総延長288キロ「対面通行だらけな高速道路の4車線化」が加速! 完成すれば“鉄道に打撃”か 現地で見た進捗
- 乗りものニュース |

「優先順位が高い」道東道4車線化
本州に比べ整備が遅れていた北海道の高速道路(高規格道路)は、2000年代に入り国と地方自治体の負担による「新直轄方式」による建設が認められたこともあり、急速にネットワーク化が進みました。同方式を取り入れて整備された基幹的な路線のひとつが、「道東自動車道(道東道)」です。
4車線化が進む「占冠IC」から「トマムIC」までの区間では、トンネルの多くは準備工事の段階だった(植村祐介撮影)
千歳市の「千歳恵庭JCT」と釧路市の「釧路別保IC」を結ぶ本線と、足寄町(あしょろちょう)の「足寄IC」への支線を加えた288.1kmの道東道は、長らく日高山脈を越える未開通区間を挟んで分断されていました。2011年に「夕張IC」と「占冠(しむかっぷ)IC」間が開通。さらに東側も延伸が続き、2024年には「阿寒IC」と「釧路西IC」間の開通で、札幌市と釧路市が高速道路でつながり、約4時間で結ばれることになります。
しかし道東道は起点側のわずかな区間(千歳東IC~キウスPA)以外は暫定2車線(片側1車線)での開通で、ところどころに追越車線はあるものの、交通量増大による速度低下や事故の増加、さらには事故の際の通行止めのリスクが大きくなっていました。
そこで4車線化が順次事業化され、NEXCO東日本は現在、占冠ICと「十勝清水IC」の間の約19.9kmで工事を進めています。
この区間は日高山脈の山々を越える難所にあたり、並行する一般道は無く、通り抜けるには北に大回りする国道38号「狩勝峠」、南に大回りする国道274号「日勝峠」を経由する必要があります。
このふたつの道路は距離が大回りとなるだけでなく、標高644mの狩勝峠、1022mの日勝峠とも、冬季にはマイナス10〜20度の最低気温が続く厳しい環境で、降雨など異常気象での通行止め区間も設定されています。こうした背景から、この区間での道東道の交通需要は大きく、4車線化の優先順位は高かったと言えるでしょう。
「PA移設でパワーアップ」進む大規模工事
この4車線化の事業は2019年3月から順次着手され、2025年11月にはトマムIC〜十勝清水IC間のうち、十勝清水ICに近い約4kmの区間が供用されています。これより西側については、以前から追越車線が用意されていたため、十勝清水IC側のほぼ8kmで4車線となっています。
4車線化工事中の「トマムIC」。ランプウェイの付け替えなど、かなり大規模な内容となっている(植村祐介撮影)
なお、これを機に同区間だけでなく既存の4車線箇所も、最高速度が70km/hから100km/hへ引き上げられました。
では残る区間の状況はどうなっているのでしょうか。2026年6月、実際に現地に行き、占冠ICから十勝清水IC間を走ってみました。
占冠ICのある「占冠村」は、人口1500人ほどの小さな村です。ただ、豊かな自然に恵まれていること、そして「富良野〜日高」「夕張〜帯広」という“観光の十字路”に位置することから、近年、多くの観光客が来訪しています。
町のほぼ中心にある「道の駅 自然体感しむかっぷ」も、そうした観光客や、本格的なSAのない道東道をいったん降りて休憩する人たちで賑わっていました。
その道の駅から5分ほどのところにある占冠ICから道東道に入り、十勝清水IC方面に進みます。道路は「JR石勝線」とともに、太平洋に注ぐ「鵡川」に沿って日高山脈に分け入っていきます。ICから3kmほどのところには「占冠PA(下り)」がありますが、そのすぐ東側では規模を拡大し、上り線側のPAと統合したあらたな占冠PAの工事が、4車線化事業とあわせて進められています。
さらにその先では、ところどころで現在進行中の4車線化工事の状況が見てとれます。ただトンネル部分については、まだ準備工事の段階のところも見られ、開通までには時間がかかりそうです。
こうした一連の工事のなかで、とくに大がかりなのは、本線を拡幅した上でランプウェイを移設するトマムICの工事です。ICでいったん流出し、工事現場の看板を確認すると、工事期間は「2028年12月31日まで」となっていました。
近々さらに4車線区間が増えそう?
トマムICから再び道東道に入り、東に進むと、日高山脈を越える区間です。ここでは2351mの「狩勝第1トンネル」、2580mの「狩勝第2トンネル」で峠を貫きます。いずれも4車線化にあたっては、現在のトンネルに並行して新たなトンネルが掘られています。
狩勝第2トンネルを過ぎると、目の前には雄大な十勝平野が姿を現します。その先、十勝清水IC手前にある940mの「広内トンネル」は、2023年に貫通済みです。広内トンネルの東側からは4車線化完了区間となるため、狩勝第2トンネルから先の4車線化はもうまもなくでしょう。
完成すればJRに大打撃?
さて、道東道の4車線化により、札幌市などの道央と十勝がさらにスムーズに結ばれ、道路利用者にとっては大きなメリットとなります。一方、JR北海道には、これが逆風になりそうです。
トマム駅に停車中のJRの特急「おおぞら」。札幌駅までは約1時間40分だ(植村祐介撮影)
現在、札幌市と帯広市の間は高速バスが所要時間約3時間半から4時間、運賃4000円程度(大人、以下同)で結んでいます。
一方、札幌駅と帯広駅を結ぶJR北海道の特急「とかち」「おおぞら」は、所要時間こそ3時間を切りますが、運賃・特急料金の合計は約8000円で、高速バスの倍額です。
高速バスは帯広側の市街地のバス停で細かく停車し乗降できるという利便性に加え、早期購入では運賃がさらに割り引かれることを考えると、所要時間差はそれほど不利には働きません。
道東道のこの区間の4車線化工事の完了にはまだ時間がかかりますが、工事が完了し70km/hの最高速度が100km/hに引き上げられると、所要時間の差は縮まり、JR北海道には痛手となります。
ただ利用者にとって最善なのは、JR特急と高速バスが共存し、目的に応じて使い分けられる環境です。そうした持続可能なビジネスモデルの構築を、両者にはぜひ期待したいところです。
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