自衛隊もついに導入「攻撃用ドローン」に“批難の声”も ウクライナ戦で一躍注目の兵器 一体どんなものなのか?
- 乗りものニュース |
防衛省が陸上自衛隊の「小型攻撃用UAV」取得費として32億円を計上。ウクライナ戦で脚光を浴びた兵器を自衛隊も導入します。ただ、その内容を巡って政界で物議も醸しているようです。
「徘徊型兵器」と呼ばれる装備を調達へ
防衛省は令和7(2025)年度予算案に、陸上自衛隊が使用する「小型攻撃用UAV」の取得費として、32億円を計上しました。
アメリカで開発された徘徊兵器である「スイッチブレード」。(画像:アメリカ陸軍)。
同装備に関して防衛省は「空中を遊弋(ゆうよく)して車両などを迅速に撃破可能なもの」と定義していますが、この種の兵器は先進国を中心に急速に普及しており、諸外国では一般的に「徘徊型兵器」と呼ばれています。
徘徊型兵器とは一定時間、特定エリアの上空を徘徊するように飛行することで、車両などの攻撃目標を捜索し、目標を発見すると操縦者からの指令で体当たりして撃破する一種の無人航空機(UAV)です。
たとえば、ミサイルは発射前に目標を発見しておく必要がありますが、徘徊型兵器にはその必要がなく、通常の捜索のように、敵の攻撃を受けやすい場所まで人間が進出する必要もありません。
徘徊型兵器の多くはヘリコプターのようなローターで飛行するので、ロケットモーターを使用して高速で飛翔するミサイルに比べれば迎撃は容易ですが、撃墜されても無人のため、乗員が死亡したり負傷したりする心配も無用です。
機種によって搭載しているセンサーは異なるのですが、目標の発見用に高性能の動画撮影用カメラが搭載されている機種が多く、攻撃目標への突入までは偵察用途にも使用できます。
なお、多くの徘徊型兵器は使い捨てですが、攻撃目標を発見できなかった場合に帰投して再使用できるモデルも登場しています。制御システムも機種によって異なるものの、その操縦や指示は多くのモデルで偵察用ドローンと大差なく、操作に複雑な訓練を必要としません。
このような徘徊型兵器は10年以上前から存在していました。しかし大きな注目が集まるようになったのは2022年2月以降、ロシアの侵攻を受けたウクライナが使用し、短期間で大きな戦果を挙げてからです。そこから急速に普及しており、おそらく防衛省・陸上自衛隊もウクライナの戦訓を参考として導入に踏み切ったものと思われます。
「イスラエル製じゃないか」と非難も
機種選定は令和7年度予算が国会で承認された後、おそらく2025年の初夏以降になるものと思われますが、防衛省は令和7年度予算案の概要をまとめた「防衛力抜本的強化の進捗と予算」の中で、2023年度中に合計10機種の各種UAVの運用実証試験を実施したことを明らかにしています。
防衛省が小型攻撃用UAVの参考品として購入した「ロテムL」(竹内 修撮影)
その試験の具体的な内容については、防衛省は明かしていません。したがって2023年度に試験した10機種のうち、何機が「小型攻撃用UAV」なのかも判然としません。
ただ、日本共産党の山添 拓参議院議員が、2024年3月12日の参議院防衛外交委員会で行った防衛省に対する質問で、その一部が判明しています。
防衛省が2024年1月下旬に参考品として購入契約を行ったUAVの中に、イスラエルのIAI(Israel Aerospace Industries)製の「ロテムL」と「ポイントブランク」、同国エルビット・システムズ製の「スカイストライカー」、やはり同国U Vision製の「HERO120」という、4機種の徘徊型兵器が含まれているといいます。
筆者(竹内 修:軍事ジャーナリスト)は「ポイントブランク」を除く3機種は、メーカーに直接話を聞いています。その限りにおいて、いずれも陸上自衛隊が求めている能力は充たしていると推測できます。
おそらく小型攻撃用UAVの機種選定は上記した機種に加えて、筒状のランチャーから発射する徘徊兵器「スイッチブレード」などを中心にして行われるものと思われます。スイッチブレードはアメリカがウクライナに供与した兵器で、防衛省も参考品として購入した可能性が高いと思われます。
ただ、防衛省が試験を行ったUAVにイスラエル製の機種が複数含まれていることについて、前述した山添議員は「イスラエルの軍需産業を支えるなど絶対にやってはならない」と防衛外交委員会で批判しています。
イスラエルは周辺での武力行使が多い国で、同国から防衛装備品を購入することに関して、心理的な抵抗があるのは山添議員だけではなく、ほかに沢山いると思いますし、あって当然なのではないかと思います。
攻撃型UAVは無慈悲で無差別な兵器なのか?
近年では、攻撃目標への突入も機械任せにする徘徊型兵器が出現していますが、筆者が取材したIAIやエルビット・システムズ、U Visionの担当者はみな、「攻撃目標への突入の指示、つまり人間の命を奪うかもしれない指示を機械任せにするのは自分の宗教観や哲学に合わないし、それだけは人間がすべきことだ」と述べていました。
防衛装備品は国産であれアメリカ製であれイスラエル製であれ、使い方次第で、人の命を奪う道具にもなれば、人の生命財産を護る道具にもなるものです。
使い手が使い方を誤らなければ、日本と日本人の生命と財産を守るために有効な防衛装備品を導入することが最適であり、イスラエル製だからという理由で導入を忌避するのは、色眼鏡でモノを見ているだけだと筆者は思います。
必要とされるのは、使い手がどのような状況下で、そのどう装備品を使用するのか――その明確な運用方針の確立と、それを国民に対して丁寧に説明することなのではないでしょうか。
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