パンダが帰っても孤軍奮闘!? 「パンダくろしお」どうなるのか 喪失感ただよう沿線の“強烈な残り香”
- 乗りものニュース |

和歌山県白浜町のアドベンチャーワールドからジャイアントパンダ4頭全頭が中国に返還。JR西日本の特急「パンダくろしお」は運行を続けて孤軍奮闘していますが、異変も生じています。そこかしこに“パンダの残り香”が見られました。
全頭返還でも「パンダくろしお」は運行継続
和歌山県白浜町のレジャー施設「アドベンチャーワールド」で飼育されていた雌のジャイアントパンダ4頭全頭が2025年6月、中国に返還されました。これに伴い、JR西日本の特急にも“異変”が生じています。
JR西日本が特急「くろしお」で運行している「パンダくろしお」の「サステナブルSmileトレイン」(大塚圭一郎撮影)
JR西日本はアドベンチャーワールドと連携し、京都・新大阪と和歌山県を結ぶ特急「くろしお」に使う287系にパンダを装飾した「パンダくろしお」を2017年から走らせるなど「パンダ推し」を前面に出してきました。
同社はパンダの中国返還を2日後に控えた2025年6月26日、3編成ある「パンダくろしお」のいずれも、返還後も運行を続けると発表しています。ただし、「『アドベンチャーワールドにパンダがいる』とお客様に誤認されないように順次、適切な対応を講じてまいります」と説明しました。
筆者(大塚圭一郎:共同通信社経済部次長)はアドベンチャーワールドの最寄り駅である白浜駅(白浜町)を訪れ、「パンダくろしお」に乗車しました。すると、なんともシュールなパンダの残影がありました。
中国に返還された4頭は母親の良浜(らうひん)と、良浜の子どもたちの結浜(ゆいひん)、彩浜(さいひん)、楓浜(ふうひん)です。いずれもアドベンチャーワールドで生まれました。
パンダは1972年の日中国交正常化の際、「友好の証し」として上野動物園にランランとカンカンが贈られたのが日本でのルーツです。ランランとカンカンは一般公開されると、大フィーバーを巻き起こしました。
1980年代にワシントン条約でジャイアントパンダが絶滅の恐れがある種に指定されたことを受け、中国はそれまで寄贈していたのを共同繁殖研究目的の貸与に切り替えました。
繁殖力のあるペア2頭のレンタル料は年間で95万ドル(1ドル=148円で約1億4000万円)と高額で、中国以外で生まれた子どもの所有権も中国にあると定めています。
アドベンチャーワールドは1994年、中国側とともにジャイアントパンダの共同繁殖研究に乗り出しました。これまでに「17頭の育成に成功し、20頭以上の子孫が誕生しており、国際ジャイアントパンダ保護共同プロジェクトを行う施設の中で最も多い繁殖実績の施設となった」と成果を誇示しています。
「パンダシート」は健在!
JR白浜駅の有人改札にはパンダのぬいぐるみが飾られ、その1つは制帽をかぶって首の部分に「ようこそ!南紀白浜へ」のボードを掲げていました。”次世代継承”の願いも込めてか、アドベンチャーワールドで飼育されているレッサーパンダやアミメキリン、アルパカのぬいぐるみもありますが、どうしても存在感のあるパンダのぬいぐるみに目が行ってしまいます。
JR白浜駅の有人改札に飾られたパンダなどのぬいぐるみ(大塚圭一郎撮影)
改札を出ると、駅舎内の出入り口脇には2015年に引退した381系「くろしお」の一部車両に搭載していた座席「パンダシート」が健在でした。ヘッドレストがパンダの顔、背もたれがパンダと同じく白と黒のツートンカラーというインパクト抜群の座席です。
記念撮影をできるように置いており、筆者も腰掛けるとビニール製のため、やや硬い感触でした。もっとも、アドベンチャーワールドを訪れる小さな子どもがいる家族連れの利用を想定していたことを考えると、食べこぼしをしてしまっても拭き取りやすい素材の採用は良かったと言えます。
駅を出たところのパンダ像も残されていたものの、2025年6月に返還された4頭の写真に「今までありがとう また来てね」と記したポスターとシールを随所に貼り付けていました。台座にはこのポスターを3枚掲示していましたが、これは標語の「パンダのまち 白浜」を覆い隠すためです。
白浜町役場も正面出入り口の上に「パンダのまち 白浜」と記した大きな看板を掲げていましたが、パンダ返還を受けて7月31日に撤去されました。
これが誤認を防ぐ「適切な対応」か…
「パンダくろしお」には「Smile(スマイル)アドベンチャートレイン」と「サステナブルSmileトレイン」があり、筆者は帰路に後者を用いた6両編成の新大阪行き特急「くろしお」に乗りました。先頭部に親子のパンダの顔を装飾したデザインはそのままでした。
「アドベンチャーワールドにパンダがいる」と誤認されないための「適切な対応」が何かを探ろうと車体を眺めていると、側面上部にあった「アドベンチャーワールド×JR西日本」の文言が消えていました。
そして車内に入ると、白地に親子のパンダが描かれていた座席のヘッドレストカバーも通常の白い無地に変わっていました。カバーには「アドベンチャーワールド×JR西日本」の文言が入っていたため、撤去対象になりました。
パンダは「サステナブル」か?
一方でシュールなのは、両先頭車の1号車と6号車の車体側面に大きく掲示したジャイアントパンダの写真の傍らに、「持続可能な笑顔」を意味する「Sustainable Smile(サステナブル・スマイル)」というフレーズが躍っていたことです。
JR白浜駅舎(大塚圭一郎撮影)
「サステナブルSmileトレイン」は、2030年までに世界が持続可能な社会の実現を目指すための国際目標「SDGs(持続可能な開発目標)」をテーマとし、17種類ある目標のうち6種類を6両それぞれで紹介しています。SDGsを紹介する意義はよく理解できるものの、アドベンチャーワールドで飼育されていた4頭全てが中国へ渡ってしまった喪失感のなか、パンダたちの写真を「持続可能な笑顔」で受け止めるのはやや難しいかもしれません。
また、白浜を含めた紀勢線の沿線の駅にも「今までありがとう また来てね」と記したパンダのポスターがあちこちに貼られていますが、今のところアドベンチャーワールドにパンダが「また来てくれる」確率は低そうです。
白浜町の大江康弘町長は「『ポストパンダ』の白浜町をしっかりと変えて、引き続き『観光立町白浜町』としてワクワク感を感じていただける街造りをやっていきます」と訴えており、パンダの誘致活動をしないとの姿勢を鮮明にしています。
客寄せパンダが過去のものとなった今も、「パンダ推し」の”残り香”が漂う白浜町と特急「くろしお」。「日本三大古湯」に数えられる温泉と、海水浴場でも知られている白浜町の魅力をさらに高め、繰り返し足を運びたくなる「持続可能な笑顔」をもたらす観光地へ昇華させることが問われています。
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