芸人“闇営業”問題、吉本経営陣の処分「減俸50%を1年間」は重い? それとも軽い?
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吉本興業所属芸人による闇営業問題で、同社の岡本昭彦社長が7月22日に記者会見、大崎洋会長とともに、今回の問題の責任を取って50%の減俸を1年間続けると明らかにしました。企業で不祥事が起きたとき、経営陣の責任の取り方としては、引責辞任や給料の減額があります。一般社員の減給は労働基準法で限度額が規定されていますが、経営陣など役員は同法の対象外で、何を基準に減俸額が決まるのかはっきりしません。
今回の吉本興業の減俸処分は、重いのでしょうか、あるいは軽いのでしょうか。企業法務や労働関係の法律に詳しい、グラディアトル法律事務所の刈谷龍太弁護士に聞きました。
法的規制とは無関係に減額か
Q.経営陣の減俸額は、誰が何を基準にして決めるのでしょうか。経営陣自ら決めることもあるのですか。
刈谷さん「経営陣(会社法上の取締役)の報酬は、定款あるいは株主総会の決議で定めるとされています(会社法361条)。報酬額は、会社と取締役の間の委任契約となり(会社法330条、民法648条)、取締役を退任するまで継続します。そのため、取締役の報酬は、定款あるいは株主総会の決議で定められると、決まった報酬が払われることが保証されます。
しかし、該当する取締役の同意がある場合や、委任契約や社内規定に減額の定めがある場合は、報酬の減額を自ら決めることも可能になります。ただ今回、吉本興業の会長と社長が『減俸50%を1年間』と決めたのは、会社として決定したというよりは自ら減俸を申し出たケースなので、こうした法的規制に服することなく減額できたのではないでしょうか」
Q.さまざまな不祥事があり単純に比較できませんが、企業で不祥事が発生し、取締役が減俸という責任の取り方をするとき、どれくらいの減俸額(割合)が一般的なのでしょうか。事例も含めて教えてください。
刈谷さん「それぞれの企業によって不祥事の種類や規模は異なりますが、一般的に減額の割合は10~30%、減額期間は2~3カ月の企業が多いです。下記は、直近1年で報道された大手企業の減額事例の一部です」
【大手住宅メーカー】
防火安全性の基準を満たしていない賃貸住宅が見つかるなどの相次ぐ不祥事が発生。取締役の賞与を一律2割減額、取締役の報酬を2カ月間、1~2割削減。
【大手私鉄の子会社】
社員がJRの発券業務を悪用して団体旅行で不正乗車を繰り返していた問題。社長の役員報酬を3カ月間、月額30%を減額するなど、役員7人を処分。
【大手証券会社】
元社員が関与したとされるインサイダー取引事件に関し、管理責任を問われる。社長と会長の役員報酬の20%を2カ月減額、役員2人も報酬減額。
【大手航空会社】
副操縦士の酩酊(めいてい)事件で、代表取締役社長は月額報酬20%減を3カ月間、取締役専務執行役員運航本部長も月額報酬10%減を3カ月間。
「50%の減俸を1年間」は妥当?
Q.今回の不祥事では「50%の減俸を1年間」ということですが、この減俸額は妥当なものなのでしょうか。
刈谷さん「一般的な基準からすると、パーセンテージだけ見れば減俸の中では重い処分といえると思いますが、今回のケースでは、一体何に対する責任を取って減俸としたのか、はっきりしない部分があると思います。従業員である芸人が反社会的勢力とつながりがあるという疑惑が生じたことについて『会社の代表者が責任を負った』ということに過ぎないのか、それとも、真実を話したいという芸人に圧力をかけて、行動の自由を阻害したという疑いに対して『自分自身が責任を取った』のかということです。
前者の意味であれば重たい処分といえると思いますが、後者の場合は重い処分といえるでしょうか。会社は何が悪かったのか、全て会社が悪かったのか。謝罪の意思はあったと思いますが、会見ではその辺りがぼやけていたという印象です」
Q.経営陣が減俸となると、本人は自らの身を切り、責任を取ったという意識が強いと思います。しかし、世間から見れば、給与明細を見られるわけでもなく、本当に減俸をしているのか分かりません。減俸は、世間を納得させる手法として適しているのでしょうか。
刈谷さん「上場企業を含む会社法上の公開会社は、役員報酬の開示が義務付けられているので(会社法施行規則121条4号)、減額していないにもかかわらず減額しているとごまかすのは難しいと思われます。
また、非上場の会社でも報酬に関して税務会計上の申告は必要なため、世間に公表したことと異なる報酬であれば、申告内容に食い違いが出てきます。そのため、結局減俸していないことが明らかになったときのことを考えれば、大々的に発表しておいて減俸していなかったということは考えにくいです。ただ、やはり、世間一般に広く知られるわけではないので、責任の取り方として効果的かと言われると疑問です。他に方法がないのかもしれません」
Q.減俸で責任を取っていると世間に思わせる方法は。
刈谷さん「効果に疑問が残るとはいえ、会見をして公表する以上に、責任を取っていることを広く世間に知らしめる必要まではないと思います。例えば、給与明細を公表することなどが考えられますが、あえて、そのようなことをする必要まではないと思われますし、公表したこと自体をたたく人間も少なからず存在するでしょう。
さらに、給与明細が公表される1年後となれば、もはや世間の話題は違うことに注目が移っている可能性もあるので、企業の危機管理手法としてそのような方法を取ることは考えられません。今回の会見で納得できないという人は、減俸という処分が本当かうそかという話ではなく、単に『それだけか』という内容の重さに着目しているのではないでしょうか。その意味でも、何に対して責任を取るのかということを、しっかりと明確にしておく必要があったと個人的には思っています」
オトナンサー編集部
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