総額1000億円超!? 米軍が直面した「1機ウン十億円の大型無人機」大量喪失 人的損失なくても無視できない衝撃
- 乗りものニュース |

実質的な損失の大半を占める「無人機」の撃墜
2026年2月末に始まったイランとアメリカ・イスラエルの戦争は、現代航空戦の特質を象徴する戦いとなりました。開戦直後からアメリカ軍とイスラエル軍は圧倒的な航空優勢を確保し、イラン軍の防空システム、指揮統制施設、航空基地、ミサイル関連施設に対して集中的な攻撃を実施しました。
アメリカ空軍の高性能無人戦闘航空システムMQ-9「リーパー」は世界で最も高性能な機体の1つ。24時間以上の滞空能力を持った中型ドローン(画像:アメリカ空軍)
その結果、作戦全体を俯瞰すると有人航空機の損害は驚くほど少なくなっています。アメリカ軍とイスラエル軍は数百機規模の航空戦力を長期間にわたって投入したにもかかわらず、撃墜された有人機はわずか数機にとどまりました。国家間戦争としては異例ともいえる低い損耗率であり、第5世代戦闘機、電子戦機、空中給油機、早期警戒機を統合した現代航空作戦の成熟を示していると言えるでしょう。
しかし、この数字だけを見て「損害は軽微だった」と結論付けるのは早計かもしれません。なぜなら、戦場の空では別の航空戦力が大幅に消耗していたからです。それは無人機、なかでもアメリカ空軍のMQ-9「リーパー」です。
開戦以降、MQ-9の損失数は30機に達したと推測されており、有人機の損害と比較すると桁違いといってよいでしょう。むしろ、アメリカ軍航空戦力の実質的な損失の大半を占めていると言っても過言ではありません。
国家間戦争で露呈した「低速」という致命的な弱点
MQ-9「リーパー」は、しばしば「ドローン」とひと括りにされますが、近年大量生産されている小型無人機とは本質的に異なる存在です。全長11m、翼幅20mという中型航空機に匹敵する機体規模を持ち、24時間を超える長時間の滞空性能も備えています。搭載された高性能な光学センサーや赤外線監視装置、合成開口レーダーによって広範囲の監視が可能であり、さらに衛星通信を介して地球の裏側からでも操縦・運用できます。
レーザー・GPS誘導爆弾「エンハンスド・ペイブウェイ」を搭載したMQ-9。発見から攻撃のタイムラグを最小限にすることが可能(画像:アメリカ空軍)
また、「ヘルファイア」対地ミサイルや、「JDAM」「ペイブウェイ」といった精密誘導爆弾を搭載できるため、偵察機であると同時に攻撃機としての能力も持ち合わせています。いうなれば「リーパー」は単なる無人機ではなく、情報収集と精密攻撃を兼ね備えた航空資産なのです。
一方で、この機体には根本的な弱点があります。それは速度です。MQ-9の巡航速度は300~400km/h程度に過ぎず、ジェット機と比較すると著しく低速です。高い機動性も期待できないため、防空網が存在する空域では本質的に脆弱な航空機と言わざるを得ません。
アフガニスタンやイラクにおける対テロ戦争のように、敵側が高度な防空能力を持たない環境では、MQ-9はまさに無敵に近い存在でした。何十時間も上空を旋回しながら監視を続け、発見した目標を自ら攻撃することができたのです。
しかし、国家間戦争となると事情は一変します。今回の戦争でイラン軍は航空優勢を完全に失ったとはいえ、地対空ミサイルや防空レーダーが完全に沈黙していたわけではありません。指揮統制網が寸断され、統合された高度な迎撃能力を喪失したとしても、個々の防空部隊は依然としてアクティブなままで、脅威であり続けていました。
1機30億円超。果たして「許容可能な損害」か?
こうしたなか、低速で機動力に乏しいMQ-9は、前述したような孤立こそしていても依然として活動能力を保持し続けていた防空部隊にとって格好の標的となったのです。戦闘機であれば高速飛行や自己防御システム、さらにはステルス性能によって生存性を高めることができます。しかしリーパーにはそのような防御手段が限られており、一度発見されれば撃墜される危険性は極めて高くなります。
訓練で南カリフォルニア上空を飛ぶMQ-9「リーパー」(画像:カリフォルニア空軍州兵)
もちろん、無人機である以上、操縦士が死亡したり捕虜となったりする危険はありません。ここに無人機最大の利点があります。有人機であれば撃墜は人的損失と政治的損失を伴い、場合によっては搭乗員の救出作戦が必要となるため、二次的なリスクを軍に強いる可能性も高いです。しかし無人機であれば、失われるのは機体だけで済みます。
その意味で、30機の喪失は「許容可能な損害」と見ることもできます。しかし、それはMQ-9を安価な消耗品と見なした場合のハナシです。同機は決して安価な兵器ではありません。高性能な機器を搭載するリーパーの価格は1機あたり30億円を超えるとされます。単純計算でも30機の損失は1000億円規模に達し、その代償は決して小さくありません。
無人機である以上、人命損失という観点では確かに許容可能な損害だったと言えるでしょう。しかし航空戦力全体という視点から見れば、その損失は決して軽微ではないのです。「許容はできるが、決して痛くないわけではない」。30機のMQ-9「リーパー」の喪失は、国家間戦争における無人機運用の脆弱性を端的に示していると言えるでしょう。
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