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“若者の経済不安”解消せず、子育て支援偏重 政府のズレた「少子化対策」がもたらす“最悪の未来”

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政府の少子化対策の問題点とは?
政府の少子化対策の問題点とは?

 参議院選挙の投開票が7月20日に行われます。今回の選挙は物価高対策や外国人政策などが主な争点となっており、家計支援や外国人労働者の受け入れを巡る公約に注目が集まっています。そんな中、評論家の真鍋厚さんは、2024年の出生数が過去最少だった点を踏まえ、政府がこれまでに進めてきた少子化対策にも目を向けるべきだと主張します。政府の少子化対策の問題点や現状を放置した場合の将来的なリスクについて、真鍋さんが解説します。

2024年の出生数は70万人未満に

 日本社会が直面する深刻な問題の一つに「少子化」があり、出生数は年々減少の一途をたどっています。厚生労働省の人口動態統計によると、2024年の出生数は過去最少の68万6061人となり、統計開始以降初めて70万人を割ったということです。しかも、出生数が70万人を割るのは2038年と予測されていたため、予測よりも14年早く少子化が進行していることも明らかになりました。

 政府は過去にさまざまな少子化対策を打ち出してきましたが、残念ながらその効果はほとんどなく、かえって少子化を加速させた可能性も否定できません。日本の少子化対策がここまでひどい失敗をしたのはなぜなのでしょうか。そして、この状況を放置したら日本社会は最悪の場合、どのような未来を迎えるのでしょうか。

 まず「失われた30年」は、日本の少子化問題と大いに関係しています。バブル崩壊以降、日本経済は長期にわたる停滞を経験し、その間に企業は人件費削減や非正規雇用の拡大を進めました。その結果、若年層を中心に実質賃金は低迷し、それが結婚の困難化を招く主な要因になったのです。

 第一生命経済研究所経済調査部主席エコノミストの星野卓也氏は、「子どもを持つことに対する金銭的なハードルが高くなっている、ないしは高くなっていると感じていることが、出生率の低下に影響している可能性がある」と述べています(内外経済ウォッチ『子どもを持つ選択は『ぜいたく』になったのか?』第一生命経済研レポート)。

 2000年以降の厚生労働省の「国民生活基礎調査」の所得階級別のデータを整理した上で、「600~1000万円」までは年収が高いほど子どもを持つ割合が高く、家計の経済環境と子どもを持つ選択には関係があることがうかがえるとしました。そして、2020年分の値をみると、「300万円未満」「300~600万円未満」の層で、子どもを持つ世帯の割合が過去との比較で明確に低下していることが分かると指摘しています。

 つまり、所得の伸び悩みや教育費の上昇により、「結婚して家庭を持つこと」や「子どもを育てること」は、経済的なハードルが非常に高いものになったと言えます。星野氏の言葉を借りれば、結婚して子どもを持つことは、「ぜいたく」なことになったのです。

 ですが、政府の少子化対策は終始「子育て支援」に重きを置いてきました。保育所の増設、幼児教育・保育の無償化など保育サービスの充実、育児休業制度の拡充をはじめとした仕事と子育ての両立支援、児童手当の所得制限の撤廃や対象年齢の引き上げなどがその代表例です。

 これらの施策は、子育て中の家庭にとっては朗報です。しかし、「肝心の少子化対策=子どもを増やす」という根本的な問題、すなわち若年層が結婚や出産に乗り出す経済的障壁、心理的障壁の解消にはまったくと言っていいほど効果を発揮しませんでした。

 考えてみてください。もし自分の収入が不安定で、将来の見通しが立たない状況であれば、いくら「保育所が増えましたよ」「児童手当がもらえますよ」と言われても、子どもを産み育てる経済力がないという状況は何一つ変わりません。経済的な基盤が整わないうちに見切り発車するわけにはいかないからです。

 そもそも子育て支援は、あくまですでに子どもを産み育てている人々への支援であり、子どもを産み育てることをためらっている人々への支援ではありません。例えは、悪い例えですが、ランチが3000円もするお店の前で「高すぎて一生入れそうにないな」とメニューを見ていたら、呼び込みの人に「お子さま連れのお客さまに限り『お子様ランチ』は無料です」と言われているようなものなのです。

 では、なぜこんな体たらくになったのでしょうか。それは、当初、政策決定の中心にいた政治家たちが少子化の原因を「子育て支援」だと本気で思い込んでいたことにあります。この思い込みはかなり強固なものだったようです。

