銃無しで日本の空守った!?「月光」と呼ばれた自衛隊の戦闘機 “ビックリ構造”を特別に拝見!
- 乗りものニュース |

このたび所沢の航空博物館の格納庫が特別公開され、普段見ることのない航空機を見学することができました。そこには、かつて航空自衛隊で使用された、特異な武装を搭載したジェット戦闘機がありました。
特別公開でお目見えした銀翼
埼玉県所沢市にある所沢航空発祥記念館において、2025年8月30日と31日の2日間にわたり、隣接する普段非公開の格納庫が特別公開されました。同地は、第1次世界大戦前の1911(明治44)年4月に軍用気球の試験場として開設され、後に所沢陸軍飛行場となった、「日本の航空発祥の地」として由緒ある場所です。
所沢航空発祥記念館横の格納庫に収納されている、ノースアメリカンF -86D「セイバードッグ」全天候型戦闘機。かつて航空自衛隊で使用されていた「84-8102号機」で、このたび特別公開された(吉川和篤撮影)。
格納庫には、「鳥人間コンテスト」の機体や旧ソ連のMi-8ヘリコプターなど、記念館では見られない珍しい機体や航空エンジンが収蔵されていました。中でもひときわ目を引いたのは、銀色に輝く1機のジェット戦闘機です。
これは、かつて航空自衛隊で使用されたノースアメリカンF-86D「セイバー」全天候型戦闘機です。同機はその独特な機首形状と、と型式の「D」をかけて「セイバードッグ」という愛称でも呼ばれました。
また同機は数年前に放送され話題となったTVアニメ『荒野のコトブキ飛行隊』の最終回にも、レシプロ戦闘機に混じって登場しました。
同アニメで強く印象に残ったのは、このF-86Dがレーダーを装備しながらも、機関銃や機関砲を搭載せず、武装が無誘導のロケット弾のみだったことです。攻撃時には胴体下面に収納した24発ロケットパックを出してから発射するというギミックを備えていました。
多数を斉射し命中精度を数でカバーするという設計は、自動追尾式の空対空ミサイルが発達した現代の航空戦目線で見ると、一風変わった設計思想を持つ面白い機体といえます。
なぜ、このような特異な機体が誕生したのでしょうか。
アメリカ空軍初の全天候型要撃機
第2次大戦終結後、アメリカを中心とする西側陣営とソビエト連邦を中心とする東側陣営の対立は深まり、やがて冷戦構造が生まれました。1949年8月にソ連も原子爆弾を開発したため、アメリカ空軍は核攻撃を行う可能性のある敵爆撃機の侵入を防ぐ迎撃戦闘機の必要性に迫られます。
アメリカ空軍第514戦闘迎撃航空団所属の2機の「セイバードッグ」(画像:アメリカ空軍)。
当時すでにノースアメリカン社では、朝鮮戦争でMiG-15戦闘機を相手に活躍した昼間戦闘機F-86「セイバー」の開発を終えていました。こうした防空構想の変化に応える形で、1949(昭和24)年3月からF-86をベースとした新たな全天候型戦闘機が同社で自主開発されます。
この新型機は「セイバー」を土台にしたものの、部品の共通性は25%程度に留まり、ほぼ新規設計の機体です。最大の特徴は、機首に装備された全天候型レーダーで、射撃統制システムなどの電子装置と連動しました。機上および地上のレーダー誘導に従って夜間や雲中でも敵機を発見し、照準まで自動で行い、パイロットは機体を誘導するだけで撃墜が可能でした。最高速度は1151km/h(マッハ0.93)出すことが可能で、遷音速ジェット迎撃機として完成したのです。
そしてF-86D「セイバードッグ」のもうひとつの特異な特徴が武装です。原型のF-86「セイバー」が固定武装として12.7mm機関銃6丁を搭載していたのに対し、「セイバードッグ」は機銃を廃止し、空対空ロケット弾のみを主兵装とした最初の戦闘機となりました。この無誘導で折りたたみ式フィンを備えた70mmロケット弾は「マイティマウス」と呼ばれ、胴体下部の引き込み式24発ロケットパックに収納されました。
高速で敵爆撃機と交差するタイミングで、射撃統制システムの計算によりロケット弾が一斉発射され、目標に命中する計画でした。
国内各地で見られる「セイバードッグ」
F-86Dは新機軸を盛り込んだ迎撃機でしたが、ロケット弾のみの武装は使い勝手が悪かったのか、ドイツやイタリアなどで使われた派生型のF-86K型はロケットパックに換えて20mm機関砲4門を装備しています。それでも1950年代半ばのアメリカ防空軍団では、所属戦闘機の95%以上をF-86Dが占め、アメリカ本土防空の主力を担いました。
2025年8月30日と31日の2日間に渡って特別公開され、多くの見学者が訪れた所沢航空発祥記念館横の格納庫(吉川和篤撮影)。
日本でも1958(昭和33)年から3年かけて122機の「セイバー」がアメリカから供与され、航空自衛隊第101、102、103および105の計4個飛行隊に配備され、「月光」の愛称が付けられ運用されました。
しかし、終始部品不足で泣いたほか、新型のF-104「スターファイター」戦闘機が導入されるなどしてF-86Dは徐々に姿を消し、配備開始から10年後の1968(昭和33)年には全機退役しています。
航空自衛隊にとってF-86Dは、全天候型戦闘機の運用ノウハウを獲得するうえで貴重な機種となり、その経験は現在も活かされています。退役した後も比較的多くの機体が、千歳基地(北海道)や小松基地(石川県)、百里基地(茨城県)などで展示・保存されており、筆者(吉川和篤:軍事ライター/イラストレーター)の郷里である香川県の陸上自衛隊善通寺駐屯地にも1機が屋外展示されています。
とはいえ、屋外展示機のほとんどは「70mmロケット弾パックが露出した状態」ではないため、今回の格納庫公開で初めてその特徴を間近で見学することができました。
この特別公開はこれまでも年に一度ほどのペースで行われていましたが、所沢航空発祥記念館自体が大規模リニューアル工事で2027年3月末まで休館となっています。そのため、次の特別公開はそれ以降になる見込みです。
記念館のリニューアルオープンと、その日が来るのを楽しみに待ちたいと思います。
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