使うはどちらも「やられメカ」ことT-72戦車 ロシアとウクライナ、勝機はどちらに?
- 乗りものニュース |

激しい戦闘を続けるロシアとウクライナですが、両軍とも使用する共通兵器といえるもののひとつに旧ソ連製T-72戦車があります。両軍の戦車はいわば「姉妹」ともいえますが、性能差はあるのでしょうか。
ウクライナ軍が欲しがる他国製T-72系戦車
長期戦の様相を呈しつつあるロシアとウクライナの戦い。日本では、アメリカを始めとした西側諸国の対戦車兵器でロシア軍の戦車を始めとした各種戦闘車両が、多数撃破されている様子が大きく報道されていますが、もともとウクライナ軍の装備は旧ソ連製のものが主体で、ロシアと共通する部分が多かったといえます。
なかでも戦車はその傾向が顕著で、当初からウクライナ軍はロシア軍も運用したことのあるT-64やT-72などを多数装備していました。
開戦前、雪上で訓練するウクライナ陸軍のT-72戦車(画像:ウクライナ軍参謀本部)。
そのようななか、2022年2月24日のロシアによる侵略(筆者はこれをロシア第1次攻勢と仮称します)が始まった直後から、ウクライナはNATO(北大西洋条約機構)加盟国をはじめとした西側諸国に戦車の提供を求めていました。3月24日、ブリュッセルで開催されたNATO首脳会議にオンライン参加したウクライナのゼレンスキー大統領は、参加各国の首脳に対して直接、次のように訴えています。
「みなさんは、合計して少なくとも約2万両の戦車を保有しています。そのうち1%の200両で結構ですので、わが国に譲ってください」
特にウクライナは、旧ソ連時代に開発・生産され、現在も同国やロシア、そして輸出先の各国でも現役のベストセラー戦車ともいえるT-72と、その発展型の戦車を欲しがっています。
T-72は1973(昭和48)年に生産が始まった古い戦車ですが、旧ワルシャワ条約機構加盟国のポーランドやチェコなどでもライセンス生産され、以降、本車をベースに改良された発展型が、現在も各国でMBT(主力戦車)として用いられています。
びっくり箱と揶揄されてしまったT-72シリーズ
T-72は、旧ソ連の友好国向けの供与戦車としてもさまざまな国に輸出されており、1980年代初頭、中東地域で何度か実戦に投入された車体は、いずれも輸出用の性能制限仕様(いわゆるモンキー・モデル)であったものの、当時のイギリス製「チーフテン」やアメリカ製M60といったMBTに対して善戦し、一定の評価を得ています。
ところが、一転して湾岸戦争では、イギリス製「チャレンジャー」やアメリカ製M1「エイブラムズ」といった性能格差の大きい西側製MBTとの交戦で一方的に撃破されてしまい、「やられメカ」呼ばわりされる結果となりました。
撃破された際、車体から砲塔が外れてしまったロシア軍のT-72B戦車(画像:ウクライナ国防省)。
特に、省人力化のため装填手を減らすべく自動装填装置を導入し、砲塔直下の車体底部へ円盤状に主砲弾薬庫を設けたことにより、被弾時にこの弾薬庫が誘爆して砲塔が吹き飛ぶ事例が多発したことが、世界中にネガティブ・イメージを植え付ける結果を招いてしまいました。
砲塔が車体から外れて宙に吹き飛ぶ様が、箱からバネでビヨヨ~ンと飛び出す道化師やお化けのフィギュアなどにイメージ的に重なるとして、アメリカの戦車兵たちはT-72に「Jack in the Box(びっくり箱)」というあだ名を付けたのです。
この「やられメカ」としてのイメージがあまりにも強烈だったことにより、T-72シリーズは今となっては、その発展型でも西側の最新鋭MBTには歯が立たないと広く思われているようです。しかし、同じT-72同士が戦うとなれば、話は全く違ってきます。
T-72を保有する国によって、あるいは型式の違いによって性能に差が生じるケースもとうぜんあるでしょうが、現状の本車の改良発展型で、そこまで決定的に性能が向上したモデルは存在していないようです。
ゆえに「ハード」面での格差がそれほどない以上、乗員の練度と戦意(闘志)という「ソフト」面が、事実上の勝負のカギとなります。
カギ握るのはウクライナ軍の練度とヤル気
加えて現地や海外からの情報を信じるなら、戦意においてはウクライナ側が圧倒的に高く、乗員の練度においても、この戦意の高さが操作習熟に好影響をもたらしていることは想像に難くありません。
一方で、ロシア側では無傷の乗車を放棄して戦車乗員が逃亡するケースがしばしば生じていると伝えられます。さらには部隊の戦友多数が戦傷死したことに怒ったとある戦車乗員が、責任者である大佐クラスの機甲部隊長を戦車で轢いて病院送りにする事件が起こるなどしており、それらを鑑みると少なくとも戦意においては高いとはいえないようです。
ウクライナ陸軍のT-72戦車(画像:ウクライナ国防省)。
とはいえ、ウクライナは多勢に無勢の「無勢」と言わざるを得ない状況です。要請に応えてポーランドやチェコがT-72系のMBTを供給してくれているとはいえ、ウクライナ軍のT-72系の保有数がロシア軍よりも少ないのは間違いありません。
しかし現代戦では、まずは命中精度に優れた対戦車ミサイルや精密誘導砲弾による砲撃などで敵の戦車を叩いて数を減らし、その後、第2次世界大戦時のように「戦車には戦車をぶつける」という戦い方が、ひとつの戦闘における最後の「仕上げ」となる傾向が高いといえるでしょう。そう考えると、数的に劣勢のウクライナ軍側のT-72部隊にとっても、勝機はあるのではないでしょうか。
さらに、前述した練度と戦意の面を加味した場合、ウクライナ軍のT-72がロシア軍のT-72に劣っていることは決してなく、場合によっては上回っている可能性も否定できないと筆者(白石 光:戦史研究家)は考えます。とはいえ、いわば「姉妹」ともいえるロシアのT-72改良型と、ウクライナのT-72発展型、両者の雌雄が決するのは、もう少し先になりそうです。
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