戦闘機も装甲車も「タダであげるよ!その代わり……ニヤニヤ」 兵器の“無償譲渡”そのウラにある戦略
- 乗りものニュース |

「タダ同然」でもポーランドは即決せず
2025年12月3日、ポーランドのコシニャク・カミシュ副首相兼国防相が、アメリカが同国に対して「ストライカー」装輪装甲車をほぼ無償で譲渡(正確には約250両を1ドルで売却)する提案をしたと明らかにしました。そのウラには、どのような意図があるのでしょうか。
アメリカ陸軍のストライカー装甲兵員輸送車(画像:アメリカ国防省)
ポーランド陸軍は2015年12月現在、同国が社会主義陣営に属していた頃にソ連から導入した「BMP-1」装軌式歩兵戦闘車、陸上自衛隊が導入を進めている装輪装甲車「AMV XP」の原型である「AMV」(ポーランド陸軍での呼称はロソマク)、国産の新型装軌式歩兵戦闘車「ボルスク」、3種類の装甲車を運用しています。
このうち冷戦時代に導入されたBMP-1は老朽化が進んでいるため、ボルスクでの更新が計画されていますが、ボルスクの生産が想定通りに進んでいないため、2030年のボルスクによるBMP-1の更新完了は困難になりつつあり、ポーランド陸軍は中古ストライカーの導入を望んでいるようです。
アメリカがタダ同然の価格でストライカーの譲渡を提案したとはいえ、実際に導入した場合、オーバーホールや運用インフラの整備などにコストがかかりますし、そのコストがボルスクの導入の足かせになる可能性もあることから、ポーランド政府は今のところ意志決定には至っていません。
「だって、いっぱいあるんだもん…」
アメリカが大盤振る舞いをするのは珍しいことではなく、過去には「M1117」装輪装甲車を1000両以上ギリシャに無償譲渡していますし、対テロ戦などの非正規戦が盛んだった時期に緊急大量調達した対地雷装甲車も、複数の国へ無償、または破格の安値で譲渡されています。
ストライカーは非正規戦が盛んだった2000年代前半、装軌式車両に比べて重量が軽い装輪装甲車を中核に据えて、船舶だけでなく輸送機でも緊急展開できる「ストライカー旅団戦闘団」のコンセプトを実現するために開発・生産されました。
アメリカ軍は依然として武装勢力などを相手とした非正規戦も行っていますので、ストライカーが完全に無用になったわけではないのですが、現在のアメリカ軍は非正規戦から、国家対国家の正規戦をにらんだ体制にシフトしていますので、派生型も合わせれば4000両以上が導入されたストライカーは、さすがに数が多すぎるのです。
「タダでいいから!」は当然の話?
一般的に不要になった防衛装備品は予備として保管するか、スクラップとして廃棄されるのですが、いずれにせよ大きなコストを必要とします。そのコストは国防費から捻出されますし、その分だけ新装備の導入コストや重要装備の運用コストにしわ寄せが来るわけですから、それなら他国へタダ同然で売ってしまえばよいと考えるのは当然と言えば当然な話です。
もう一つ、アメリカが防衛装備品を無償または破格の安値で譲渡して同盟国や友好国の防衛力を強化することには、その国の防衛に係るアメリカ軍の負担を減らしたいという狙いもあります。
翻って、日本はフィリピンに海上自衛隊が運用していた「TC-90」練習機(フィリピン海軍は洋上哨戒機として使用)を無償貸与・譲渡しています。これはフィリピンの洋上哨戒能力を強化することで、日本にとって生命線であるインド太平洋の安定を図ることを狙ってのことです。
ドイツは東西ドイツの統一後、旧東ドイツ軍が使用していた「MiG-29」戦闘機を、一説によれば1機1ユーロの破格値でポーランドに譲渡しています。これも不要になった防衛装備品をポーランドに譲渡することで同国の防衛力を強化し、自国の防衛費を使うことなく、最大の軍事的脅威であるロシアに対する防衛力を高めることが狙いでした。
そのポーランドは、ドイツからタダ同然で譲渡された機体を含めてMiG-29を14機運用していますが、後継機のF-35AやFA-50の数が揃ってきたことから、ウクライナにMiG-29のさらなる無償譲渡を持ちかけていると報じられています。
今回は「条件付きタダ」 ウクライナ躊躇か
ウクライナ空軍はロシアとの開戦以降、これまでもポーランドからMiG-29の供与を受けてきました。オランダなどから譲渡されたF-16や、フランスから譲渡されたミラージュ2000も運用していますが、2024年の時点で45機が運用されているMiG-29は、数の上では依然として主力戦闘機の座を占めています。
デジタル迷彩が特徴的なウクライナ空軍のMiG-29(画像:ウクライナ国防省)
今のところ終わりの見えないロシアとの戦いで、おそらくMiG-29を消耗しているウクライナ空軍にとって、ポーランドが持ち掛けたMiG-29の無償譲渡はありがたい話のはずですが、今回の追加譲渡は様相が異なります。
今回も前回(2024年)と同様の無償譲渡になるものと見られていましたが、ポーランドはMiG-29を「無償」で譲渡する代わりに、ウクライナが持つUAS(無人航空機システム)とミサイルの技術を求めています。ウクライナはMiG-29に虎の子とでも言うべきUASとミサイルの技術と引き換えにする価値があるのかを見極める必要があるとして、現時点では態度を保留しています。
ポーランドとしては、不要になったMIG-29の保管や廃棄コストを節約して他の防衛装備品の導入や運用コストに充て、かつウクライナが実戦で得たUASとミサイルの技術を得ることで、同国にとっても最大の軍事的脅威であるロシアに対する防衛力を高めたいという思惑があるわけです。シビアな話ではありますが、合理的な考えであることも確かだと思います。
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