早く盛り上がれるイベントについて、潜在的なニーズが相当高かったのではないかと思われます。長期停滞の真っただ中で、賃金の低迷と物価高騰で先行き不透明な現状に誰もが不安と不満を抱えています。要するに、暗い未来ばかりを想起させられる世相に嫌気が差しているからこそ、「わたしたち意識」を刺激し、かつ強固にしてくれる国民的コンテンツで気分を上げようとするのです。

 そもそも五輪や万博は、その性質上、都市開発などが絡む大規模な公共事業という側面が非常に強く、究極的にはもうけを度外視した国威発揚的なイベントです。しかし、今は高度経済成長期ではなく、低成長時代です。しかも、「演目が作り出す共通の幻想は、公演の興奮が冷めると雲散霧消する」(同上)ものでしかありません。東京五輪のときもそうですが、イベントは必ず終わりを迎えます。祭りの後には、往々にして虚無感を伴います。

 結局のところ、万博を惜しむ声が多いのは、低成長時代における色あせた現実を忘れさせてくれる万華鏡としての役目を担っていたからだと思います。このような国民的コンテンツが切実に必要とされている遠因が、相対的な地位の低下で「貧しくなった日本」にあるとすれば、私たちはその事実にこそ目を向ける必要があるのかもしれません。

評論家、著述家 真鍋厚

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