 政府の少子化対策に有識者の一人として携わったことがある社会学者の山田昌弘氏は、結婚できない人の増加が少子化の一因であることを政府が公式に認めるまでに10年もかかったと著書で振り返っています(『結婚不要社会』朝日新書)。

 山田氏は、『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』(光文社新書)で、日本では結婚が経済的に新しい生活を始めることと意識されやすく、世間体意識から他人から見て恥ずかしくない結婚生活を求めることや、子どもに経済的につらい思いをさせたくないという考えが強いことを解き明かしました。そのため、自分が育った経済環境以上の条件が整わなければ結婚や出産を見合わせると説明しています。

 このような的を射た意見が出されたにもかかわらず、政府は簡単に「手取り」を増やせる所得控除などの減税政策を行わず、むしろ消費増税を強行しました。

 また、大企業などはもうかっても、子育て支援には協力的でも、賃上げに抑制的なスタンスを取り続けました。なぜなら、根本的な経済構造の改革や、非正規雇用問題への抜本的な対策を含めて、多くの業界、既得権益に触れるもので、かつ重大な政治的な決断が求められる上、長期にわたって取り組みが必要で成果がすぐに出ず、選挙にも結び付きづらいものだったからでしょう。

 そして、2023年4月1日には内閣府の外局として「こども家庭庁」が発足します。建前上は、政府が唱える賃上げが最も重要との考えを共有していますが、マッチングアプリの安全性確保や、婚活支援策を効果検証する枠組みなどの立案といった結婚支援、性や妊娠に関する正しい知識を身に付けて健康管理に生かす「プレコンセプションケア」の普及に向けて、サポーターを5年間で5万人養成する計画を立ち上げるといった結婚・出産の周辺的な支援に予算が割かれているのが現状です。

 SNSで散見される「こども家庭庁」の存在に対する否定的なコメントの多くは、このような政策のミスマッチがあまりにもひど過ぎることへの怒りや違和感の表明と言えます。もちろん、これらの支援策も無駄ではないでしょうが、優先順位を考えると、まず手を付けるべきは「子どもを持ちたいと思える経済的環境・社会的環境」の整備であることは言うまでもありません。

 さて、このまま少子化が進行した場合、日本社会は、どのような未来を迎える可能性があるのでしょうか。

 第一に、社会保障制度の維持が極めて困難になるでしょう。社会保障の削減や保険料の大幅な引き上げが不可避となり、世代間の対立が激化するかもしれません。

 第二に、経済全体の活力低下と国際競争力の喪失です。生産年齢人口の減少は、労働力不足を招き、企業の生産活動を停滞させます。市場規模が縮小し、消費が低迷すれば、新たな投資やイノベーションが生まれにくい社会になる可能性があります。

 第三に、地域社会の消滅とインフラの維持困難です。特に地方では、若者の流出と出生数の減少が加速します。学校や病院、介護施設、公共交通機関といったインフラの維持が困難になり、限界集落が増加し、最終的には地域社会が消滅する事態が待ち受けています。

 第四に、出産・小児医療の危機です。出生数が少なくなり、子どもが減ると、産児医療の縮小が起こります。産婦人科や小児科が急減し、「分娩(ぶんべん)空白地域」が拡大します。ケア用品を含む市場も先細りになり、必要なサービスや商品が消える可能性も出てきます。

 第五に、国防力の低下です。少子化が極まれば、自衛隊の隊員確保にも影響が及び、近い将来、徴兵制の導入が検討されるかもしれません。国の安全保障を維持するための最低限の人員が不足する重大な問題に発展しかねません。

 ここまで本質を見誤ってしまった日本の少子化対策は、どうやら修復可能なポイントを通過してしまい、修復不可能な段階に入ってしまったようです。そうなると、事態をいかに悪化させないようにするかという対症療法しかありません。現金給付はその選択肢の一つですが、自民党の公約である、1人当たり2万円の給付(子どもや住民税非課税世帯の大人に対しては1人当たり2万円をそれぞれ加算)では焼け石に水でしょう。

 最悪の未来は、家族が持てる「ぜいたく」な人々と持たない人々の分断がさらに深まり、税金の使い道を巡って議論が平行線をたどることが日常茶飯事になることです。なぜなら、その頃には子育てが金銭的に余裕のある人の趣味、「推し活」や体験を重視する消費行動である「コト消費」の一つとしてしか見られなくなっている可能性があるからです。そう、出産や子育てが圧倒的に少数派の営みになるのです。

 私たちが払わされる政治のツケは、一体どのような結末を迎えてしまうのか、想像以上に恐ろしい分かれ目に立っている気がしてなりません。

評論家、著述家 真鍋厚

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