「陸の孤島と化した被災地に自衛隊がスーパーメカですぐ来てくれる」という幻想 琵琶湖の訓練で現実を見た
- 乗りものニュース |
能登半島地震では、「陸の孤島」と化した被災地域への救助活動が難航しました。それから1年後、琵琶湖西岸が被災地域となったという想定で、陸上自衛隊が「南海レスキュー2024」を実施。ここも有事の際は陸の孤島と化す可能性があります。
「陸の孤島」へ向かうのは自衛隊でも難しい
イギリスのテレビ人形劇『サンダーバード』は、事故や災害に対して様々な「夢のスーパーメカ」を駆使して救助活動するSF映画の名作です。現場にはまずサンダーバード1号が駆けつけて、状況確認と情報共有を行います。まさに偵察機の役割です。
物資積載地点である小松浜で準備中の水際地雷敷設車。この大きな車体が水際に入れる場所は限られる(月刊PANZER編集部撮影)
続いてサンダーバード2号が必要なメカを現場に運んで救助に当たります。輸送機の役割です。この作品は1965(昭和40)年に製作されましたが、活躍するスーパーメカは当時最新の特撮技術が用いられており、独特の迫力とリアリティゆえに今でもワクワクさせられます。
『サンダーバード』はフィクションですが、スーパーメカを駆使して災害救援する実際の組織のひとつが自衛隊です。自衛隊はヘリコプターやチルトローター機、ホーバークラフト、水陸両用車から野外炊具や野外入浴セットまで、様々な装備品を保有しており、災害時は役に立ちそうです。
2024年の元日を襲った能登半島地震では、能登半島の地勢から被災地の多くが孤立して「陸の孤島」となりました。その救助活動をめぐっては、自衛隊の装備品が有効活用されていない、初動が遅い、投入数が少ないという論調が1年経っても相変わらず聞こえてきます。
当然、検証は必要なのですが、そもそも陸の孤島という言葉が意味するところは何でしょうか。サンダーバードのようなスーパーメカがあれば解決してくれるのでしょうか。
琵琶湖西側の地域が孤立した想定で訓練
南海トラフ地震にも関心が集まるなか、2025年1月に陸上自衛隊中部方面隊災害対処実動訓練「南海レスキュー2024」が実施されました。目的は、孤立地域における発災直後(発災~72時間想定)の初動対処を焦点とした実動訓練。つまり陸の孤島をいかに助けるかに焦点が当てられたのです。
地雷敷設装置を外した水際地雷敷設車。輸送車ではないので物資輸送に使い勝手が良いとはいえない(月刊PANZER編集部撮影)
その一場面が94式水際地雷敷設車による物資輸送でした。この装備は海岸線で敵の上陸を妨害する水際地雷(機雷)敷設する水陸両用車ですが、東日本大震災で救助のため出動した実績もあります。
本訓練では被災と雪害によって滋賀県湖西地域の高島市が孤立したという想定で、病院に必要な物資を琵琶湖経由で運ぶ任務を担いました。高島市は西側を山地、東側を琵琶湖に囲まれており、孤立する可能性がある地勢でもあります。
道路が不通となれば、空路か海路(今回の場合は琵琶湖)からアクセスするしかありません。能登半島地震ではヘリコプターや海上自衛隊のホーバークラフト(LCAC)が活躍しました。水陸両用車もこうした場面で使えそうです。
大きな水陸両用車が人員や物資を載せて、へん水(進水)や上陸するシーンだけ見ていれば迫力があり使えそうな気がします。しかし大きな水陸両用車がへん水できる場所や上陸する場所は限られます。水陸両用だからといってどこでも走り回れるわけではありません。入念な事前準備と調整が必要になります。
実際の地雷敷設任務でも、ダイバーが先行偵察して水路や上陸できる場所を確認し、地形や気象状況を見極めなければなりません。さらに、へん水地域や上陸地域には、進路標識の設置やスタック防止措置などいくつもの事前作業が必要になります。災害派遣でも基本手順は変わりません。
自衛隊の本分は外敵から国土を防衛すること
水際地雷敷設車は第304水際障害中隊所属で和歌山県日高郡美浜町の和歌山駐屯地に所在しており、この訓練のため滋賀県高島市まで約200kmを自走してきたのです。現場に着くまでには時間がかかります。
水際地雷敷設車による物資輸送経路図(画像:中部方面隊総監部資料)
また、自衛隊の行動にはすべて法的根拠が必要になることも忘れてはいけません。知事からの災害派遣要請があって初めて実動でき、地方行政機関はもちろんのこと、湖畔の各権利関係者との事前調整も必要になります。勝手に湖畔に乗り入れることは許されません。これら条件が整わなければ、せっかくの水陸両用車も使えないことがあり得るのです。
そもそも、自衛隊の本分は外敵から国土を防衛することにあり、“スーパーメカ”は全て兵器であって、救助器材ではありません。水陸両用車もその名の通り水際地雷を敷設するのが目的で、地雷敷設装置を取り払って簡易的に荷台を設けただけなので、物資輸送に使い勝手が良いとはいえません。
『サンダーバード』では、1号の偵察・情報共有から、コンテナ交換シーンが印象的な2号のスーパーメカの選定、輸送、現場作業のストーリー仕立てになっていますが、現実はもう少し複雑です。必要な物を必要な時に必要なだけ、と言葉にするのは簡単ですが、これこそ軍事の要諦であり最も難しいことでもあるのです。
自衛隊の装備品カタログを眺めて災害救助シーンを妄想するのは勝手ですが、装備のカタログスペックと現場で運用する制約とを整合させるのは大変な作業です。2024年1月2日に出動した1000人の自衛隊員は、本当に遅くて少ない人数だったのでしょうか。
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