物流の人手不足は「インフラ投資が足りない」から! 大量輸送をもっと使え! 「民間に投げっぱなし」を変えるための“提言”【物流と鉄道“失われた30年”後編】
- 乗りものニュース |

人手不足が深刻化し、貨物量自体は微減を続ける日本。これは政策の限界、さらには「インフラ投資の不足」としての結果という側面があります。3回の連載の仕上げとして、日本が次の時代を目指すうえでの政策と投資の方向性を提言します。
民営化を進めてきた日本の「歪み」
国内物流の「失われた30年」の原因は、「コンテナ革命」への対応と政策にあったのではと、欧米の規制緩和について前編・中編の記事で触れました。一方、日本は1987年の国鉄改革で分割民営化が行われましたが、従来通りの「規模の経済」理論に基づく自動車・鉄道それぞれ縦割りの参入障壁や、電気やガスの料金と同様の“総括原価方式”などの価格統制がほぼ残りました。
世界最大の貨物量を誇る上海のコンテナターミナル(画像:PIXTA)。
これまでの鉄道政策では“民営化”が効率化の源とされ、インフラへの投資も民間に委ねられました。しかし、物流インフラとしては、既存のインフラを置き換えるまでの投資は民間ではなかなかできず投資不足に陥り、一方で公的投資が入る道路をつかった輸送は労働集約的であるため、人手不足に陥っているのが「2024年問題」などの物流危機です。
人手不足を起こさずに貨物量が増えている欧米に対し、国内全体の物流は微減状態でJR貨物の輸送量は半減しています。さらに、民営化し上場したJRの株式は外資による取得が進みました。
また、都市部などでの“儲かる事業”の収益による内部移転でローカル路線を支えているバス交通で、クリームスキミング(ある分野の利潤の多い部分にのみ参入すること≒ケーキから一番甘いクリームだけをすくい取ること)のような破壊的競争が起きた時、独禁法が適用されませんでした。
地方の鉄道については、明治時代に成立し現在も残っている鉄道営業法が想定している地域独占は、高度成長期以降に自動車との競争に代わりましたが、イコールフッティング政策(競争相手が対等な立場で競えるよう条件を同一にすること)も財源面が弱いままです。
30年前、欧米と日本の鉄道政策はほぼ同じでしたが、今は根拠となる経済学の理論や市場の捉え方、そして結果に大きな隔たりがあります。
明治以来の日本の鉄道は、民間資本による開業、国有化、公社化、分割民営化と、およそ40年ごとに見直されています。日本経済が豊かになり国民が幸せになるには、この隔たりに注目した上で次の40年を見通すべきではないでしょうか。
まずは「鉄道」と「港」をつなげよう
日本の鉄道や物流が“次の時代”を目指すうえで、政策や港湾配置の構造を変えることが抜本的には必要と思われますが、まずは、輸送単位が小さく人手がかかるトラック輸送を鉄道輸送に切り替えるモーダルシフトで労働生産性を上げることが考えられます。
東京港のコンテナターミナル(画像:PIXTA)。
モーダルシフトはもちろん国の対策でも謳われていますが、民間投資への“補助”に留まっていますので、ここにインフラ投資を行うのです。
前編・中編の記事でも触れましたが、日本だけが大量輸送機関の船(港)と鉄道の接続が切れており、ボトルネックになっています。欧米のインターモーダルでは船から鉄道といったモード間の結節で大量の貨物を徹底した省人化設備で繋いでいます。こうした「Sea & Rail」インフラに投資すると、最も効率よく輸送の労働生産性を高められると考えられます。
具体的にはコンテナの集積港に鉄道貨車への積み込み施設を設け、ショートドレージ(短距離のコンテナ陸上輸送)を解消する「オンドックレール」を設置し、後背地への輸送を鉄道に切り替えることが考えられます。
現在は全国に分散している国際コンテナ港湾が、もし集約していけば、オンドックレールの重要度はさらに高まります。固定費率が高い鉄道輸送は貨物量が増えるほど生産性が上がるので、鉄道に貨物を集中させることで全体の輸送コストを下げつつ、人手不足を解消できるはずです。
また、中国の陸港や欧米のコンテナ駅では輸出入の通関が行え、コンテナメンテナンスの設備もあります。空になったコンテナの回送先を港から内陸のコンテナ駅にして距離を短縮することも考えられます。こうして港で止まっているコンテナ革命を内陸に延長していくことで労働生産性を上げていくのです。
いずれにしても、物流全体で労働生産性を上げるインフラに投資し資本をふやさなければ労働者は多く必要なままで、人手不足は根本的に解決しないし、物流コストは下がらないことになります。実は港と鉄道の結節は実は新しいことでもなんでもなく、明治時代、日本の鉄道は港と港、港から都市をつなぐことを目的として建設されました。先人の知恵により、日本の鉄道網はそもそも港と効率よく繋がるようにできているのです。
「運送会社にやらせておけばいい」は自滅の道 輸送こそが付加価値の源泉
このほか、日本の物流が労働集約に留まっている大きな原因として、輸送はコストセンター(コストだけが集計され、利益は集計されない部門)という捉え方も大きく影響しています。ただコストさえ下げれば良い、深く考えず運送企業に押し付ければ良いという捉え方です。
荷待ちトラックのイメージ(画像:PIXTA)。
これですと、運転手は荷卸しをして次の配送先に行きたくとも、荷主が荷卸しを要求すると運転手もトラックも次に行けず、労働生産性がさらに下がってしまいます。それもフォークリフトではなくバラ積みの手積み手卸しの場合すらあります。
このような生産性の低さは結局、運賃や人手不足として荷主にはね返っています。ならば、米国ウォルマートのように立場の強い荷主が主導して、規格化・標準化・機械化・情報化などで輸送の労働生産性を上げることを考えていくべきでしょう。相手にさせて自分の仕事を減らすのではなく、全体で無駄を無くしていくという意識の切り替えが必要です。
欧米ではトレーラーで輸送し、到着すると運転手はトレーラーを台切りして即座に次の現場に向かい、荷扱いは着荷主が行います。このため、日本で問題になっている荷待ち自体が存在しません。
※ ※ ※
これまで製造業は、工場で付加価値が生まれると教えられてきました。それも事実ですが、製品を組み立てても高く売れる地域に運ばないと収益は上がりません。つまり運ぶことで価格が上がり収益が生まれています。むしろ、今は運ぶことをしっかり考えないとビジネスが成り立たない時代になっているのです。
今までの考え方を見直すべきなのは政策だけでなく、荷主となる企業にもあるのです。
※この記事は2024度「第24回 貨物鉄道論文」最優秀賞「陸海一貫インターモーダル輸送の可能性と社会効果」(金沢大学 伊東尋志〔経済学博士課程 元えちぜん鉄道専務〕/合同会社日本鉄道マーケティング 山田和昭共著)の内容と、伊東氏とのディスカッションを元に構成したものです。
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