鉄道の東武 西武 南武…「北」は? 実は2年弱あった「北武線」いま走っているのは…
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関東の大手私鉄に「東武鉄道」「西武鉄道」があり、JR東日本には「南武線」があります。いずれも旧武蔵国の東側、西側、南側がおおよその展開地域です。では北側には「北武鉄道」や「北武線」は存在したのでしょうか。
武蔵国の北側に展開していた北武鉄道
東武鉄道、西武鉄道の会社名で共通する「武」は「武蔵国(むさしのくに)」を示します。武蔵国は飛鳥時代に成立した律令国のひとつで、その範囲を現在の行政区分で示すと、埼玉県のほぼ全域、東京都のうち島しょ地域を除く23区と多摩地域、神奈川県の川崎市と横浜市のほぼ全域、となります。
つまり、東武鉄道は武蔵国の東側に展開する鉄道会社、西武鉄道は武蔵国の西側に展開する鉄道会社となります。ちなみに東武東上線・越生線は西武鉄道寄りの西側を走っています。これはもともと、東上鉄道という会社が東武鉄道に合併したからです。また、西武鉄道の前身は武蔵野鉄道といいました。こちらも合併や社名変更を経て西武鉄道となりました。
秩父鉄道の東の終点 羽生駅(杉山淳一撮影)。
武蔵国の東側と西側に鉄道会社があり、東武と西武を名乗りました。では、武蔵国の南側と北側はどうでしょうか。
「南武鉄道」「北武鉄道」はどちらも実在しました。南武鉄道は1927(昭和2)年に川崎~登戸間で開業しています。このとき、支線の矢向~川崎河岸間も開業しています。この路線は第2次世界大戦の戦時下だった1944(昭和19)年、国に買収されました。現在の「JR南武線」です。路線名に旧社名が残っています。
北武鉄道はどこでしょうか。結論からいいますと、埼玉県の羽生~行田市間にありました。会社名は消え、路線名も残っていません。しかし線路は現存しており、毎日、秩父鉄道の電車が走っています。
北武鉄道はどのように誕生し、消えてしまったのでしょうか。
羽生から延ばそうとした北武鉄道 しかし地元は消極的?
北武鉄道は羽生町(現在の埼玉県羽生市中心部、以下所在地表記はすべて2020年現在の市町村名)の有志によって、羽生から現在のJR高崎線 熊谷駅までを結ぶ軽便鉄道として構想されまた。1911(明治44)年に東武鉄道社長である根津嘉一郎の出資を迎え入れ、北武鉄道株式会社が設立されます。東武と北武、まるで姉妹会社のようですね。しかし、この構想は実現しませんでした。
おもな原因は、途中駅の忍町(おしまち、埼玉県行田市中心部)が出資の増額に応じなかったからといわれています。
忍町は江戸時代から足袋の生産で有名でした。1922(大正11)年創業の老舗足袋メーカー「ガクヤ」の公式ウェブサイトによると、江戸時代から「足袋の行田か、行田の足袋か」と名を馳せていたそうです。
そのような足袋業者たちの隆盛のもと、すでに忍町と高崎線の吹上駅(埼玉県鴻巣市)とを結ぶ馬車鉄道が開業していました。北武鉄道は吹上駅よりも北西の熊谷駅経由となり、東京へは遠回りになります。それが忍町に出資をためらわせた理由かもしれません。
しかし、ここで秩父鉄道という援軍が現れます。当時、秩父鉄道はすでに、熊谷駅からそのさらに西側に位置する影森駅(埼玉県秩父市)まで開業していました。
秩父鉄道にとって北武鉄道は魅力的でした。正確には、北武鉄道を経由して東武鉄道とつながることに魅力を感じていたようです。当時の秩父鉄道は鉱産物など貨物輸送が主力で、熊谷駅で官営鉄道である高崎線に連絡するより、羽生駅で東武鉄道を経由して東京へ輸送するほうが魅力的だったようです。
秩父鉄道に組み込まれ 2年未満の運行期間
その理由は運賃でした。官営鉄道は全国一律の運賃体系を取っており、長距離になるほど運賃が安くなる仕組みでした。この制度では、近距離輸送の割引率は低くなります。一方、東武鉄道は顧客に対して大幅な値引きを実施していました。北武鉄道には東武鉄道の根津嘉一郎も関わっていましたから、秩父鉄道は東武鉄道に対して忖度を期待したかもしれません。
北武鉄道は新たに鉄道免許を取得。1921(大正10)年に羽生~行田間を開業します。翌年には行田~熊谷間を開業して全線開業となりました。しかし、それからわずか1か月あまりで秩父鉄道と合併し、北武鉄道線は秩父鉄道秩父線の一部となりました。つまり、北武鉄道の運行期間は2年に満たなかったことになります。
秩父鉄道の7500系電車(杉山淳一撮影)。
余談ですが、浦和駅は周辺に「東浦和駅」「西浦和駅」「南浦和駅」「北浦和駅」があって、東西南北がそろう駅として有名です。秩父鉄道が羽生~熊谷間を北武線として残してくれたら、鉄道会社や路線名も「東武」「西武」「南武」「北武」がそろってスッキリしたなあと筆者(杉山淳一:鉄道ライター)は思います。
さらに余談ですが、東西南北から欠けた「北武」は、仮想鉄道のネタとして会社名に使われています。ネットで検索すると、ウェブサイトがいくつかヒットします。架空の路線図や列車種別表、車両のイラストなどがあり、筆者が更新を楽しみにしている仮鉄サイトです。
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